本文に移動
全体  > 経済

サムスン物産、“救済者” KCCに自社株売却

登録:2015-06-10 22:49 修正:2015-06-11 13:18
 合併株主総会、議決権票対決局面に突入
 持分5.76%を6743億ウォンで譲渡
 「円滑な合併完了のため」表明
 友好持分合わせ20%近く確保
 処分行為の効力を巡り判例交錯
 「新たな攻撃の名分与えた握手」との指摘も

 サムスン物産が10日、自社株の全量である5.76%(899万557株)をKCCに株式市場の締め切り直後に時間外売買方式で6743億ウォン(約740億円)で譲渡した。 前日まで「自社株の売却はない」という立場から電撃的に態度を変えたもので、エリオット・マネジメントとの議決権票対決を念頭に置いたものと分析される。

サムスン物産・第一毛織合併発表後の株価推移 //ハンギョレ新聞社

■友好持分確保?

 サムスン物産は自社株の売却について「円滑に合併を終えるための友好持分確保と同時に、投資余力を向上し当初の合併趣旨である事業多角化およびシナジー向上を加速化する意志」と明らかにした。 既存のサムスンSDI(7.39%)、サムスン火災(4.79%)、イ・ゴンヒ会長(1.41%)、サムスン福祉財団(0.15%)等、13.82%からKCC(5.96%、前日買い取った0.2%含む)まで合計19.78%を友好持分として確保したことになる。 株主総会で議決権を持つ株式を確保するには、9日までに株式を買いとらなければならなかったが、場外取引は株主名簿の閉鎖日である11日夜12時まで可能だ。 これに対して証券取引所関係者は「サムスン側が非常に急迫しているように見える」と話した。

 サムスンの急な決定にもかかわらず“救済者”として名乗り出たKCCの持分が本来の役割を果たせるか、疑問が残る。 2006年、大林(デリム)通商の自社株売却と関連して、ソウル西部地裁は「自己株式処分の場合(中略)特定株主への一般的な譲渡が株主平等の原則に反し、株主の会社支配に対する比例的利益と株式の経済的価値を顕著に害する恐れがあれば、このような自己株式の処分行為は無効」と判決したことがある。 会社全体の財産である自社株を、大株主の経営権確保のために売却することはできないという判決だ。 反面、別の裁判所ではこのような行為を適法と認めた。

 キム・ファジン・ソウル大教授(法学)は「自社株の売却と関連して結果が異なる判例が出ていて、まだ不確かな状態」とし「判決を予測する訳には行かないが、議決権を巡って法的に争うことは可能に見える」と話した。

■票対決になるか?

 サムスン物産の自社株売却は、票対決のための急迫した決定と解釈される。 資本市場研究院のファン・セウン資本市場室長は「票対決になる場合、サムスン側の勝算が高い」としつつも「自社株まで売却したのを見れば、差し迫った感じがある」と指摘した。 株主総会で持分基準で出席率を70%と仮定する時、3分の1にあたる23%が反対すれば、合併が中止になるかも知れない。 さらに1兆5千億ウォン以上(サムスン物産持分の約17%)の株式買収請求権が行使されれば、やはり合併が失敗に終わることもありうる。 エリオットのサムスン物産持分は7.12%に過ぎないが、オランダ年金基金資産運用会社(APG・0.35%)や日盛新薬(2.05%)等も合併比率に不満を示すなど、サムスンの不安感を高めた。

 だが、サムスン物産の今回の判断を“握手”と見る見解もある。 キム・サンジョ経済改革連帯所長(漢城大教授)は、「サムスンは会社の財産である自社株を支配株主の経営権防御という私的な利益に動員し、エリオットに攻撃の名分を提供した」として「今回の株主総会で勝ったとしても今後の経営権継承のための支配構造再編過程を考慮すれば悪影響を及ぼす」と話した。 また「このような方式で継承する場合、イ・ジェヨン(サムスン電子)副会長が市場と社会から経営権確保の正当性の承認を受けられるか疑問」と話した。オランダ年金基金のパク・ユギョン理事も「海外の大企業の場合、合併過程が順調でなく常に論議が生じ、結局は株主の意見を受け入れる」として「多くの株主の意見と異なる行動をするサムスンは理解し難い」と話した。

 一方、新政治民主連合のキム・ギジュン議員は、両社の合併比率算定方式を“最近6カ月”に変えれば、その比率が「1(第一毛織)対0.41(サムスン物産)」と出てくると明らかにした。 キム議員は「合併時点をサムスン物産の株価が最低点である時期に決めたが、これを6カ月算定方式と比較すると、イ・ジェヨン サムスン電子副会長は約5000億ウォン(約550億円)の利益を得ることになる」とし、「サムスン物産の理事陣が背任行為をしていないか、調べる必要がある」と明らかにした。

イ・ジョンフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/695441.html 韓国語原文入力:2015-06-10 21:16
訳J.S(2027字)

関連記事