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米国に盗聴されても低姿勢…抗議もしない韓国大統領室

登録:2023-04-11 02:03 修正:2023-04-11 08:15
大統領室を象徴する旗=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 米中央情報局(CIA)による国家安保室の盗聴・通信傍受の事実が明らかになった中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と大統領室は10日、米国政府に抗議したり謝罪を求めたりすることはなかった。代わりに大統領室は盗聴・傍受内容がねつ造された可能性に言及し「事実関係の把握が最優先」だとして波紋の縮小に努めた。米国に向けた大統領室の低姿勢に、野党はもちろん与党からも批判の声があがっている。

 尹錫悦大統領は同日、首席秘書官会議とハン・ドクス首相との週例会合という公式発言の機会があったが、発言は労使法治の確立と半導体産業の競争力を強調するのにとどまった。

 大統領室は盗聴内容の真偽把握が優先だと述べた。大統領室の主要関係者は同日、記者団に対し、「米国メディアで報道された内容は確定した事実ではない。米国防総省も法務省に調査を要請しただけに、事実関係の把握が最優先だ」と述べた。大統領室は内容がねつ捏造された可能性も提起した。同関係者は「米国から流出したと主張する資料の大半がロシアとウクライナの戦争に関する内容だ。米国では流出された資料の一部が修正されたりねつ造された可能性も取りざたされている」とし、「特定勢力の意図が介入した可能性を排除できない」と語った。それと共に「韓米首脳会談を控えた時点で今回の事件を誇張したり歪曲して同盟を揺さぶろうとする勢力があれば、多くの国民から抵抗を受けることになるだろう」と批判の声をけん制した。

 特に、大統領室は米国に対する適切な措置の要求は「必要な場合」という条件付きで後回しにした。同関係者は「両国の状況把握が終われば、必要な場合、米国側に適切な措置を求める計画」だと明らかにした。

 大統領室の極めて慎重な低姿勢は、半月後に迫った尹大統領の米国国賓訪問と26日の韓米首脳会談と関係があるものとみられる。訪米を通じて韓米同盟の強化という外交・安保の成果を浮き彫りにしたい大統領室は、盗聴問題の波紋を最小限にとどめることに力を入れている。尹大統領は就任後、韓米日3カ国協力を土台にした米国の中国けん制戦略に積極的に参加した。日本政府の謝罪や戦犯加害企業の参加のない「第三者弁済案」を推し進めた背景も、韓米安保の強化だった。大統領室高官は本紙との電話インタビューで、「韓米関係を損ねる内容ではない。韓米関係は非常に堅固だ」としたうえで、「米国側が両国の信頼関係を再確認する措置を取ることになるだろう」と述べた。

 尹錫悦政権の態度は、過去に米国に盗聴被害を受けた他国と全く異なるものだ。ドイツやフランス、ブラジルなどは、2013年10月に米国家安全保障局(NSA)の盗聴行為が暴露された後「容認できない行為」だとして強く抗議した。特にアンゲラ・メルケル当時ドイツ首相は、2013年にベルギーで開かれた欧州連合(EU)首脳会議で「友人の間で盗聴はありえないこと」だと公の場で抗議した。

 大統領室の態度をめぐり、野党はもちろん与党からも批判の声があがっている。野党「共に民主党」のパク・ホングン代表は「直ちに米国政府にこれらの報道の真偽と機密文書に対する明確な情報を要求すべき」だと述べた。正義党のイ・ジョンミ代表も「米国の顔色をうかがっている様子だ。直ちに米国政府に対して事実の究明と謝罪、再発防止を要求しなければならない」と述べた。

 与党「国民の力」からも「情けなく、卑屈極まりない」(9日、ユ・スンミン前議員)、「米国政府に強く抗議し、謝罪も要求しなければならない」(ハ・テギョン議員)という声があがった。一方、大統領室はキム・テヒョ国家安保室第1次長が韓米首脳会談の準備のため「11日から15日まで訪米する予定」だと発表した。

ペ・ジヒョン、オム・ジウォン、ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1087282.html韓国語原文入力:2023-04-10 22:22
訳H.J

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