「韓国の学生たちは北朝鮮の人々を本当に頭から角が生えた人たちだと思っているようです。韓国の学生たちが新聞で北朝鮮の学生が来たことを知り、私のところにこっそり来て彼らに話しかけてもいいかと聞いてきました。そして入学式が終わると、ある韓国の学生は北朝鮮の先生のところに行って、手をちょっと触ってみても構わないかと尋ねたのですよ。反共教育の跡がそれほど強いのです。北朝鮮の学生は私に言わなかったのでどう応じたのか分かりませんが、韓国の学生の反応を見てとても残念で悲しかったです」”
1月に金日成(キムイルソン)大学の学生12人が3週間、ベルリン自由大学の季節学期プログラム(夏休みや冬休みの間に行われる短期集中授業)に参加した。彼らは14カ国から来た学生たちと共に授業を聞いた。その中には韓国の学生80人余りもいた。このプログラムはドイツ紙のフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングが「驚くべきこと」と大きく取り上げたりもした。
今月7日、このプログラムを主導したベルリン自由大学韓国学科長のイ・ウンジョン教授(55)に会った。激務で疲れたのか声がかすれていたが、表情は明るかった。
「2011年に金日成大学から自由大学と交流協定(MOU)を締結しようという提案が入ってきました。それで私が2015年に両大学の協力を打診するために平壌(ピョンヤン)に行きました」。2015年までにドイツ連邦議会、大統領、外務省の全てが両大学の協力を支持したが、翌年の北朝鮮の第2次核実験により事情が変わったという。対北朝鮮制裁が強化され、両大学間の交流協定締結も持ち越された。
そして2年後に機会が来た。平昌(ピョンチャン)五輪を契機に両大学間の交流が再開されたのだ。イ教授はドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイアー大統領が平昌五輪開幕式への参加のために訪韓した際、特別随行員として同行した。当時、シュタインマイアー大統領はイ教授に「冷戦時代にも学術交流や大学間協力は進められた。いかなる状況でも政治的条件とは関係なく行わなければならないこと」だと語ったという。「その後、わが校の総長団からも『交流協力を推進しよう』との決定が出ました。そこで、その年の9月に私が平壌に交流協定書を持って行ったのです」。当時、韓国学科では北朝鮮にある書院の研究を進行していた。北朝鮮には栗谷(ユルゴク:朝鮮時代の代表的な儒学者の李珥の号)の書院である紹賢書院がある。「自由大学で進行する研究プロジェクト『エピステーメー、知識の変動』の中に韓国学研究所が主導するプロジェクト『書院研究』があります。北朝鮮で書院の見学もしました」。元々書院は両班(ヤンバン)の文化なので北朝鮮であまり研究されていなかったが、今では北朝鮮にも書院に関心がある学者がかなりいるという。
2年前に訪朝して金日成大学と交流協定
先月、北朝鮮の学生12人が3週間研修の成果
南の学生と一緒に自由大学の季節学期に
「北朝鮮の学生の招請研修の定例化を予定
大学は政治とは関係なしに北と交流せねば」
2008年の任用後、韓国学科の成長を導く
一昨年の訪朝の時、ちょうど金日成大学の独文学科の教授たちが「学生たちにドイツ現地語学研修をさせたい」と提案したという。「金日成大学独文学科にドイツ人教授がいないのです。2016年の北朝鮮核実験以後、ドイツが強力な対北朝鮮制裁を課してドイツ文化院も門を閉じました。4年前からドイツと北朝鮮の交流が全て中断された状態だったのです。ドイツ語教習の資料もなく、新たに出たドイツ文学作品も読むことができなかったとのことです」。イ教授は言葉を続けた。「金日成大学独文学科であれば外交官や専門通訳になる人々です。いい財源じゃないですか。ドイツ語学習が難しい状況は、結局ドイツ側から見れば損害ですよ」
彼女は今回のプログラムについて、ドイツ政府側の反応も良かったとし、金日成大学の学生の招請プログラムを定例化するつもりだと言った。南北関係情勢と関連なしに持続可能なプログラムを運営するということだ。「政治的変化とは関係なく交流の窓を開いておくことができる場所は大学しかないです。自由大学の元老教授たちがおっしゃるんです、自由大学がこの役割を果たさなければ誰がするのかと。ドイツで私を指導した教授たちは、冷戦を経験した方々です。この方々が心から熱烈に支援してくださっています。『誰が何と言っても揺らぐな、すべき仕事をすることだ』とおっしゃってくださいました」
ベルリン自由大学韓国学科は成長傾向だ。韓国学科が2018年に新たに置かれた建物は、自由大学の全学科が狙っていた建物だという。韓国学科がこの建物を獲得できたということは、韓国学科の地位を端的に示している。2008年にベルリン韓国学科教授に任用されたイ教授は、わずか12年で韓国学研究所と韓国学科をこれほどまでに育てた。
計画を聞いた。「韓国学科は今後、欧州の国際機構で重要な役割を果たせる韓国専門家を育てる役割を引き受けることになるでしょう。今までは学部の卒業生を輩出してきましたが、今後は彼らの中から選抜した学生をさらに訓練して、シンクタンクや国際機構に送る役割を果たそうとしています」。そして続けた。「自由大学で私が引き受けている韓国学研究所の役割についてずっと悩んできましたが、ベルリンという地域が朝鮮半島に関連してできることがあります。それで金日成大学との交流協定締結に積極的に力を尽くしたのです。やることはまだ多いです。石を一つずつ積み上げる過程です。まだ顕著な成果ははっきりとは見えませんが、これが私たちがする仕事なんだな、と思います」