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秋のスクリーンを飾る2本の「慰安婦」映画

登録:2017-09-08 04:40 修正:2017-09-10 08:06
昨年358万人以上を集めた『鬼郷』の続編が14日に封切り 
笑い+涙の映画『I CAN SPEAK』も公開 
『鬼郷』は正攻法、『I CAN SPEAK』は迂回的アプローチ 
関釜裁判の実話を基にしたキム・ヒエ主演の『HERSTORY』も制作中 
評論家「慰安婦合意に怒り…『鬼郷』の成功も影響」
映画『鬼郷、まだ終わらない物語』コネクト・ピクチャーズ提供//ハンギョレ新聞社

 『低い声-アジアで女性として生きるということ』(邦題:『ナヌムの家』)(1995)、『低い声2』(1997)、『息づかい-低い声3』(1999)、『オレの心は負けていない』(2007)『描きたいもの』(2013)、『最後の慰安婦』(2014)、『音叉』(2014)、『雪道』(2015)…。

 これまで作られた日本軍慰安婦被害者問題を取り上げた映画だ。映画界はこれまでドキュメンタリーと劇場映画を問わず、この問題を重要なテーマとしてきた。しかし、朴槿恵(パク・クネ)政権による屈辱的な「12・28合意」と絶え間なく続く日本の歴史否定からも分かるように、慰安婦問題は依然として現在進行形だ。今年だけで5人の慰安婦被害者が亡くなり、政府に登録された日本軍慰安婦被害者239人のうち生存者はもう35人に減った。このような状況に対する関心を促すように、今秋、日本軍慰安婦被害者問題を取り上げた映画2本が公開される。全く異なる手法の2本の映画が、終わらないハルモニ(おばあさん)たちの苦しみを癒し、日本の謝罪を求める韓国国民の心を一つにできるかに注目が集まっている。

■慰安婦問題を真正面から凝視した『鬼郷、まだ終わらない物語』

 昨年2月に封切られ358万以上の観客を集めた映画『鬼郷』の続編にあたる『鬼郷、まだ終わらない物語』が今月14日に公開される。タイトルからも分かるように、今回の作品は本編に盛り込まれなかった場面と「ナヌムの家」が提供した慰安婦被害者の証言映像を合わせて作った作品だ。約4時間ほどの分量だったが、封切り当時、ランニングタイムの制約(127分)により、編集せざるを得なかった場面を見ることができる。日本軍のために精神に異常をきたした少女ジヒを演じた俳優パク・ジヒ氏が、現在の視点で映画に使われた「アリラン」をレコーディングしていく過程が、ドキュメンタリー形式で交差編集されたことも目を引く。主人公ジョンミン(カン・ハナ)と同僚の慰安婦らの物語がさらに切実に感じられる。さらに、被害者ハルモニたちの悲痛な証言が、なぜこの問題に“時効”がないのかを思い知らせる。

 チョ・ジョンレ監督は「ホロコーストを取り上げた映画や芸術作品が1年に数十本以上地道に制作されているからこそ、全世界がドイツの蛮行を忘れず、ドイツも機会があるたびに謝罪している」としたうえで、「韓国でも慰安婦問題を取り上げた作品がより多くつくられることを望んでいる」と話した。本編を10カ国61の都市で巡回上映したチョ監督は、『鬼郷、まだ終わらない物語』もまた、全世界巡回上映を企画している。

■迂回的な視線で眺めた商業映画『I CAN SPEAK』

 『帰郷…』が慰安婦の凄絶な惨状をありのままに示すことに集中したなら、21日に封切られる『I CAN SPEAK』は商業映画の枠組みの中で慰安婦被害者の現実と苦しみを笑いと感動を適切に配合して表現している。あまりに壮絶で、時には目をそらしたくなる歴史の傷を、大衆の目線に合わせて「ヒューマン・ストーリー」に仕上げたことに大きな意味がある。

 『I CAN SPEAK』は、日本軍慰安婦被害者シナリオ公募展の当選作を映画化した作品で、日本に謝罪を要求する「米議会慰安婦謝罪決議案採択のための聴聞会」をモチーフにしている。

 毎日のように区役所を訪れ、あらゆる苦情を申し立てるナ・オクブン(ナ・ムンヒ)が、頑固な原則主義者である9級公務員のパク・ミンジェ(イ・ジェフン)に会い、彼から英語を習う物語だ。あまりにも違う2人が“英語”を通じて近づき、互いを理解していく過程を描いている。映画序盤には事ある毎に衝突するオクブンとミンジェ、そして2人を取り巻く市場と区役所の人たちが織り成すエピソードが爆笑を誘う。しかし、中盤以降、オクブンが英語を習おうとする理由が明らかになってから、映画は観客の涙腺を刺激する。

 特に日本に対する謝罪を求める最後のオクブンの“演説”場面は、日本の蛮行を暴露し、謝罪を求める“メッセージ”を感動的に伝える。この部分になって、観客は『I CAN SPEAK』の二重の意味に気づかされるが、これは残忍で刺激的な場面よりもはるかに深く観客の心に響き渡る。キム・ヒョンソク監督は『帰郷…』は正攻法で迫っているが、この映画は遠回しにアプローチしていく」とし、「コメディーとメッセージが水と油のようにならず、うまく合わさるようにするため、演出に力を入れた」と話した。

映画『I CAN SPEAK』ロッテシネマ提供//ハンギョレ新聞社

■これから継続される慰安婦の映画

 キム・ヘスク、キム・ヒエが主演し、ミン・ギュドン監督がメガホンを取った『HERSTORY』も最近制作に入った。日本政府を相手にした「関釜裁判」(釜山従軍慰安婦・女子勤労挺身隊公式謝罪等請求訴訟)の実話を基にした映画だ。1992年から1998年まで23回にわたって日本の下関を行き来しながら法廷闘争を繰り広げた慰安婦被害者の物語だ。キム・ヒエが原告団を率いる強靭な団長を、キム・ヘスクが勇気ある証言をした慰安婦生存者を演じる。ミン・ギュドン監督は「タイトルからも分かるように、男の立場から書かれた歴史的記録を意味する“HISTOR”ではなく、女性たちが自分の声で直接書いていく“HERSTORY”を通じて、集団の苦しみに還元できない個別女性たち苦しみを描きたい」と明らかにした。

 このほか、映画『軍艦島』の製作会社「外柔内剛」も、慰安婦を素材にした映画『還郷』を企画している。ソン・ヘギョとコ・ヒョンジョンが出演オファーを受けた事実が知られ、話題になっている。

 評論家のチョン・ジウク氏は最近、慰安婦問題を取り上げた映画の制作が増えていることについて、「朴槿恵政権の12・28合意に対する国民的公憤が慰安婦問題への関心を高めており、昨年『鬼郷』の成功で、映画界もやや重いテーマである慰安婦被害者の話を素材にした映画でも十分に観客の共感を得られるという自信を持てるようになった」と分析した。

ユ・ソンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/810015.html 韓国語原文入力:2017-09-07 21:40
訳H.J(2878字)

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