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韓米日首脳会談で「米国はすべてを、日本は多くを、韓国は安保リスクのみ手に入れた」

登録:2023-08-25 07:04 修正:2023-09-04 14:16
ムン・ジョンイン延世大学名誉教授緊急インタビュー
ハンギョレ統一文化財団のムン・ジョンイン理事長が22日午後、ソウル鍾路区の「グローバルアジア」編集室で、ハンギョレと韓米日首脳会議に関するインタビューに答えている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 国際政治学者のムン・ジョンイン延世大学名誉教授(72)は、キャンプデービッドで開かれた韓米日首脳会談について「過去志向的」と評した。冷戦時代への回帰を強く印象付けるということだ。

 ムン教授は22日夕方、ソウル鍾路区の「グローバルアジア」編集室で、ハンギョレと1時間30分間にわたり行ったインタビューで、「韓米日の損益計算書は著しく非対称的」だと指摘した。ムン教授は「米国は『70年来の夢』を叶えたといわれるほど、望んできたものをすべて手に入れた。日本も失ったものはなく、手に入れたものの方が多い」とし、「一方、韓国は失ったものは多いが、手に入れたものがあまりないうえ、安全保障においてかなりのリスクを抱えることになった」と分析した。ムン教授は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が保守支持層の好む外交成果を一日も早く出さなければならないという焦りに囚われていたようだ」と指摘した。

-3カ国首脳は「韓米日関係の新たな章が始まった」と宣言し、大統領室はキャンプデービッド前と後は全く別の世界が開かれたと評した。今回の会議の歴史的意味をどうみるか。

 「韓米日3カ国首脳会談の定例化を含め、包括的安全保障協力の制度化という点で象徴的な意味は大きい。しかし、地政学的・地経学的な構図を変えるほどのイベントではない。まず3カ国は同盟ではなく、協議体を成しているだけだ。会談の公式文書の一つである『協議に関するコミットメント』に域内の脅威に対する共同行動と関連して国内法・国際法上の義務がないと明らかにしたではないか。

 何より過去に回帰するような内容だ。米国のバラク・オバマ政権で働いた国防専門家のベン・ジャクソン氏は、今回の首脳会談を『反動的3カ国協力体(reactionary trilateralism)』と呼んだ。ジョン・フォスター・ダレス元米国務長官が1954~57年、日本、韓国、中華民国(現台湾)を米国と束ね、欧州の北大西洋条約機構(NATO)のような反共集団安全保障体制である『北東アジア条約機構(NEATO)』の構成を提案したが、結局失敗した。日本と協力できないという李承晩(イ・スンマン)政権の反対と日本の平和憲法のためだった。今回の3カ国安全保障協力体はNEATOを連想させるという点で、ベン・ジャクソン氏の『反動的』という表現は大げさではないと思う。ある意味、韓日を一つにまとめようとする米国外交の70年来の悲願が実現したと言えるが、排他的なクラブの性格を帯びたこのようなミニラテラリズム(minilateralism)的なアプローチは国際政治において望ましいとは言えない」

-韓米日の損益計算書はどうか。

 「韓米日いずれも『ウィン-ウィン』という評価もあるが、もう一度考えてみる必要がある。米国が最も多くを手に入れており、日本も失ったものはなく、多くのものを手に入れた。一方、韓国は失ったものは多いが、手に入れたものはあまりないうえ、安全保障において相当のリスクを抱えることになった。韓米日の損益計算書は著しく非対称だ」

-米国から詳しくみてみると?

 「米国は望んでいたものをすべて手に入れた。第一に、米国の大戦略であるインド太平洋戦略で『弱い連携の輪』が韓日関係だったが、今回韓米日三角協力の制度化によって解消された。第二に、インド太平洋戦略において東南アジア諸国連合(ASEAN)を取り込むのは悩みの種だった。中国が優位を占めてきたからだ。ところが、今回ASEANを取り込むのに韓国と日本が積極的に乗り出して米国を支援することにした。第三に、『米国外交の70年の夢』である韓米日三角協力の実現は、来年の大統領選挙を控えたジョー・バイデン大統領にとって大きな政治的好材料だ。バイデン大統領は歴代大統領がやり遂げられなかった『韓日を和解させた有能で強力なリーダーシップ』という評判を手に入れたわけだ。第四に、歴代韓国政府は金大中(キム・デジュン)政権時代から保守と革新を問わず米国のミサイル防衛(MD)体制への参加要求を拒否してきた。実益があまりなく、北朝鮮と中国を刺激しかねないという理由からだ。ところが、尹大統領は今回、米日が望むミサイル防衛協力への積極的な参加を決めた」

-日本の損益は?

