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国民健康保険の窓口//ハンギョレ新聞社

国内総生産（GDP）における社会保障への寄与金の現況。※2013年基準（単位：％）、資料：経済協力開発機構（OECD）。右：韓国、左：OECD平均。上からその他（自営業など）、労働者、雇用主//ハンギョレ新聞社

　政府が4日、2060年までの「長期財政見通し」を発表し、初めて事実上の“社会保険料引き上げ”を主張したのは、高齢化時代に入るにつれ、社会保険財政の見通しが暗くなったからだ。社会保険は、病気、老後、失業、労働災害などの個人に危機が迫ったとき、公的保険で支援するものとして、福祉制度の中核の一つだ。

　韓国は主要先進国に比べ社会保険料を少なく収めており、支給額も少ない。 2013年基準で社会保障への寄与金が国内総生産（GDP）の6.4％で、経済協力開発機構（OECD）の平均的な9.1％にはるかに及ばない。もちろん、社会保障負担が少ないからといって、必ずしも福祉が脆弱なわけではない。英国の場合、社会保障への寄与金は比較的少ないが、税金を多く納めてもらって福祉財政を賄っている。しかし韓国は、租税と社会保険の両方が少ない。韓国の国民負担率（租税＋社会保険）は、2013年に24.3％でOECD平均の34.5％より10.2％ポイントも低い。

年平均成長率の推移（単位：％）//ハンギョレ新聞社

　政府は現在の“低負担”システムでは、社会保険財政が維持できないと診断した。国民年金は、2044年に赤字に転じ、2060年に基金積立金が枯渇するものと予測された。労災保険（2030年基金枯渇）、私学年金（2042年）なども、積立金が底をつくものと予想された。公務員年金と軍人年金は赤字が続ており、税金を投入しなければならない状況だ。健康保険は保障性（国民医療費に対する公共医療支出の割合）を53.4％（2013年）からOECD平均の70％台まで引き上げるという但し書きを添えており、2025年から累積収支が赤字になる。納めてもらったものよりも出て行くものが多く、健康保険の運用に支障が生じるということだ。雇用保険は、黒字が続くと予想されたが、貧弱な失業給付など、支給が少ないからでもある。企画財政部の関係者は、「社会保険が維持されるためには、保険料を引き上げたり、支給を減らさなければならない」と述べた。

　ただでさえ、社会保険レベルが脆弱なのに、支給をさらに減らした場合、社会的にも問題にならざるを得ない。現在も労災保険は認められにくい場合が多く、失業給付と国民年金は、死角が広いうえ、“小遣い”レベルという批判を受けている。健康保険は保障性が低く、10世帯のうち8世帯で平均5.78個の民間の医療保険に加入しているのが実情だ。政府は、保険料を引き上げないと、2060年には今よりも利点が46％減ると予測した。

国家債務比率の変化（単位：％、資料：企画財政部、韓国開発研究院、統計庁）。シナリオ1：政府の「裁量支出」が経済成長率程度で増加し、現在の制度が維持される場合。シナリオ2：シナリオ1の裁量支出の増加額より10％減らす場合//ハンギョレ新聞社

　このような理由から、保険料を引き上げるべきだという主張が力を増している。政府は社会保険の支給水準を現在同様で維持するとしても、資金の枯渇を防ぐためには、国民負担率を28.4％から39.8％に11.4％ポイント上げなければならないと推算した。ヤン・ジェジン延世大学教授（行政学）は、「社会保険をただ『引き上げるべきだ』と主張するのは、あまり説得力がない。大企業の従業員との事業主を中心に負担が大幅に増えるため、保険料の引き上げには否定的だ。単に資金枯渇を防ぐためではなく、彼らを説得できるように、政府が社会保険改革の全面的なロードマップを提示しなければならない」と述べた。

　政府が「増税はない」という態度を維持していることも、批判の対象になっている。失業者と非正規労働者など、労働市場が不安定になるにつれ、社会保険が強化されても死角の問題はそのまま残る。例えば、国民年金の場合、地域の加入者（自営業者）のうち、経済事情などで年金納めない納付例外者54.1％に達している。非正規労働者の中では38.4％だけが年金に加入している。

　「私が作る福祉国家」のオ・ゴノ運営委員長は、「社会保険の死角地帯の解消だけでなく、貧困層支援と基礎年金の強化、公共賃貸住宅など、急がれる政策が多い。政府は税入不足の問題は事実上放置して、支出だけを削減しようとする」と指摘した。

韓国語原文入力: 2015-12-04 19:46