韓日農民連帯を提案する
新潟の農業専門家
「私たちの故郷新潟はコメの名産地で“魚沼”という日本で最高のブランドのコメを生産している。普通米が10キロ4千円の時、魚沼は7千円でした。 最高の相場だった1968年には60キロ当たり3万4千円まで上がった。 だが、世界貿易機構(WTO)交渉の末に、99年に結局コメ市場を開放した後、現在魚沼は半額の10キロ当たり2300円程度で販売されている 」
新潟県の小千谷農業協同組合指導者である堀井修氏(65)は新潟産の野菜の価格も暴落したと話した。 同じ新潟の柏崎で伝統餅を生産・販売しているファーミングスタッフ代表であり40ヘクタールのコメ栽培をしているという安野検一氏(61)は「福島原発事故の後、放射能(セシウム)が新潟側にも飛んできて屋外で育った野生キノコは食べられない」と付け加えた。
新潟は世界最高の原発密集地帯
福島事故で稼動中断状態だが
環太平洋経済協定など市場開放圧力
金泉のブドウ農場を営むキム・ソンスン氏と15年の交流
チリとの協定後の韓国農業被害などを調査
再生エネルギーへの転換など緊急な対策を議論
11月28日、2人と共にハンギョレ新聞社を訪れた金泉(キムチョン)のキム・ソンスン韓国ブドウ会名誉会長(85)は、「この方が韓国の農業事情について私以上によく知っている」、「本当にすごい人たち」と話した。
55年にわたりブドウ栽培を行っているキム会長は、堀井氏に15年前慶州国際農業会議で初めて会い、安野氏とは彼が12年前から消費者生活協同組合アイコープ(iCOOP)生協事業連合会と交流して縁を結んだ。
この間堀井氏は、金泉を何度も訪ねてきて、ブドウだけでなく近所の畑や組合を訪問し調査して、自由貿易協定(FTA)対策も共に議論した。 全農も訪問し、昨年は忠清北道槐山(クェサン)郡の佛頂(プルチョン)農協まで訪ねて行った。 チリとの自由貿易協定締結が韓国農業にどんな影響を及ぼしているかを調査し、補償問題まで一緒に相談してきた彼は「安倍政権の環太平洋経済パートナー協定(TPP)締結推進により、日本でも不安が高まっている」として、韓国の農民と連帯して対応する方案を探していると話した。 新潟農業技術センターで仕事をし新潟大学で講義もしてきた堀井氏は、2002年まで農業に関する5分間のNHKの放送原稿を22年間執筆した新潟農業の先生だ。
キム氏は「一人でも真っすぐに立ってきちんと関心を持てば世の中を変えられるという確信を二人を見て抱いた」として「韓日交流が最近は政府間ではほとんど断絶しているが、なおさら民間交流を一層活発にして共生する道を探さなければならないのではないか」と語った。
彼はチリとの自由貿易協定でチリ産ブドウが大量に輸入されているが、自身が作っているブドウ栽培は「昨年もそれなりに堅調だった」と話した。 品種を変え、技術向上にも努めるなど自ら対処してきたということだ。 「ところが、今年に入ってブドウの価格がほとんど半額に暴落した。 色々な要因があるだろうが、米国とヨーロッパとの自由貿易協定締結により、そちらのブドウが怒涛のように流れ込んでいるためだ。 韓国とは地球の反対側にあるチリ産ブドウは、韓国産とは出荷時期が違うのでそれなりに耐えられたが、今は米国とヨーロッパからいつでも入って来て、特にヨーロッパ産はその品質が非常に良く出荷量も多い。 それが安値でスーパーに入り込み消費者の好みも変わっている。 本当に大変なことになった」。二人は新潟には8基の原発が集中していて、「世界最高の原発密集地帯」に挙げられると話した。 福島原発事故の後、今は全て稼動中断状態だ。だが、日本はすでに人口も減少していて、新たな農産物市場の形成も難しいとし、将来を心配した。
去年の春、福島地方を見て回ったキム氏は「そちらの農民は、今では農作業をしても農産物を売るところもないのに、農地を遊ばせておくこともできないので綿花の栽培をしてTシャツを作って売り、太陽光などの再生エネルギー開発、事故現場を見に来る観光客を案内することで生計を立てようとしていた」と伝えた。 「事実、300万の人口が密集している釜山・蔚山(ウルサン)一帯で原発を稼動中の韓国にとっても他人事ではない。再生エネルギーへの転換など至急対策を立てなければならない」とも語った。
自然の摂理に従わなければならない農民の心は、韓日間の距離を跳び越え農業の不安な未来に向かっていた。