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[社説]「盗聴」で主権侵害されても米国の顔色うかがう韓国大統領室

登録:2023-04-11 02:32 修正:2023-04-11 07:52
米国の情報機関が韓国国家安保室を盗聴・通信傍受していたことが米国防総省の機密文書の流出で明らかになった。写真は米国防総省庁舎=ワシントン/ロイター・聯合ニュース

 米国の情報機関が韓国の国家安保室を盗聴していることが明らかになった。国家安保の中枢に穴が開いたという深刻な状況であるため、非常に当惑する。しかし、さらに当惑するのは大統領室の反応だ。米国には真相究明と再発防止を一言も要求していない。今月末の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の米国国賓訪問を前に、米国の顔色をうかがいつつ波紋を最小限に抑えることばかりにとらわれている。

 SNSに流出した100件あまりの米国防総省の機密文書の一部には、ウクライナに砲弾を提供するよう米国に要求され、韓国国家安保室が応じるかどうかについて苦悩する議論の内容がありのままに記されている。先日辞任したキム・ソンハン前国家安保室長とイ・ムンヒ前外交秘書官の3月初めの対話内容は、横から盗み聞きしたような生々しさだ。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの米メディアは、この情報の出所は「SIGINT(シギント、信号情報収集)」だと報じた。シギントは電子装置を用いて取得した情報で、米国の情報機関が韓国国家安保の中枢を担う当局者の対話を盗聴・傍受していることを示唆するものだ。韓米同盟の信頼を揺るがすものであり、主権侵害の素地が大きい。

 先週末からの米メディアの報道によって国際的に波紋が広がっているにもかかわらず、大統領室は「韓米同盟を揺るがすほどの事案ではない」と先手を打って米国の過ちをかばうことに注力している。韓国の立場からは当然あってしかるべき、米国に対する真相究明、再発防止要求をはじめとする公式の立場は一言も発せられていない。与野党いずれからも大統領室の低姿勢外交に対する批判の声があがっていることに対し、大統領室の関係者は10日、くだんの文書の信ぴょう性をまず検討すべきとして「資料ねつ造説」を提起した。「(韓米)両国の状況把握が終われば、我々は必要であれば米国側に適切な措置を要請する計画」だとの立場を渋々示しつつも、「韓米首脳会談を控えている今、今回の事件を誇張したり歪曲したりして同盟関係を揺さぶろうとする勢力があれば、多くの国民に抵抗されるだろう」と、とんちんかんにも国内の批判に矛先を向けた。いくら米国が韓国の安保に絶対的な影響力を持っていると言えども、理解しがたい態度だ。

 2013年10月に米国家安全保障局(NSA)による盗聴が暴露された際、ドイツ、フランス、ブラジルなどは大統領や首相が自ら「容認しえない行為」だとして強く抗議しており、米国は同盟国の通信は傍受しないとする内容を公に約束しなければならなかった。同盟国同士でも主権を傷つける行為には断固として対応してこそ、同盟の信頼を維持し、国益を守ことができるということを示したのだ。

 大統領室は、今回の事態が尹錫悦大統領の国賓訪問に飛び火するのではないかと戦々恐々としており、自ら韓国の外交原則を傷つけている。半導体、バッテリーなどの主要産業で米国が自国優先主義を前面に押し出し、北朝鮮の核・ミサイル問題が日増しに悪化している中、尹錫悦政権が何よりも先に米国の立場をかばう態度はなおさら懸念される。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1087289.html韓国語原文入力:2023-04-10 18:26
訳D.K

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