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生命体の3つの基本要素、小惑星ベンヌですべて発見

登録:2025-12-13 06:39 修正:2025-12-13 10:20
[クァク・ノピルの未来の窓] 
塩基、リン酸に続き、リボース糖分子も確認 
DNAに必要なデオキシリボースはない 
生命体「小惑星・RNA起源説」を後押しするもの
科学者たちは小惑星ベンヌの標本から生命体に必須なリボース(五炭糖)とブドウ糖(六炭糖)を発見した。NASAの宇宙船オサイリス・レックスが撮影した小惑星ベンヌ。2年間かけて撮影した写真を合わせて完成した=米航空宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 私たちが知っている類型の生命体、すなわち地球生命体の誕生に欠かせない基本構成要素のすべてが小惑星の標本から発見された。

 日本の東北大学が中心となった米日共同研究チームは、2023年に米国航空宇宙局(NASA)の宇宙探査船オサイリス・レックスが持ち帰った小惑星ベンヌの標本から、地球生命体に欠かせない五炭糖(リボース)を発見し、国際学術誌「ネイチャー・ジオサイエンス」(Nature Geoscience)に発表した。宇宙船が採取した標本は121.6グラム。これで生命体の遺伝情報を伝達するRNA分子を構成する要素のうち、これまで抜けていた最後のピースが加わった。

 これに先立って科学者たちは、ベンヌの標本から核酸(DNA、RNA)の基本単位であるヌクレオチドの3つの構成要素のうち、塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル)とリン酸塩を発見した。だが、2つの間をつなぐ糖分子(リボースまたはデオキシリボース)は発見できていなかった。

宇宙船オサイリス・レックスが採取した小惑星ベンヌの標本の一部=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■小惑星が地球の生命の種をまいたのか

 今回、ベンヌの標本から発見した糖分子は、リボースの他にもブドウ糖(六炭糖)、ガラクトース(六炭糖)など様々な種類だ。特に、生命体の新陳代謝で重要なエネルギー源であるブドウ糖を地球ではなく天体で発見したのは初めて。ただし、DNAに必要なデオキシリボースは見つからなかった。

 研究チームは、糖分子はベンヌの母天体の内部で塩分が含まれた水が岩石内部のホルムアルデヒドと反応して作られたものとみられると分析した。ベンヌの母天体は太陽系を作った分子雲である太陽星雲を構成するガスとホコリ粒子の集合体。粒子が互いに衝突・凝縮し、微惑星体が形成される過程で、ベンヌの母天体も形成された。母天体はその後、太陽系の内側に移動する途中、小惑星帯で粉々になり、その破片が再びゆるく集まり、現在ベンヌと呼ばれる500メートルの大きさの破砕集積体(rubble pile)の小惑星になった。

 地球外の岩石からリボースが発見されたのは初めてではない。小惑星の分身といえる隕石2個から、リボースをはじめとする糖分子が検出されたことはある。しかし、これは地球に墜落した後に流入した物質である可能性もあるため、科学者たちはより確実な事例を追跡してきた。今回の標本はNASAの宇宙船オサイリス・レックスが直接採取して持ってきたもので、地球環境の影響を全く受けていない。

 宇宙船が今まで持ち帰った小惑星の標本はたった2個だけなのに、生命体の3つの基本構成要素がすべて発見されたのは、小惑星が生命体の誕生に必要な成分を地球だけでなく他の惑星にも伝達した可能性があることを示唆する。ブドウ糖が発見されたのもやはり生命体の重要なエネルギー源が幼い太陽系時代にも存在したことを意味するという点で、意味が大きい。

リボース(五炭糖)と以前発見された塩基、リン酸塩はたんぱく質を合成する遺伝情報を伝達するRNAの3つの分子構成要素。ブドウ糖(六炭糖)は生命体の重要なエネルギー源=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■DNAよりRNAが先か

 さらに重要なのは、デオキシリボースは除き、リボースだけが発見されたという点だ。デオキシリボースはDNA、リボースはRNAの構成要素だ。これは生命の誕生がDNAではなくRNAから始まったという仮説の説得力を高める。研究チームは「今回の発見は太陽系初期にはリボースの方がデオキシリボースよりも多かった可能性を示唆する」と説明した。

 今日の生命体はDNA、RNA、タンパク質という3つのタイプの機能性生体高分子で構成された複雑なシステムに基づいている。研究を率いた古川義博教授は「しかし、初期生命はこれより単純だったかもしれない」とし、「RNAは遺伝情報を保存し多様な生物学的反応を促進できるため、最初の機能性生体高分子として有力な候補」だと語った。

宇宙船オサイリス・レックスが小惑星ベンヌで標本を採取する姿を描写した想像図=米航空宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■窒素と酸素が豊富な「宇宙ガム」の出現

 同じ日にNASAの研究チームも小惑星ベンヌの標本を分析した論文2本を国際学術誌「ネイチャー天文学」に発表した。

 まず、NASAエイムズ研究センターとカリフォルニア大学バークレー校の共同研究チームは、以前は発見されなかったガムのような物質を発見した。一時は柔らかくて柔軟だったが、今は硬く固まったこの「宇宙ガム」(space gum)は、窒素と酸素が豊富な高分子類の物質で構成されている。この物質は、ベンヌの母天体の鉱物と氷が自然放射線を受けて温かくなりはじめ、自ら、または他の分子と反応して作られたものと推定される。このような高分子が、地球で生命を芽生えさせた化学的前駆体を伝達した可能性があると研究チームは分析した。

 NASAジョンソン宇宙センターの研究チームの標本分析では、太陽系が生まれる前の星から噴出した超新星の残骸が検出された。超新星とは巨大な星が最後の段階で起こす爆発現象をいう。超新星の残骸の量も、以前に他の天体で検出されたものより6倍も多かった。研究チームは、これは小惑星の母体が超新星の残骸の豊富な太陽星雲の原始惑星系円盤で形成されたことを示唆すると述べた。

*論文情報

Bio-essential sugars in samples from asteroid Bennu. Nat. Geosci(2025).

https://doi.org/10.1038/s41561-025-01838-6

Nitrogen- and oxygen-rich organic material indicative of polymerization in pre-aqueous cryochemistry on Bennu’s parent body. Nat Astron(2025).

https://doi.org/10.1038/s41550-025-02694-5

Abundant supernova dust and heterogeneous aqueous alteration revealed by stardust in two lithologies of asteroid Bennu. Nat Astron(2025).

https://doi.org/10.1038/s41550-025-02688-3

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1233765.html韓国語原文入力:2025-12-12 00:28
訳H.J

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