15日、韓国銀行金融通貨委員会が基準金利を年2%で凍結した直後に開かれた記者会見で、イ・ジュヨル韓銀総裁は昨年4分期の実質国内総生産(GDP)成長率推定値を初めて公表した。 彼が明らかにした数字は前期比0.4%。 9分期ぶりの最低値で、セウォル号事故で民間消費が急減した第2四半期成長率(0.5%)より低いうえに、韓銀展望値(1%)の半分にも達し得ない“成長率ショック”だった。 昨年8月と10月の二度にわたる基準金利引き下げで、政府も財政政策を強化すると公言していた状況を考慮すれば容易に理解できない成績表だった。
イ総裁は4分期の成長率鈍化に関して「移動通信端末装置流通構造改善法」(端通法)にともなう通信分野での消費減少を第一に挙げ、次に税収不足にともなう政府支出不振による建設投資急減を挙げた。 イ総裁は今年1分期からは国内経済が世界経済の回復傾向と国際原油価格下落、拡張的財政政策に力づけられ昨年より急速な回復傾向を見せると強調した。
だが、23日に韓銀が「2014年4分期および年間国内総生産(速報値)」資料を発表したことにより状況が多少変わった。 チョン・ヨンテク韓銀経済統計局長は、4分期実質国内総生産成長率が前期対比0.4%に終わった最も大きな原因として、イ総裁の説明とは異なり輸出不振を挙げた。 実際、輸出は昨年第3四半期(-2.2%)に続き、4分期(-0.3%)にも後退した。 チョン局長はイ総裁と同じく税収不足にともなう建設投資の急減を成長率急落の第二の原因に挙げたが、追加的な分析を行った結果、端通法が成長率鈍化に及ぼした影響は大きくなかったと明らかにした。
チョン局長の説明が注目されるのは、一時的な要因ではなく構造的な要因と見られる輸出不振が4分期成長率鈍化の核心的背景だという点だ。
不安な輸出前線
昨年輸出、世界の交易増加を下回る
2001年以後13年ぶり初めての逆転
加工貿易退潮など構造的な問題
今年の輸出展望値も良くない
内需回復は不透明
所得停滞・借金急増のため財布緩まず
住宅景気・低油価効果も不確実
民間機関の成長率展望は下方設定
今年の成長率は2%台下落もありうる
韓銀は15日、イ総裁の記者会見後に「2015年経済展望」を発表した。今年の実質国内総生産成長率は昨年10月展望値(3.9%)より0.5%pも低い3.4%と展望した。 政府の展望値(3.8%)より0.4%低い数値だ。 韓銀は成長率展望値を大幅に下方調整しつつも、今年の経済を否定的には見ていないと話した。 成長率展望値を低くした理由は、主に昨年4分期の成長率が急減したのに伴ったことで、経済の回復速度は昨年10月展望と変わりがないと話した。
韓銀は今年の韓国経済が分期別に前期対比1%ずつ成長すると展望した。 昨年の分期別前期対比成長率(平均0.7%)より高い数値だ。 韓銀が年間成長率展望値を0.5%pも引き下げながらも回復速度は昨年より速いと説明する理由だ。 韓銀は国際原油価格の下落にともなう景気改善効果と、米国の成長拡大などを韓国経済の成長率を高める要因として挙げた。
だが、韓銀のこのような展望を実現させるのは容易でないとする指摘もある。 昨年第3四半期から明確になっている輸出不振が、昨年4分期成長率急落の主な要因になったように、今年も輸出が成長率を制約する要素になる可能性を排除できないためだ。
