「国防部長官も将軍なのですか?」
オンライン質問掲示板によく掲載される質問だ。現役の軍人は国務委員である国防部長官にはなれない。憲法第87条に「軍人は現役を退いた後でなければ国務委員に任命することができない」と明示されているためだ。
しかし、現役の軍人が予備役に転役すれば国防長官になれるため、将軍と変わらない将軍出身者が国防長官を独占している。1961年の(朴正煕などによる)5・16クーデター後の60年余り、歴代国防長官は39人全員が元将軍だ。39人のうち33人が陸軍出身で、その33人のうち32人が中将、大将出身だ。
四つ星の階級章がついた軍服を着て合同参謀議長、参謀総長として勤務したのち、午前に除隊し、スーツに着替えて午後に国防部長官に就任する、というケースがよくあった。国防長官をめぐり「スーツを着た軍人」という指摘が後を絶たなかった。現実がこうだから、国民が国防長官を将軍と誤解しても不思議ではない。
国防長官は軍の代表者ではなく、民間を代表して軍を指揮・監督する文民統制の象徴であり実務責任者だ。国軍組織法には「国防部長官は大統領の命令を受けて軍事に関する事項を管掌し、合同参謀議長と各軍参謀総長を指揮・監督する」と記されている。ところが、将軍出身の長官らは自分のアイデンティティを将軍と考え、軍の利害関係を代弁してきた。
2000年以降、政界と市民社会からは、民間人の国防長官を任命し文民統制をきちんとすべきだという声があがった。現役の軍人や将軍出身者らは分断の現実を挙げて「民間人の国防長官は時期尚早だ」と反対した。文在寅(ムン・ジェイン)政権最後の国防長官であるソ・ウク元長官も「現役時代には、南北が尖鋭に対峙している中、野戦現場を正確に理解し軍令・軍政権を行使する将軍出身が国防長官になるべきだと考えていた」と、先月国会で開かれたある討論会で述べた。陸軍士官学校第41期のソ元長官は、2020年9月18日の午前に陸軍参謀総長から転役した後、その日の午後に長官に就任した「スーツを着た軍人」だった。
しかし、ソ元長官は12・3内乱事態を経験してから考えが変わったという。「国防長官は、軍事態勢の際には制服を着る合同参謀議長や各軍参謀総長の補佐を受けるか果敢に委任し、国務委員として軍の政治的中立と軍事的専門性を尊重する中で、文民統制の架け橋の役割、他の政府省庁との業務調整および協力、国民を代表する国会での軍の代弁、国民の声を聴収など、さまざまな政務的活動に比重を置いて業務を進めなければならならず、これにふさわしい専門家が国防部長官に適している」
カン・ゴンジャク予備役陸軍中将(陸士第45期)は最近出した著書『強軍の条件』で、「将官出身の国防長官が能力のある民間人よりも良いという理由はない。政権を創出した民間人の中から探して国防長官を任命し、次期大統領になりそうな人であればさらに良いだろう」と提案した。このような過程を経て成長した人物が大統領になり、大統領が国防業務に精通すれば、国民は安心するだろうという説明だ。また、「民間人出身の国防長官に足りない軍経験は優秀な将軍が補佐すればよい。軍首脳部を司令官ではなく合同参謀議長、参謀総長など『参謀』の名称で呼ぶのは、民間人である大統領と国防長官の軍事参謀の役割を果たすべきという意味だ」と強調した。
12・3内乱事態の時、偏った考えを持った将軍出身の国防部長官がどれほど危険なのかはっきりと見たため、軍内部では民間人国防長官に対する拒否感、懸念が以前よりも薄くなった。これを機に各党の大統領選候補は、大統領と軍事専門の職業軍人集団を結ぶ橋渡しの役割を担う国防部長官にとって必要な能力とは何であり、どのように人を選ぶかを公約に出さなければならない。
李承晩(イ・スンマン)政権と4・19革命以降の第2共和国まで、13年間のあいだに就任した国防長官は、10人中軍出身が5人、軍経歴のない民間人が5人だ。民間人が国防長官になることは、大韓民国が「歩んだことのない道」ではなく、「昔からある未来」だ。