本文に移動
全体  > 経済

[コラム] 翳るサムスンの実力

登録:2015-06-10 10:11 修正:2015-06-11 12:39
サムスン物産と第一毛織が合併を決議した5月26日午後、ソウル・瑞草区のサムスン物産本社で、従業員が行き来している。両社は7月の臨時株主総会を経て、9月1日の合併を完了する計画だ=イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 最後まで観ないと結末は分からない。米国系ヘッジファンド、エリオット・マネジメントの突然の登場で、サムスングループの未来構図を描こうとした第一毛織とサムスン物産の合併ドラマの脚本が、急に乱れている。来月17日に予定された放映終了(株主総会)を控え、どんでん返しの可能性は相対的に低そうだが、ドラマ中盤の吸引力はかなり強まった。エリオットは9日、「合併案は明らかに公正ではなく、サムスン物産株主の利益に反し不法だと信じることに変わりはない」と株主総会決議禁止仮処分訴訟を起こす意向を明らかにした。

 4日にエリオットが二つの会社の合併反対意志を公開する前まで、ドラマはサムスン側が意図する脚本通りに進むかのようだった。だが、エリオットの登場後、事情は一変した。エリオットは国民年金を含む機関投資家を相手に共同戦線を展開することを提案し、これに対抗してサムスンでは慌ただしくく票の管理に乗り出している。

 誰がなんと言っても、問題の火種を育てたのは合併決定の真意にあると見るのが妥当だ。二つの会社の合併はサムスングループの支配構造を一刀のもとに変えてしまう。財閥オーナー家が30%以上の持分を握るサムスン物産(統合法人)が、グループの両軸であるサムスン電子とサムスン生命を支配する構図だ。持ち株会社転換と似た効果を生みながら、オーナー家、特にサムスン電子イ・ジェヨン副会長のグループ掌握力を最大化できる妙手だ。今回の合併決定が3世継承作業に関連付けられる理由がここにある。

 それにしても気がかりなことがある。サムスンはエリオットのような突発的な“変数”の出現の可能性を、本当に予想できなかったのか?率直に言って、3世継承プロジェクトは、他のいかなる事業とも比べられないグループの核心プロジェクトだったはずだ。であるなら予想可能なすべてのシナリオを何度も隅々まで検討して当たり前だ。外国人投資家の属性上、正確な実体を把握するのが難しいとしても、この情況からして、エリオットはサムスンのレーダー網の外側に存在していたとしか考えられない。

 野心溢れる3世継承プロジェクトでサムスンが意外な伏兵に会ったのは、俗っぽい言葉で意外な“シチュエーション”だ。サムスンは以前とは違う事態に直面しているわけだ。なぜこうしたことが起きるのか。

サムスンとしては“食い逃げ”の可能性を最大限浮上させたいところだろう。エリオットの不良な意図を浮かび上がらせ場、突発的な変数の登場の衝撃を、少なくとも減らすことはできるから。韓国では2003年にSKと経営権を争い9000億ウォンの相場差益を得て突然姿を消したソベリンの記憶が蘇る。だが、本当の秘密はサムスン内部に求めなくてはならないようだ。

 サムスンの図体は過去とは比べものにならないほど大きい。その地位も想像以上だ。ひょっとすると韓国人より外国人がサムスンの動きを周到綿密に見守っていたことだろう。サムスンが推進する3世継承作業の舞台は、1987年に創業者のイ・ビョンチョル元会長の他界とともに行われた2世継承作業の時とは次元が完全に異なる市場だ。地位も規模も大きくなり、自然と“おこぼれ”も大きくなった。監視の目はずっと増えたし、質も変わった。

 これに対しサムスンの動きにはあまりにも“隙”が多い。合併後のシナジー効果に対する考慮は後まわしにしたまま、安定した継承作業にだけ頼って大型系列会社を合併させることを決めた。合併を決める理事会では、合併比率やシナジー効果に対する議論さえなかった。

 守備に徹底したサッカーは相手に空間を許さない。過去のサムスンはそうした。だが質が高くなり、空間を活用する作戦サッカーを繰り広げるための総合的な実力を備えられなければ、逆に相手に空間を支配されてしまうのが常だ。相手の目には隙間が明確に見える。サムスンは隙間がなかった過去を懐かしがるかもしれないが、舞台は変わった。隙間を塞ぐことができるのは、体質改善、本物の実力だけだ。

チェ・ウソン論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-09 20:03

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/695203.html 訳Y.B

関連記事