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[書評]ハンギョレはいかにして「国政壟断」の尻尾を掴んだのか

登録:2017-04-28 04:32 修正:2017-04-28 07:24
チェ・スンシルゲートのスクープ顛末記  
「なぜ?」という問いかけから始まる  
地下鉄の乗客も“取材協力”
『チェ・スンシルゲート-記者たち、大統領を引きずり下ろす』ハンギョレ特別取材班著/トルベゲ・1万5000ウォン//ハンギョレ新聞社

 朴槿惠(パク・クネ)-チェ・スンシル国政壟断を粘り強く追跡・暴露し、大統領を罷免に至らせたハンギョレ特別取材チームの体当たりのスクープ秘話。

 取材チームは2016年9月2日から2017年1月6日まで、127日間にわたり100人以上を取材し、様々な文書を集めて分析した。その結果、朴槿恵とチェ・スンシルが共謀して弱点をつかまれた大企業から数百億ウォンをゆすり取り、ブラックリストを作って文化界を圧迫し、気に入らない公務員を追い出すなど、不正を犯した事実を突き止めた。

 スクープは、「なぜ」という問いかけと豊富な経験、粘り強い追跡、またチームワークによって成し遂げられるものであることが、この本でわかる。

 2016年8月18日、大統領府は禹柄宇(ウ・ビョンウ)大統領府民政首席に対する捜査を依頼したイ・ソクス特別監察官と「朝鮮日報」の電話インタビューを問題視し、「国家紀律を揺さぶる行為」だと規定した。民政首席秘書官一人をかばうために、チェ・ドンウク検察総長の婚外子の報道で政権初期に不正選挙をめぐる議論を鎮静化した「朝鮮日報」に、全面戦争を宣布するなんて…。なぜだ?好奇心に駆られた「古株記者」のキム・ウィギョムは、あちこち電話をかけた結果、大統領府が「ミル・Kスポーツ財団」と「ミセスチェ(チェ・スンシル)」を守るため、「過剰反応」していることを感知した。長年の取材経験から「大物」であることを直感した彼は会社に掛け合い、カン・ヒチョル、リュ・イグン、ソン・ホジン、ハ・オヨン、パン・ジュンホなどで特別取材チームを作った。

2016年9月20日付のハンギョレ紙面//ハンギョレ新聞社

 取材チームは9月20日、「財閥から資金288億(約28億3千万円)を集めたKスポーツ財団、理事長はチェ・スンシルが常連のマッサージ院長」という記事を始めて掲載した。ここでも疑問符がつきまとった。特別でもないスポーツマッサージセンターの代表が数百億ウォンを牛耳るスポーツ財団代表を務めるなんて…なぜ?この記事で「チェ・スンシル」という人物が姿を現した。1カ月以上も続いた「ミル・Kスポーツ財団疑惑」記事は、情報のかけらを集め、パズルのようにつなぎ合わせる辛い作業だった。「チェ・スンシル、Kスポーツ財団の主要事業直接報告を受けた」事実を暴いた10月24日からは、「チェ・スンシル国政壟断」「チェ・スンシルゲート」へと広がった。2週後の11月8日、「朴大統領、捜査を控えた辛東彬(<シン・ドンビン>重光昭夫)会長と単独面談し、財団への支援を要求」との記事が出てからは「朴槿恵-チェ・スンシルゲート」に、事件の性格が急激に変わった。

 セウォル号惨事当日、朴槿恵大統領がアップヘアを完成するのに90分を無駄にしたという記事は、“粘り”続けた末、ついに手にしたスクープだ。大統領府を出入りする人が院長を務める美容室で、目の上のたんこぶ扱いをされながら、5日間も通い続け、(アップに)かかった時間が90分なのかと問い続けた結果、院長から「いいえ」ではなく、「正確に答えられなくて申し訳ありません」という答えを引き出したのだ。不正の頂点には朴槿恵大統領がいることを教えてくれたイ・ソンハン前ミル財団事務総長やチョン・ヒョンシク前Kスポーツ財団事務総長とのインタビューは、長い時間をかけて接触し、信頼を積み上げてきた結果だ。大統領府による大韓航空の人事介入や文化界のブラックリスト通達、文化体育観光部の幹部ノ・テガン、チン・ジェス氏の追放などは、特別取材チームではなく、同僚記者たちの人脈と協力が大きな役割を果たした。

「朴槿惠-チェ・スンシル国政壟断」を粘り強く追跡・暴露し、大統領を罷免に至らせた特別取材チーム。左側から時計回りに、キム・ウィギョム、ハ・オヨン、パン・ジュンホ、リュ・イグン記者=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 弾劾事態が有力メディアと政府の思惑通りに進まなかった状況も確認できる。チョン・ユラ(チェ・スンシルの娘)の大学入試や学事における不正は、財団をめぐる疑惑報道の過程で「一呼吸置いた」報道だった。しかし、この記事は他のメディアの関心を集めると共に、教育問題に敏感な保護者らの憤りを呼び起こし、ゲートを全国民の関心事に浮上させた。当時与党のセヌリ党(現在自由韓国党)のイ・ジョンヒョン代表が、ハンガーストライキと共に国政監査を拒否することで朴大統領の庇護に乗り出し、朴槿恵大統領が改憲論を持ち出して流れを変えようとしたが、思い通りにはならなかった。

 取材過程で目撃した世相も目を引く。自ら嘘をつきながらマスコミを非難する教授、チョン・ユラの行方を教えながら面白そうに笑っていたドイツ人、単独で情報を提供すると言って、マスコミ各社に連絡した情報提供者…。最も印象的な場面は、地下鉄の騒音に声が大きくなった電話取材の間、息をひそめ、降りる時に「お疲れ様です」と労いの言葉をかけてきた乗客たちだ。

 恥ずべき「チェ・スンシルゲート」を暴いた彼らの報道は、韓国マスコミの快挙と言われた。『チェ・スンシルゲート-記者たち、大統領を引きずり下ろす』はワシントンポスト記者たちの(ウォーターゲート事件を取り上げた)『大統領の陰謀-ニクソンを追い詰めた300日』を彷彿とさせる。スクープ記事が掲載された新聞紙面がそのまま載せられており、ジャーナリズム・スクールの教材としても使えそうだ。

イム・ジョンオプ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/792597.html 韓国語原文入力:2017-04-27 20:14
訳H.J(2532字)

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