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韓国経済の脅威はデフレでなく家計所得の不振

登録:2015-03-10 11:28 修正:2015-03-10 12:06
“デフレ脅威”の争点を探ると

 物価上昇率は2年連続で下落
 コアインフレはむしろ小幅上昇
 消費者物価は上昇する見込み
 家計消費が減り経済成長率低下
 専門家「所得増大など構造改善を」

 生産と消費、投資が振るわない中、物価上昇率も下がり続け、デフレーションの危機を憂う声が次第に高まっている。4日、チェ・ギョンファン副首相兼企画財政部長官が「デフレーションが大きな心配」と発言した後、韓国銀行に向けた政策助言が各界から注がれだした。金利を下げ量的緩和を検討すべきだとする意見まで出された。韓国経済にデフレ脅威は果たしてどこまで近づいているのだろうか。

■ 物価下落でもコアインフレは反騰

物価上昇率と期待インフレーション率 //ハンギョレ新聞社

 デフレは物価下落から始まる消費・投資不振の悪循環だ。この辞書的な定義によれば韓国経済はデフレではない。消費者物価は今も上がり続けている。先月も前月より0.5%上昇した。それでもデフレ憂慮が広がる理由は、物価の“流れ”のためだ。

 2年余りの間、物価上昇率は低くなり続けている。2012年に前年比2.2%上がった物価は2013年と2014年には上昇率が1.3%まで低くなった。2月は前年同月比0.5%上昇に終わり、たばこ値上げ分を差し引けば全消費者物価が下落した。こうした流れがデフレ憂慮を育てているのだ。

 価格変動性が大きい食料品とエネルギー品目を抜いたコアインフレ(OECD基準)から見ると、物価上昇率はそれほど低くない。年間基準で2013年に1.5%上昇、昨年は1.7%上昇し上げ幅が大きくなった。今年1月と2月の場合、たばこ値上げ要因を除き上昇率は昨年12月より0.1%ポイント高い1.5%だ。こうしたコアインフレの流れはデフレ反駁論の主な根拠として提示される。消費者物価上昇率も国際原油価格が反騰するにつれ3月から再び幅が大きくなると予想されている。

■ 消費者は物価が下がるとは考えない

通貨乗数 //ハンギョレ新聞社

 消費者は今後物価が落ちると考えていない。韓国銀行が全国56都市約2200世帯を対象に「家計が予想する今後1年間の物価上昇率」(期待インフレーション率)を調査した結果、家計は直近の調査で物価が2.6%上がるとした。2年前の3%まで上がることはないが、今後も物価が上がると考えていることを示唆する。

 ただし昨年下半期に入り、10月と12月にそれぞれ0.1%ポイントずつ期待インフレは下がった。ハム・ジュンホ韓国銀行金融通貨委員は先月27日の講演で「低物価が期待インフレに影響を及ぼせば経済回復は遅れる」とこうした期待インフレの変化に注目した発言をした。1990年代以降、何度も物価下落を経験した日本の場合、1994年に期待インフレは0.5%を上回ったが、物価は下落した。

■ 流動性の罠、それとも5万ウォン札が原因?

家計における平均消費傾向の推移 //ハンギョレ新聞社

 デフレ時代は家計は貯蓄を、企業は現金資産を増やす。消費や投資として使わず握った金を離さないという意味だ。金融機関も貸し渋りをする。その様相を一目で計ることができる指標が通貨乗数(通貨量/マネタリーベース)だ。

 通貨乗数は2010年4月(25.11倍)後に着実に下がっている。2013年末に20倍以下に落ち、その後も下落を続けた。昨年12月現在の通貨乗数は18.95倍を記録している。史上最低値だ。こうした流れはデフレ憂慮を主張する側の好材料となる。 キム・チョング現代経済研究院主任研究員は「流動性の罠も排除できない流れ」とした上で、「政府と韓銀が有効需要拡大対策を用意すべきだ」と述べた。

 しかし韓銀の判断は異なる。韓銀は制度変化に重きを置く。2009年から始まった5万ウォン札発行で、家計や企業が金を融通するより金庫に仕舞うようになったというのだ。実際、5万ウォン札発行以前の2008年に95.4%に達した貨幣還収率は、昨年64.7%まで大きく落ち込んでいる。韓銀は2013年に出した報告書で「通貨乗数の下落は金融機関の信用創出機能低下より制度・政策変更の結果と解釈しなければならない。携帯の便宜性などで5万ウォン札保有が増え、通貨乗数は当分下落傾向を続ける可能性が高い」と診断した。

■ 消費減らす家計、問題は所得不振

 家計は着実に腰のベルトをきつく締め付けつつある。可処分所得のうち消費支出が占める比重を意味する平均消費傾向(全国2人以上の世帯基準)は昨年4分期71.5%を記録した。2011年1分期(78.2%)に比べれば15分期ぶりに6.7%ポイントも落ちた。税金などを払って残った所得が100万ウォンなら、2011年1分期には78万2000ウォンを支出したが、昨年4分期には7万ウォンほど支出を減らしたという意味だ。

 消費を後回しにする家計の様相は物価上昇の圧力を低め、経済成長率も引き下げる結果を生む。ただし、デフレ憂慮により家計の消費傾向が落ちたのか、でなければ消費傾向の減少がデフレ憂慮を高めているのかは容易に判断できない。このように物価指標は方向性が紛らわしく、通貨乗数指標の解釈は交錯する。家計の消費傾向は落ちているが、デフレの決定的証拠とするには不充分だ。

 だが、家計の所得不振と借金増加、未来に対する不安が消費を甦らせにくくする構造的な要因になっていることに異論はなさそうだ。アン・ドンヒョン ソウル大教授(経済学)は「外部要因(原油価格下落)にともなう消費者物価下落を根拠としてデフレを主張し、韓国銀行に金利引き下げを要求するのは常軌を逸した主張」と指摘した後、「家計の所得不振にともなう低成長が固定化されている現実に注目し、(金利引き下げなど)短期対応よりは所得増大など構造改善に合わせた政策対応が望まれる」と語った。

世宗/キム・ギョンナク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.03.09 21

http://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/681509.html 訳Y.B

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