1973年にエジプトとイスラエルが繰り広げた第4次中東戦争は、ソウル郊外に奇妙な1級国家保安施設を作る口実となった。戦争の余波で「オイルショック」に見舞われた朴正煕政権は、有事に備えて巨大な原油備蓄タンクを5棟作った。
軍人たちの厳重な警備の下、2002年のワールドカップまで原油約7千万リットルが備蓄されていたタンクの空間で、外勢にあらがった朝鮮民族の抗争史を描いた絵や動画が展示されている。1894年の東学農民革命、1919年の3・1運動、1923年の全羅南道新安郡の岩泰島農民小作争議など、近代の民族抗争史を記録した中堅画家ソ・ヨンソンの企画展「ソ・ヨンソン・プロジェクト:岩泰島(アムテド)」だ。
この展示の軸となるのは、1923~1924年に岩泰島で起きた小作争議だ。小作料を70%から80%に引き上げようとした地主ムン・ジェチョルの搾取に立ち向かった農民たちが、彼らの主導者ソ・テソクらを連行していった木浦警察署の前で断食闘争を行い、小作料の40%への引き下げを勝ち取った、日帝強占期の抗争史の記念碑的事件だ。
2022年から島を行き来し、争議の歴史的跡地や主要な登場人物を調べ尽くした画家は、展示で「岩泰島小作争議」を描いたさまざまな作品と共に、この争議の前兆となった歴史的事件の現場、事件の中の主要人物の内面を探って解釈した近作も展示した。岩泰島抗争を歴史的文脈から理解できるように、19世紀末の東学農民運動の農民軍と旧韓末(大韓帝国時代)の朝鮮の運命を決めた外勢の政治家たち、1919年の3・1独立運動の人々を描いた絵を共に配置した。
「芸術家は歴史をどのように記録するのか」という問いは、この展示を色づけるもう一つの話題だ。この問いに対して、韓国のどの作家よりも個性的な記録者の典型となった人物がソ・ヨンソンだ。彼は強烈な赤や青の色彩に単純で形骸化されたイメージで、歴史的人物の内面と彼らを取り巻く時空間を生々しく描いた。
岩泰島抗争の主導者であるソ・テソクを描写した一連の作品で、このようなソ・ヨンソンの歴史画の特長は最も克明に表出される。連行されたソ・テソクと彼を縛り上げた日帝警察の緊迫した顔、日帝の拷問で精神疾患を患い、押海島(アプテド)で稲穂をつかんだまま死んだソ・テソクの最期などを描いた絵から、当時を生きた人々の虚しい内面が寒々と胸に迫ってくるように感じられる。展示は5月5日まで。