 「日本は何も失わず、多くを手に入れたといえる。第一に、『ミサイル警戒情報のリアルタイムでの共有」の合意は日本にとって大きな成果だ。北朝鮮や中国がミサイルを発射すれば、真っ先に探知できる国が韓国だ。だからこそ、日本は韓国との情報共有を執拗に求めてきた。第二に、日本は韓国という緩衝地帯を確保した。韓国のない新冷戦では日本が最前線だが、韓国が参加すれば韓国が最前線になる。第三に、南シナ海・台湾・海路安全問題で、日本は韓国から軍事的支援を得られる可能性が高まった。第四に、尹大統領は岸田文雄首相に対して韓日関係のセンシティブな懸案である独島(トクト)、東海(トンヘ)の表記、強制動員、福島原発汚染水の海洋放出などについて問題提起をしなかった。低い支持率に苦しむ岸田首相にとって国内政治的に大いに役立つだろう。『損はなく得ばかり』と主張できるからだ』

-韓国の損益は?

 「韓国は保守側と革新側の評価が完全に分かれている。保守側では『大成功」、『尹錫悦外交の頂点』と絶賛されているが、革新と中道側では反対と懸念の声が高まっている。世論の二極化がさらに進んだ。大きな損失だ。実際、今回の会議は韓国の安全保障において法的拘束力のある最も重要な制度は結局、韓米相互防衛条約だという点を再確認させた。域内の脅威に対応する共同行動に国内法・国際法上の義務がないと明記した『協議に関するコミットメント』は三角安保協力の基本的限界を示している。『巻き込まれる危険性』を避けるため、この条項を主導的に入れたと韓国政府が主張しているが、釈然としない。

 尹錫悦政権にとっては、北朝鮮政策の核心目標に掲げてきた北朝鮮の非核化▽拉致被害者、抑留者。未送還国軍捕虜問題の解決▽大胆な構想の目標への支持▽自由・平和の統一朝鮮半島への支持などを『キャンプデービッドの精神』に明示したことが成果と言えるだろう。しかし、ホワイトハウスが首脳会談の成果を米国民に知らせる目的で要約して公開した『ファクトシート』(factsheet)には、北朝鮮関連の内容がすべて抜けている。(その意味を)じっくり考えてみる必要がある」

-朝中ロはどのような反応を示すと思うか。

 「朝中ロ3カ国とも各々の理由で韓米日が『敵対の意志』を以前より強く表わしたと受け止めるだろう。まず中国は南シナ海・台湾問題を『キャンプデービッドの精神』で明示し、『力による現状変更に反対』を明らかにしたことが自国の核心利益に触れたとみて、敏感に反応するだろう。韓米日3カ国がミサイル警戒情報の共有、年次海上共同訓練などを行うことにしたのも、中国を狙った米国中心の域内ミサイル防衛(TMD)システムの具体化の試みとして受け止めるだろう。韓米日の『サプライチェーンの早期警戒システム』構築の合意も中国をターゲットにしたものと見なすだろう」

-北朝鮮はどうか。

 「バイデン政権が『朝鮮半島の非核化』という方針を『北朝鮮の非核化』に変更し、北朝鮮の人権問題を集中的に浮き彫りにしたことから、『敵対の深化』を感じ取ることができる。しかし、韓米日の結束の強化は逆説的に北朝鮮にとってチャンスかもしれない。朝中ロ連帯の必要性を刺激し、北朝鮮が長い孤立から抜け出す決定的な契機を作る可能性もあるからだ。朝中、朝ロ協力の強化傾向に注目しなければならない」

-ロシアはどうか。

 「韓米日首脳がウクライナの侵攻を強く批判し、『団結したウクライナ支援』を強調したのだから、当然ロシアにとっては『敵対的イベント』だっただろう」

-今回の首脳会談に対する反作用として、朝中ロの連帯の動きが可視化するとみるか。

 「連帯する可能性が高い。韓米日の軍事的密着が加速すれば、朝中ロが前例のない3カ国共同軍事訓練で対抗する危険な状況も排除できない」

-尹大統領は21日の国務会議で、「どうして安全保障が危険になるというのか」と述べ、専門家の懸念を非難したが。

 「理解し難い論理と認識だ。安全保障には『まさか』がない。壊れ物を扱うように細心の注意を払わなければならない。戦争という最悪の状況を絶対避けなければならないからだ。尹大統領は『力による平和』だけを呪文のように唱えているが、米国がアフガニスタンとイラクから撤退せざるを得なかった理由が、果たして力がなかったからだろうか。韓米同盟の強力な抑止力のため、朝鮮半島では計画による戦争勃発の可能性は低い。問題は偶発的な衝突と拡大だ。大統領は市民の生命と安全をすべての政策の中心に置かなければならない。だからこそ、たとえ勝てるとしても、戦争は必ず回避し予防する外交を積極的に展開しなければならない。平和と安全保障においては慎重さと謙遜が最大の美徳だ」

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1105560.html韓国語原文入力:2023-08-24 13:42
訳H.J

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