過去数十年にわたり経済成長に没頭する間、社会経済政策の究極的目標に対する私たちの関心は薄れていった。みんなが国内総生産(GDP)と国民所得指標にばかり注目する間、私たちの暮らしはあまり好転しなかった。私たちに欠けている最も大きな空白であると同時に切なる願い、すなわち「幸せ」に関する話だ。
国連が今年初めに発表した「2016年世界幸福報告書」によると、韓国人の「生活満足度」(幸福指数)は平均5.8点(最低0点、最高10点)で、調査対象157カ国のうち58位である。経済協力開発機構(OECD)35カ国だけを見ると、最下位グループに属する(29位)。2015年の韓国の国内総生産規模(世界11位)と1人当たり国民所得(世界28位)を考えると、韓国人が「幸福なき低成長」に陥っていることが一目でわかる。
さらに、「国民幸福時代」を標榜した朴槿恵(パク・クネ)政権発足後、韓国の幸福指数の順位は上がるどころか、下がり続けている。国連世界幸福報告書に国家別順位が登場したのは2013年からだった。韓国は2013年、2014年に2年連続で41位だったが、2015年には47位、2016年には58位に落ちた。この3年間で17段階も順位が下がったのだ。国連は、客観的な主要経済・社会指標について国別に3千人余りの回答者に主観的な「生活の満足感」を聞いてつけた点数を合算して、世界幸福調査報告書を発表している。
幸せの欠乏だけではない。「幸せの不平等」の溝も深まっている。この報告書で韓国の回答者の幸福感における標準偏差は2.15点で、調査対象157カ国のうち96番目に高い。それぞれの回答が全体平均から離れている程度を示す標準偏差は、その値が大きいほど不平等の度合いが大きい。OECD加盟国内で見ると、韓国の標準偏差は平均値(1.86)よりはるかに大きく、幸せの不平等が5番目に深刻だ。
幸せの不平等の指標は所得不平等の指標より一般的に低い。これは幸せに関連した様々な実証研究で現れる一般的現象だ。所得が一定水準を超えれば、追加的な所得増加分の幸福感を高める効果は減るからだ。所得不平等指標(可処分所得のジニ係数2012年0.307)は、経済力がほぼ同等のOECD諸国に比べても、悪くないレベルだ。にもかかわらず、韓国では国民が感じる幸せの不平等が所得の不平等より大きいという「奇異な」現象が現れている。
なぜだろうか。もちろん、幸せの不平等には所得の不平等だけでなく、様々な要因が複合的に作用している。幸せに関する様々な国際調査は、韓国特有の2つの要因が作用していると指摘する。一つは「機会の不平等」だ。教育・雇用・企業など社会経済の多岐にわたって両極化が進み、一方の独り占めと他方の劣等感が幸せの不平等をもたらしているということだ。もう一つは「社会的関係の貧困」だ。OECDの「より良い人生の指標」(2015)によると、韓国は日常生活で人と深い信頼関係を結んで互いを支援する社会的関係が、35の加盟国のうち最も弱い。
11月23~24日に開かれる「2016アジア未来フォーラム」では、幸せの不平等を減らし、みんなが「共に幸せな」社会に移行するには、どのような政策方向と課題が必要かをめぐり、大討論が行われる。