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「3カ国協力で強くなる」…尹大統領には見えない「安保リスク」

登録:2023-08-22 06:36 修正:2023-08-22 07:40
歴史的脈絡を無視した米国の「日本への肩入れ」で 
過去の歴史・独島問題において守勢に追い込まれる可能性も 
台湾海峡・南シナ海めぐる軋轢に巻き込まれる恐れも
尹錫悦大統領が21日、乙支国務会議を開く前に国旗に礼をしている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が21日、「韓米日3カ国協力の結晶体は北朝鮮による挑発のリスクを減らし、韓国の安全保障をより一層堅固にする」と述べ、韓米日首脳会談の成果を強調した。尹大統領は安全保障だけでなくサイバーや経済、先端技術など包括的協力体を目指すとし、「韓国国民にとってリスクは確実に減り、チャンスは確実に増えるだろう」と述べた。このような発言は韓米日が事実上の軍事同盟レベルの協力に合意したことにより、韓国が「反中戦線」の前列に立たされ、台湾海峡など周辺地域の紛争に巻き込まれる危険性が高まるなど、安全保障リスクがむしろ増大したという指摘を無視したものだ。

 尹大統領はこの日生中継された国務会議の冒頭発言で、「キャンプデービッドで開かれた3カ国首脳会談を機に韓米日協力の新たな時代が開かれた。北朝鮮の挑発による脅威が高まれば高まるほど、3カ国安全保障協力の結晶体の構造はさらに堅固になるだろう」とし、このように語った。

 尹大統領は安全保障分野と関連し、北朝鮮のミサイル情報に関する早期警戒システムの構築▽3カ国共同軍事訓練の定期的な実施▽北朝鮮の不正なサイバー活動の監視・遮断などを成果として挙げ、「韓米日協力体はオーカス(AUKUS:米英豪)、クアッド(QUAD:米日豪印)などと共に域内外の平和と繁栄を増進する強力な協力体として機能しながら拡大発展していく」と述べた。

 尹大統領は会議最後の発言でも「『安全保障が危険にさらされている』との主張があるというが、3カ国協力を通じて韓国が強くなれば外部から攻撃を受けるリスクが減るのに、どのように安全保障が危険になるというのか」と問い返したと、イ・ドウン報道官が伝えた。

 また尹大統領は「韓国国民が肌で感じられる3カ国協力の恩恵と利益もさらに増大するだろう」とし、半導体、電気自動車(EV)、バッテリーなどサプライチェーン早期警戒システムを通じた企業の不確実性の減少▽人工知能(AI)や量子コンピューターなど新興技術の確保競争における有利な位置の先取り▽金融市場の安定と回復力の増進などを期待できる効果に挙げた。

 しかし尹大統領は、韓米日の準同盟レベルの密着が国益に及ぼす悪影響や懸念には触れなかった。共同声明で「中国」を危険で攻撃的な行動の主体として指摘するなど、韓米日協力体は中国をけん制し包囲する性格が強い。これは韓国にとっては少なからぬ負担だ。中国は北朝鮮の核・ミサイル問題で国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の履行と仲裁に重要な役割を果たしている。経済面でも最近、韓国の対中輸出依存度が減っているものの、今年7月まで比重が19.6%であるほど依然として影響力が大きい。世界の覇権をめぐり中国封鎖に「全賭け」する米国の国益や、尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐり中国との間に領有権紛争がありアジアの主導権争いをしている日本の国益は、韓国の国益とは異なる。

 北韓大学院大学のキム・ドンヨプ教授は、「米国と日本まで介入させて北朝鮮を圧迫するなら、北朝鮮はむしろさらに強く反発し、韓国が危険に陥りかねない」とし、「にもかかわらず、3カ国協力が朝鮮半島の安全保障に関するリスクを減らすというのは根拠のない話だ」と指摘した。国民大学中国学部のユン・ギョンウ教授も「3カ国安全保障協力の際、日本は軍事的役割を拡大し、安全保障上の利益を得ることができる。しかし、韓国は北朝鮮を刺激する可能性が高くなる」と述べた。ユン教授は「経済的にも韓国は中国と協力する部分は依然として多いが、中国から遠ざかり米日関係に重点を置くのは経済多角化の側面においても望ましくない」と語った。

 また地域内の挑戦、挑発、脅威に対し3カ国が迅速に協議するようにした「協議に関するコミットメント」により、韓国が台湾海峡をめぐる軋轢や南シナ海の領有権争いなどに巻き込まれる可能性もある。

 韓米同盟よりも強い日米同盟の力に振り回され、国内で対立が生じる可能性もある。米国は韓日が対立する事案について、歴史的脈絡を無視し日本に肩入れする態度を示してきた。今年1月、ジョー・バイデン米大統領は岸田文雄首相と会談し、敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有し、防衛費を2倍以上引き上げる日本の計画を「歓迎する」と述べた。日本の再武装を懸念する韓国の国民感情とは程遠いものだ。独島(トクト)の領有権問題や歴史問題が浮上した場合、「3カ国協力」を理由に韓国が守勢に追い込まれる可能性も排除できない。

 世宗研究所のチョン・ジェフン中国センター長は「安全保障協力は米国と日本主導で行われるだろう」とし、「朝鮮半島周辺の秩序も韓国の望む方向で進められるかは疑問」だと指摘した。

ペ・ジヒョン、チャン・イェジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1105212.html韓国語原文入力: 2023-08-22 02:43
訳H.J

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