登録 : 2016.11.04 23:24 修正 : 2016.11.05 06:49

危機に陥った韓国経済

「パーフェクト・ストーム」は悪材料が一気に押し寄せて、手を付けられない経済危機をなぞらえて言うときに主に使用される。本来は気象用語であるこの単語は、さほど威力的でない台風が他の自然災害と同時に発生して途方もない破壊力を持つ場合を言う。釜山水営区(スヨング)の近海で台風の大波が船を襲い、船が転覆している場面/聯合ニュース

▲韓国経済がゆらいでいます。輸出、内需、雇用など、すべての指標が墜落する状況で、来月には米国の利上げの可能性が高いと言われています。数年間続いてきた低金利基調が、転換されるということですね。それでなくとも本来の役割を果たせなかったコントロールタワー機能は「チェ・スンシルゲート」まで弾けて完全不在の状況です。韓国経済は今どんな状況で、これを克服する方案は何かを整理してみました。

 「韓国経済にそれこそ『パーフェクト・ストーム』が押し寄せているが、エンジンが故障した小舟には船長も救命艇もその姿は見られない」

 ソウル大学のキム・ナンド教授(消費者学科)が先月31日『トレンドコリア2017』を出版し開いた記者会見で提示した経済診断だ。キム教授が来年のトレンド を表わすキーワードとして、国家と職場に対する不信が高まり、各自がそれぞれ生き残らなければならない「各者生き残りの時代」を挙げたのも、このような理由からだ。

ジョージ・クルーニーが主人公を演じた2000年映画『パーフェクト・ストーム』のポスター=資料写真//ハンギョレ新聞社

 「パーフェクト・ストーム」は様々な悪材料が集まって、経済が大混乱に陥る現象を意味する。さほど威力的でない台風が他の自然災害と同時に発生して途方もない破壊力を持つようになるという意味の気象用語だ。2008年米国発の金融危機を予想した米ニューヨーク大のヌリエル・ルビーニ教授が2012年に使って広く知られた。

 2007年『88万ウォン世代』という本で青年の人生に冷徹に光を当てたウ・ソクフン博士は、1日付の京郷新聞コラムで来年大恐慌が来ると予想した。その根拠として、彼は大きな事件が起きた翌年に実物指標が極度に悪化したという実例を挙げた。韓国国内では1980年の恐慌は1979年に大統領殺害事件が、世界的には1974年の経済沈滞が1973年中東戦争のためと分析した。最近起きたチェ・スンシル氏国政壟断波紋から来年の恐慌可能性は90%以上というのがウ博士の主張だ。

 だが、二人が「ドクタードゥーム」(悲観的経済展望をする人を称する言葉)を自任するしばらく前の今年初めから、すでに韓国経済の危機可能性は多様な経路で提起されてきた。韓国内外の経済指標が昨年末から唯一良くなかったためだ。

輸出、消費、雇用不振に積立貯蓄・保険の解約増加

 その上、常に言われている家計負債を除けば、今年初めには主に外部要因が議論された。米国を除いて多くの先進国が低成長のドロ沼から抜け出せずにいるうえに、韓国の輸出の30%を占める中国経済がハードランディングする可能性もあったためだ。ここに北朝鮮の核問題までが繰り返し登場した。

 しかし、下半期からは対岸の火事が足下にまで迫ってきた。内需、輸出、生産の不振など、韓国経済の現実を示す指標に一斉に赤信号が点いたためだ。さらに韓進(ハンジン)海運、大宇造船海洋など造船・海運業の構造調整で政府が見せた無能は、否定的見解を一層煽った。1997年の韓宝・起亜事態にまともに対処できずに発生した国際通貨基金(IMF)救済金融危機を想起させるという批判もじわじわと力を得た。韓国政府が「問題ない」と言うことによって、ますます余裕の持てない状況に立ち至ったのだ。内需沈滞に加えて輸出まで低迷し、今年第4四半期にマイナス成長をするだろうし、「チェ・スンシルゲート」の悪影響で来年の経済はさらに悪化しかねないという観測に次第に傾いている。

朴槿恵政権の4年、経済指標はガタガタ
輸出・消費・雇用で最悪記録更新中
造船・海運構造調整方案も「手抜き」
問題ないと言っていた官僚らも危機を是認

副首相でも大統領に対面報告できないという
経済指令塔の不在も危機を煽る
経済のみならず米国大統領選挙、高齢化進行など
複合要因で経済危機が襲う可能性も

 韓国銀行が最近発表した今年第3四半期の国内総生産(GDP)速報値は、第2四半期に比べて0.7%増加した。このうち建設投資の寄与度が何と0.6%だった。建設を除けば残りの部門はマイナス成長だったという意味だ。特に韓国のGDPの30%程度を占める製造業は、マイナス(-1.0%)成長した。製造業のこうした成長率は、金融危機直後の2009年以来7年6カ月ぶりの最低水準だ。建設景気に依存してきた政府が批判を受けるのは当然だ。

 政府が空振りしている間に低金利時代を迎え、過剰になった流動性は住宅市場に押し寄せた。おかげで住宅価格は暴騰し、家を買うために人々が群がり、家計負債は急速に増加した。韓銀統計によれば、家計負債は今年前半期基準の1257兆ウォンから年末には1500兆ウォン(約135兆円)になる見込みだ。

