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[社説]専攻医なしでは救急医療にも支障、韓国の医療現場の素顔

登録:2024-02-21 07:27 修正:2024-02-21 09:11
政府の医学部増員方針に反発して辞表を提出して勤務中断を宣言した専攻医の代表らが20日、ソウル龍山区の大韓医師協会会館で開かれた大韓専攻医協議会の緊急臨時代議員総会に参加している/聯合ニュース

 医学部増員政策に反対して辞表を提出した大型病院の専攻医(インターン・レジデント)らが20日に出勤せず、全国各地で診療に支障をきたしている。研修過程にある専攻医なしでは必須医療を担当する大型病院が正常に回らないということこそ、まさに奇形的な韓国の医療の現実の素顔だ。これは、政府が単に医師の数を増やすだけでなく、医療公共性の拡大政策を真摯に推進しなければならない理由でもある。

 政府が19日午後11時時点で全専攻医1万3000人中約95%が勤める研修病院100カ所を点検した結果、6415人(55%)が辞表を提出し、1630人が勤務地から離脱した。辞表を提出した専攻医のうち25%が病院を出たということだ。政府は勤務を中断したことが確認された831人に対して、業務開始命令を出した。集団行動開始の初日である20日は、手術の予定が延期され救急治療室の運営が制限されるなど、患者の被害事例が続出した。

 医師団体は、2000年の医薬分業事態以降、政府の政策に反対するたびに専攻医を前面に出して実力行使を繰り広げた。収益最大化を追求する病院が、低賃金で長時間勤務をさせることができる専攻医への依存度を過度に高めていたためだ。いわゆるビッグ5と呼ばれるソウルの上級総合病院の医師の30~40%が専攻医であるにもかかわらず、業務量をみると70%ほどを担当するという。このため、2020年の専攻医の集団休診の際にも、急病患者が必要な時に治療を受けられない非常状況が発生したことがある。医師の数を増やすことに対して医師が集団行動を行う国は韓国だけだが、特に救急治療室を空ける行為は、他国では想像もできないことだ。

 政府が非常診療対策を多数出しても、なかなか信頼できないのは、こうした構造的な問題から始まった面が大きい。政府は事態長期化に備え、公共病院と軍病院を総動員する方針だが、韓国の公共医療の割合は全体の10%にすぎない。救急・重症患者を中心に受け入れなければならない大型病院が利益を上げるために軽症患者まで受け入れる慣行を放置していたことも、政府の責任だ。医師不足のために非公式に働いていた診療支援(PA)看護師の問題を放置していた政府は、急を要するからと法的な保護対策なしでこれらの看護師を投入するとし、反発を買ったりもした。

 政府と医師団体の全面対立の局面では、その被害は患者に向かう。政府は、医学部増員政策を揺るぎなく推進すると同時に、よりきめ細やかな非常診療対策を立てなければならない。あわせて、医療公共性の拡大政策を並行しなければ、奇形的な現実を正すことはできない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1129144.html韓国語原文入力:2024-02-20 19:38
訳M.S

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