米国のドナルド・トランプ大統領が韓国などに課した相互関税の適用を90日間猶予することを発表したことで、政府と企業はひとまず一息ついたが、米中「貿易戦争」の本格化で深刻な流れ弾を浴びる可能性が懸念されている。
産業通商資源部のチョン・インギョ通商交渉本部長は、9日(現地時間)のワシントン特派員との懇談会で、相互関税の適用猶予について「米国側との関税交渉を続けることで韓国の業界に及ぼす影響をできる限り軽減する余地が確保されたという点で、肯定的に評価できる」と語った。
しかし1位と2位の輸出相手である米中の極端な貿易戦争が視界に入ってきたことで、輸出など、韓国経済に及ぼす影響が大きな課題として浮上している。両経済大国は昨年、韓国の6838億ドル(997兆ウォン)の総輸出額の38.1%(中国1330億ドル、米国1278億ドル)を占めている。
米中貿易戦争は、韓国にとっては対米輸出のプラス要因になりうる。高率の関税を課された中国製品と競争する韓国製品の競争力が高まり、反射利益が期待されるからだ。問題は、否定的な影響が非常に大きいことだ。韓国銀行は昨年の報告書で、トランプ氏が大統領選挙の公約どおりに中国に60%、その他の国々に10%の関税を課せば、韓国の対中輸出が6%減少する可能性があると予測している。このシナリオでは、韓国の国内総生産(GDP)も1%減少する可能性があると主張している。
また「第1次米中貿易戦争」の経験は「第2次米中貿易戦争」を見つめる目をより不安にさせる。トランプ大統領が第1次政権時代に繰り広げた「第1次戦争」がピークに達した2019年に、韓国の対中輸出は半導体、電子機器、鉄鋼、石油化学を中心に16%も減少した。当時、米国が課した関税率は最高で25%で、今回、米国(125%)と中国(84%)が相手に課した関税率より大幅に低い。
今回の対立が韓国経済に否定的な影響を及ぼす要因はいくつもある。韓国の対中輸出に中間財が占める割合は80%ほど。中国製品の米国輸出の道が閉ざされれば、韓国製の中間財の需要も減る構造だ。
中国企業に競争力で追いつかれ、中国の成長率の下落で構造的挑戦に直面している韓国企業としては、弱り目にたたり目だ。対米輸出の減少が中国の購買力を弱めれば、直ちに韓国の輸出にも否定的な影響が及ぶからだ。米国市場へのアクセスが難しくなった中国製品が低価格で世界市場にあふれ出るという風船効果も予想される。
iM証券のパク・サンヒョン研究委員は、「中国の対米輸出が閉ざされると、エマージングマーケット(新興市場)の方へと低価格輸出が増えうることも心配」だとし、「中国の立場からすると工場を稼動させ続けなければならないし、そうなると赤字覚悟で低価格攻勢を強める可能性がある」と語った。
1位と2位の経済大国の貿易戦争が交易量の縮小や金融市場の停滞などの世界経済全般の混乱へとつながると、被害はさらに大きくなる。中国以外の国々にとっては、相互関税は免除ではなく猶予されたものであり、10%の基本関税が及ぼす影響も無視できないという指摘もある。信栄証券リサーチセンター長のキム・ハッキュン氏は、「究極的に米国人の需要も非常に弱まる可能性がある」として、「リスクが非常に高い水準で保たれている」と語った。