韓国企業の両軸であるサムスン電子と現代自動車の第3四半期実績が「アーニングショック」水準だ。両社の売上合計は前年同期比で7%減少した。営業利益の合計は30%急減し、さらに深刻だ。成長エンジンが消えていく韓国経済の現住所を見るようだ。サムスン電子の実績不振の直接的原因はギャラクシーノート7不良事態だ。現代自動車は自動車市場の需要が減ったうえに労使葛藤まで重なった。だが、両社の根本的危機要因は他所にあるという指摘も多い。それは何だろうか?
サムスン電子は27日、臨時株主総会でイ・ジェヨン副会長を登記理事に選任した。イ副会長は、2014年にイ・ゴンヒ会長が倒れた後、実質的な総帥の役割をしているが、これを公式化した意味が大きい。マスコミは「JY(イ・ジェヨン)のニューサムスン時代開幕」として特筆大書した。だが、実際の市場の反応は冷たかった。「後継者」であるイ・ジェヨン副会長が、株主総会に自ら出てきて、現在の危機を診断し危機打開の解決法を提示し、明確なリーダーシップを見せるという期待が完全に裏切られたためだ。
フランスの新聞、ルモンドのフィリップ・メスメル特派員は「先進国企業は大きな危機を迎えた時、最高経営者が直接乗り出す」として「トヨタのアキオ(豊田章男)社長は実績の発表も自らする」と話した。トヨタの創業家出身のアキオ社長は、2010年のリコール事態で危機に瀕した会社を蘇らせるリーダーシップを見せた。サムスンで30年間勤務したある幹部は「まだイ副会長がリーダーシップを発揮する自信がないとか、“後継者”になる準備ができていないという信号として市場に見られることが心配」とし「製品の生産打ち切りという最悪の事態が起きたのに、誰も責任を負う人がいないが、イ・ゴンヒ会長ならばどうしたろうか」と話した。最近、サムスンの指令塔である未来戦略室が以前とは違うという話が出るのも尋常でなく見える。サムスンのある役員は、現在の状況を「リーダーシップを見せない後継者と、過去の総帥の家臣で満たされたコントロールタワーのすっきりしない同居体制」と説明した。
現代自動車もチョン・モング会長に対する憂慮がますます高まっている。チョン会長は特有の「馬鹿力経営」で現代・起亜自動車を世界自動車業界5位に引き上げた主役だ。だが、80歳を目前にしたチョン会長も、歳には勝てないようだ。グループのある役員は「最近も主要グローバル生産販売拠点を自ら訪ねるほどに老いて益々盛んな様を誇示しているものの、どうしても健康や記憶力が以前と同じではない」と話した。現代自動車が危機状況で新たな挑戦に積極的に出られず、現状維持に汲々としているように内外に映るのも、これと無関係ではないという指摘が多い。子息のチョン・ウィソン副会長の「後継者」としての力量が不足していないならば、経営継承作業を急ぐ必要があるにもかかわらず、誰もチョン会長にあえて直言できない雰囲気だ。
ロッテは年老いた総帥が継承を先送りして悲劇をむかえた代表事例だ。ロッテのある役員は「辛格浩(重光武雄)総括会長が旺盛だった時に継承問題を整理していたならば、兄弟間の骨肉の争いはなかっただろう」と惜しんだ。単純な比較はできないが、明仁天皇が8月に「身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか」として、200年ぶりに生前退位の意向を明らかにしたことは示唆に富んでいる。
「後継者」のリーダーシップが不明だったり、総帥が年老いたのに継承が遅れるのは、すべて財閥の「経営継承リスク」だ。経済改革連帯のキム・サンジョ所長は「サムスンと現代自動車の危機の根本は、継承過程でグループのコントロールタワーがまともに作動しない後進的支配構造にある」として「2世から3世に移る過渡期にある他の大多数の財閥も同様だ」と話した。主力事業の競争力喪失による「事業リスク」と「継承リスク」という「二重の罠」に陥った韓国財閥はどのように危機を抜け出すのだろうか?