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北朝鮮の食糧事情めぐり「餓死続出」主張する韓国大統領室と統一部が不協和音

登録:2023-02-22 06:17 修正:2023-02-22 07:16
北朝鮮の農業生産督励宣伝画/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮の食糧事情と関連して、主務省庁である統一部と大統領室が異なる見解を示し、混乱を招いた。統一部は当初「餓死者が続出する状況ではない」と国会に報告したが、数日後に大統領室が「餓死者が続出する状況」だと発表したことを受け、大統領室の見解に合わせて前言を撤回した。

 大統領室は18日、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型発射直後、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開いた後、「出席者たちは北朝鮮内の深刻な食糧難で餓死者が続出する状況で、北朝鮮政権が住民の人権と暮らしの問題から目を背け、大規模な軍事パレードと核・ミサイル開発だけにこだわっていることを嘆いた」と伝えた。北朝鮮で飢え死にする人が相次いで発生しているという尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権初の公式発表だった。

 しかし、大統領室の発表は、3日前の主務省庁である統一部の発表と相反するものだ。クォン・ヨンセ統一部長官は15日、国会外交統一委員会に出席し、「北朝鮮の最近の食糧事情は良くないようだ」としつつも、「餓死者が続出するほどではないとみられる」と述べた。16日にも統一部当局者は「年明で昨年生産された穀物が底をつく時期ではないため、絶対量の問題というよりは『分配の問題』が発生した状況だとみられる」と語った。昨年10月に北朝鮮が施行した新しい糧穀政策とともに、個人の穀物取引に対する当局の取り締まりと統制の強化により、一部地域で流通に問題が生じた可能性があるという見解を示したのだ。

 政府(農村振興庁)の昨年の北朝鮮穀物生産量関連の公式推定値は451万トン。これは2012~2021年の10年間の穀物生産量の平均値(465万5千トン)の97%水準だ。同期間の食糧所要量の平均値は585万2000トン。つまり北朝鮮は毎年120万トン前後の食糧が不足しているわけだが、劇的な生産量の減少はなかった。

 ところが、統一部は大統領室の発表の翌日、これまでの見解を覆した。統一部は19日、「キム・ヨジョン(朝鮮労働党中央委副部長)の談話に関する統一部の立場」で、「最近餓死者が続出するなど深刻な食糧難に見舞われている」とし、大統領室の発表に沿った見解を示した。統一部当局者は21日、「統一部の発表とNSCの間で相反する意見が出た理由は何か」という記者団の質問に対し、「(クォン・ヨンセ統一部長官が)大量の餓死者が出る状況ではないと思うと発言したのは、(北朝鮮の食糧難が)過去の苦難の行軍のレベルではないという意味」だとし、餓死者の続出やこれを把握した時点は「最近」だと述べた。元政府高官は「大統領室の対北朝鮮強硬派が安全保障危機の責任を北朝鮮に転嫁するために、北朝鮮の慢性的食糧難を誇張・悪用しているようだ」と指摘した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1080655.html韓国語原文入力:2023-02-22 02:43
訳H.J

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