実際、これまで韓国経済成長の牽引車役を果たしてきた輸出の寄与度がますます減っていることが明らかになった。 昨年、韓国の商品輸出は前年より2.2%増えたが、これは昨年の世界交易増加率展望値(3.3%)より1.1%低い数値だ。 韓国の輸出増加率が世界交易増加率を下回ったのは、情報技術(IT)バブルが消えて世界経済が打撃を受けた2001年以来13年ぶりだ。 2000~2007年韓国の輸出増加率は年平均13.4%で、世界交易増加率(7.3%)の2倍に達した。 だが、グローバル金融危機以後に状況が変わり、2012年と2013年には韓国の輸出増加率と世界交易増加率の格差が1%台に狭まり、ついに昨年には逆転された。 問題はこのような状況が固定化しかねない点だ。 韓銀は今年の輸出増加率展望値を昨年10月(5.5%)より何と2.1%pも下げた3.4%と提示した。 これは国際通貨基金(IMF)が展望した今年の世界交易増加率(5.0%)より1.6%p低い数値だ。
韓銀はこのような輸出不振の背景にグローバル経済の構造変化があると診断した。 まず先進国の景気回復動向鈍化にともなう需要萎縮と、先進国の保護貿易主義などにより最終材の輸出が不振に陥っている。 また、先進国の企業が製造拠点を本国に移して韓国、中国、東南アジア国家連合(ASEAN)国家の輸出高成長を牽引した“グローバル・バリュー・チェーン”が弱まったことが中間材の輸出を萎縮させた。 特に韓国企業は中国の安い労働力を活用して原材料を加工した後に再輸出する加工貿易方式で付加価値を高めてきた。 だが、韓国の最大の輸出市場である中国が、内需中心成長と加工貿易抑制政策を展開し既存の輸出公式に急制動がかかっている。
輸出不振が予想されることにより今年の成長寄与度は輸出(1.2%)より内需(2.2%)が大きくなると展望された。 だが、内需の基盤になる民間消費も所得停滞と家計負債急増のために大きな伸びは期待できない。 韓銀は民間消費増加率を2.6%と展望したが、これは10月展望値(3.5%)より0.9%低くしたものだ。 イ・ジュンヨプ現代経済研究院経済動向分析室長は「民間消費の下支えがないので、景気回復動向が続くと見るのは難しい状況」と話した。 イ・グンテLG経済研究院首席研究委員は「今年も輸出主導の経済成長は期待し難く、それでも内需部門で昨年よりは改善されると見られる側面は、低油価効果と住宅景気だが、それもまだ不確実性が大きい」として「低油価により家計の実質所得が増え、企業の生産コストも低くなる効果が期待されるが、デフレーションに対する憂慮と国際金融市場不安リスクが肯定的効果の相当部分を相殺するだろう」と見通した。
韓銀も消費および投資心理の不振長期化と中国とユーロ地域の成長回復遅延などを下方リスクに挙げ、成長経路の不確実性が昨年10月の展望より高まったと見ている。 韓銀は今年の成長率を3.4%と展望し、過去の予測誤差を考慮した展望区間は2.6~4.2%と提示した。 下方リスクが拡大する場合、今年の成長率が2%台に下落する可能性もあるということだ。
民間機関の成長率展望は韓銀より一層低くなっている。 サムスン証券は19日、今年の成長率展望値を既存の3.7%から3.0%に下げた。消費者物価上昇率は0.9%と展望した。 イ・スンフン サムスン証券エコノミストは「消費と投資にまたがる内需全般の下方リスク現実化、および上半期輸出不振深化の可能性などを勘案する時、韓銀が予想する成長経路は達成困難と見える」として「今後、韓銀の経済展望が追加引き下げされる可能性が非常に高いと判断される」と主張した。
韓国開発研究院(KDI)は先月、今年の成長率展望値を3.8%から3.5%に引き下げた。韓銀展望値よりは0.1%p高いが、韓国開発研究院はこのような展望に小さくない下方リスクがあるという点を強調したことがある。 中国経済の急速な成長鈍化とユーロゾーン経済の長期沈滞によって展望の前提である世界経済成長率(3.8%)が予想より低くなる可能性があり、今年の成長率が3.5%に達し得ないこともあると指摘したわけだ。