 国内外の金融機関は、特に韓国の家計負債を警告している。最近韓銀が発表した「システミック・リスク・サーベイ」の結果を見れば、韓国の金融システムの問題5項目を尋ねる質問(複数応答基準)に、国内外の金融専門家らは「家計負債問題」(70%)を最も多く挙げた。次いで、低成長・低物価基調固定化(51%)、米国金利正常化(51%)、中国景気鈍化(48%)、脆弱業種構造調整(44%)の順であった。今年4月の発表では、家計負債(54%)は3位だった。また、韓銀は最近国会に提出した「通貨信用政策報告書」で、家計負債の危険水準が9年6カ月ぶりに「注意」段階に入ったと分析した。

 過熱する不動産景気とは裏腹に消費はガチガチに凍りついた。家計の消費水準を示す指標である家計平均消費指向(可処分所得に占める消費支出の比率)は、2011年第1四半期に78.2%で最高値を記録した後、下落傾向に転じ今年第2四半期には70.9%に下がった。関連統計を作成し始めて以来の最低水準だ。GDPに占める民間消費の比率は昨年49.5%で、外国為替危機の1998年(48.3%)に次いで低い。

 輸出にも警告灯がはっきり点いた。10月の輸出額は1年前より3.2%減少し、9月に続き2カ月連続でマイナスを記録した。韓国GDPの20%を占めるというサムスン電子と現代自動車の不振のせいだ。特にサムスン電子のギャラクシーノート7生産打ち切り事態の余波によるところが大きい。産業通商資源部の9月輸出動向によれば、9月の携帯電話輸出額は18億7000万ドルで、昨年同月に比べて33.8%減った。このため製造業景気は8月から3カ月間底を打っている。

 雇用は発表の度ごとに最悪記録を更新している。大卒失業者の規模は第3四半期基準で史上初めて30万人を超えた31万5000人で、失業者全体に占める比重も初めて30%台を突破した。今年9月の青年(15~29歳)失業率は9.4%で、1999年に関連統計を作成開始して以来の最高値だ。

 家計の最後の砦である保険と積立貯蓄の解約が増えたことは、危機の最も明確な兆候と言える。今年9月末まで都市銀行6行で解約された銀行積金貯蓄574万件のうち45.2%の259万件が満期前の解約だった。昨年に比べ2.6%上昇した。中途解約をすれば元金まで損をしうる保険解約も増えた。生命保険会社(25社)と損害保険会社(16社)が今年6月までに顧客に支払った保険解約還付金は14兆7000億ウォン(約1兆3200億円)で、昨年に比べて7000億ウォン程増えた。

 内需、雇用、輸出、すべての経済部門指標が底打ちしているにもかかわらず、政府の対応は無気力きわまりない。代表的な例が8月末の韓進海運法定管理だ。3月から政府は海運業の構造調整のために大統領府西別館で何回もの会議の末に韓進海運の法定管理を決めた。しかし、実際に蓋を開けてみると正常化どころか韓進海運の船が世界各国の港で荷役を拒否され、海を右往左往し国際的物流大乱が起きた。

 韓国1位、世界7位の海運会社を構造調整し、政府はこれといった明確な原則も持たずに右往左往しただけだ。政府の役割と市場の原則をどのようにバランスを取って位置づけるのかなど、構造調整に必要な前提条件は最初から失踪していた。政府の慌てる姿は血税10兆ウォン(約9千億円)が投入された大宇造船海洋の処理でも同様だった。

対外要因にともなう危機増幅の可能性

 事態の責任は一次的には経済指令塔であるユ・イルホ経済副首相をはじめとする経済部署にある。だが、経済分野に対する朴槿恵大統領の意志も実際にはさほど強固でなかったことを示す事例が次々と明らかになっている。ユ・イルホ副首相は1日、国会予算決算委で朴大統領に対面報告をしてから一カ月が過ぎたと話した。すなわち、副首相が大統領に会いもせずに、その前日に造船・海運産業の構造調整方案を発表したという話だ。さらに韓進海運の構造調整には陰の実力者が介入したという疑惑まで出ている。

 弘益大のチョン・ソンイン教授(経済学)は「陰の実力者チェ・スンシル氏が、保有した途方もない不動産を見れば、この政府が不動産政策などまともに出せなかった理由が分かる」として、「チェ・スンシル事態で国政空白が避けられない状況なので、与野党合意で挙国内閣を設け、山積した経済問題を速かに解決しなければならない」と話した。続けてチョン教授は「韓国の経済状況を見た時、1997年のように外国為替による危機の可能性は低い」として「むしろ韓米、韓中、韓日関係のような外交変数にともなう経済危機の可能性が高い」と見通した。特に8日(米国時刻)の米国大統領選挙の結果でトランプ候補が当選したり、クリントンが僅差で当選した場合、米中日関係の変化により為替レート、貿易問題などに火が点き、韓国を経済危機が襲うこともありえると憂慮した。

 ウ・ソクフン博士は「韓国経済は構造的に日本経済のようにL字形低成長を抜け出しにくい状況なのに、朴槿恵政府はこの衝撃を緩衝できる経済政策をまともに出せなかった」として「経済部門の指令塔を再び設けて、これを中心に軟着陸政策を出して、危機の可能性を最大限分散させる必要がある」と話した。

クォン・ウンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-11-04 20:05
http://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/768875.html 訳J.S(4453字)

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