米国が中国船舶を保有する海運会社に最大150万ドルの入港手数料を課す案を推進する。中国製の船舶は、米国の港に入るたびに莫大な金を払わなければならないという意味だ。世界1位の造船大国に浮上した中国を牽制し、米国の造船業を復活させるための措置だ。韓国の造船業界は反射利益が期待される。
ドナルド・トランプ米大統領は9日(現地時間)、「米国の海洋支配力復活」という名の大統領令に署名した。これに沿って関係機関は今後2~10日以内に具体的な計画を段階的に発表する予定だ。
核心の目的は大きく二つ。中国造船業の牽制と米国造船業の再建だ。トランプ大統領は米国通商代表部(USTR)に中国の海洋・物流・造船産業の不公正さを調査するよう命令した。また、手数料、罰金などの措置も指示した。
予告編はすでに2カ月前に出されていた。今年2月、USTRは米国の造船業救済策を発表した。これによると、中国国籍の海運会社は米国入港の度に船舶当たり最大100万ドル、または船舶貨物トン当たり最大1千ドルの手数料を払わなければならない。さらに、中国国籍ではない海運会社が中国製の船舶を保有するだけでも手数料賦課対象になる。一例として、中国製船舶と韓国製船舶を同時に保有している海運会社が、韓国製船舶を米国に入港させようとしても、手数料を取るという意味だ。ただし中国製船舶の保有している割合によって手数料には差等を設け、手数料賦課範囲を「中国製船舶入港」だけに限定する可能性もまだ残っている状態だ。さらに、USTRは手数料算定の際、中国製船舶の発注の割合も調べる計画だと言及した。
同日の大統領令には、具体的な入港手数料の金額は含まれなかった。USTRが近いうちに米国内の貿易団体の意見を取りまとめ、最終案を発表するものとみられる。
入港手数料が実行されれば、中国製船舶は米国に入る際に高い費用を払わなければならない。グローバル海運会社は、中国製船舶を保有することに負担が生じざるを得ない。造船・海運市場で中国を孤立させることが米国の狙いだ。韓国は反射利益を期待できる。グローバル海運会社が中国の代わりに韓国の造船会社に目を向けること期待されるためだ。昨年、全世界の造船累積受注シェアは中国(71%)に次いで韓国(17%)が2位だった。3位は日本(5%)で、米国のシェアは0.1%にとどまる。産業研究院のイ・ウンチャン研究委員はハンギョレに「海運会社は中国製船舶を保有したり中国に船舶を発注することに負担を感じるだろうから、これは世界の海運産業に大きな影響を及ぼす」とし「すでに韓国と日本の中古船の価格が高くなっている。韓国の造船業界には恩恵になるだろう」と述べた。
米国は自国の造船業の再建にも力を入れている。トランプ大統領は大統領令で造船業支援資金確保、同盟国の米国造船業投資インセンティブ支給などに言及した。トランプ大統領は「我々は造船に多くのお金を使うだろう」と強調している。
米国の造船業は2000年代以降、急速に衰退した。米国内の造船所は21カ所に過ぎず、年間船舶建造数は5隻未満だ。軍艦艇の数も219隻で、中国(234隻)に後れをとり、海洋安全保障まで脅かされている。米国が造船業復活に大きな予算を投入するだけに、韓国の造船会社の米国進出のチャンスも拡大するとみられる。すでに米国は関税交渉カードとして軍艦の維持・補修・整備(MRO)と新規軍艦の建造、液化天然ガス運搬船および砕氷船の建造などを挙げ、韓国に支援を要請した状態だ。米国が自国の造船業投資の際、インセンティブ支給も取り上げただけに、今後の補助金や税金優遇制度ができるかどうかにも関心が集まっている。