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中国の「40年成長」は本当に終わり? 大規模不動産会社が数十億円の利子を払えず

登録:2023-08-23 19:39 修正:2023-08-24 10:02
[チェ・ヒョンジュンのDB deep] 危機の根源となった不動産 
習近平国家主席の3大レッドラインと新型コロナ感染症で危機増幅
中国の習近平国家主席/ロイター・聯合ニュース

 2021年末、恒大集団(エバーグランデ)の債務不履行(デフォルト)で始まった中国の不動産危機が、碧桂園(カントリーガーデン)や遠洋集団(シノオーシャン)など別の超大型不動産業者の債務不履行に急速に広がっている。

 中国の住宅供給の約40%を担当する企業が数十億円の現金を用意できず資金危機に追い込まれ、中国の不動産危機が近いうちに爆発しかねないとの展望まで出ている。

 しかし、今回の危機が中国政府が推進した「デレバレッジング」(負債軽減)政策によって引き起こされたものであるだけに、中国政府が十分にコントロールできるとの主張も少なくない。

■ 不動産危機、金融に広がるか…中国版「リーマンショック」に神経を尖らす

 中国不動産危機は先月、不動産開発業者の大連万達集団(ワンダグループ)の系列会社がデフォルト危機に置かれ、2年ぶりに再び火がついた。ワンダグループは先月満期が到来した4億ドル規模の債務を、系列会社の持分を売却してようやく返済した。

 続いて総資産330兆ウォン(約35兆円)に達する超大型民間不動産業者の碧桂園が、今月初めに満期が到来した10億ドル規模の債券2種に対する利子2250万ドルを返済できなかった。また、国有不動産会社の遠洋集団は2094万ドルの債券の利子を支払えなかった。

 不動産業者の危機は金融分野に飛び火する勢いだ。顧客の資金を集めて不動産に投資する中融国際信託は、最近3500億元(約7兆円)規模の商品を返済できず対策に苦心している。

 恒大集団と共に不動産業界1位の座を争っていた民間業者(碧桂園)と国営不動産企業(遠洋集団)に続き、不動産金融業者(中融信託)まで資金難に陥るや、西欧メディアは不動産危機が金融危機に広がる中国発「リーマンショック」が発生しかねないと懸念している。

 数兆円~数十兆円の資産を運用していた会社が、わずか数十億円の利子を用意できなくなった理由は何か。

 中国の不動産市場が現在の危機事態に至ったのは、2020年の中国当局による相次ぐ不動産規制と、3年間続いた新型コロナ事態が決定的に作用した。

 2020年8月、中国政府は不動産企業の負債があまりにも多いとし、3大「レッドライン」を出した。不動産企業の▽資産・負債比率が70%を超えず▽純負債率が100%を超えず▽現金性資産が短期負債より多くなければならないというもの。自分の規模より大きい借金をして運営する不動産会社の資金源を確実に締め付ける措置だった。

 不動産市場正常化のために取った当局の措置は、その直前の2020年1月に始まったコロナ禍と相まって危機を増幅させた。新型コロナ封鎖による景気低迷で実需要が減り、不動産価格が下落し、売れ残り住宅が急増した。

 北京や上海など主な大都市の住宅価格が下落した。中国全体には売れ残りが続出し、これによって積み上がった不動産在庫が数百万~数千万戸に達すると推算された。過度な借金をして放漫経営をしていた不動産会社はたちまち資金難に陥った。

 昨年は資金難に見舞われた建設会社がまともに建築しないとして、住宅を分譲された住民たちが住宅担保融資の返済を拒否する事態が発生したりもした。

■ 不動産が成長の牽引車から障害物に

 中国の不動産は、1980年代に始まった改革・開放以後、約40年間にわたり中国経済の成長を牽引(けんいん)した牽引車だった。住宅はもちろん、空港・橋・港湾・鉄道など大規模建設が進められ、働き口が急増し、電子・家具産業などは活況をむかえた。地方自治体は土地を売って公共行政に必要な財政を容易に調達した。

 2010年代初めまで経済成長率10%台の高どまりが続き、住宅価格が大幅に上昇した。住宅を所有する人々は資産の増加という果実を得た。北京、上海、深センなど第一線の都市の住宅は、ソウルやニューヨーク、東京の住宅価格に匹敵するなど価格が垂直上昇した。

中国江蘇省淮安市の恒大集団のマンション群=淮安/AFP・聯合ニュース

 しかし、2010年代に入ってからも続いた不動産市場の過熱と資産価格の暴騰は、深刻な貧富の差を引き起こした。住宅価格が高すぎるため若者たちは結婚と出産を避けた。市場の資金が主要産業や先端技術部門ではなく不動産分野に流入する現象も続いた。

 不動産が成長の「牽引車」ではなく「障害物」に変わっていった。中国当局は2015年から「住宅は居住する所であって投機するものではない」という標語を掲げ、不動産分野に対する制裁に入った。不動産価格の急騰を抑え、安定成長を維持する戦略だった。

 中国当局は不動産危機を一部認めながらも、かつてほど熱い対応策を打ち出す兆しはみえない。中国中央銀行の人民銀行は21日、基準金利を調整し、住宅担保融資の基準となる5年満期の貸出優遇金利(LPR)には市場の予測に反して手をつけなかった。外部の予想より中国当局の態度ははるかに慎重であることが確認されたわけだ。

 中国国家統計局の付凌フイ報道官は15日、「現在、不動産市場は調整段階にある。一部の不動産企業が困難に直面しており、特に大規模企業らは債務危機にさらされている」と述べた。市場の状況は難しいが、これを調整段階とみて不動産市場正常化のための機会にしようとする意図がうかがえる。

 しかし、西欧の見通しは悲観的だ。今回の事態が不動産危機を超えて、40年余りにわたり驚くべき成果を出してきた「中国式成長モデル」の失敗を意味するという分析まで出ている。

 米ウォールストリートジャーナルは20日、「中国の40年好況が終わった」という見出しの記事で「中国を貧困から抜け出させ大国に導いた経済的モデルが崩れたとみられる。危険信号が天地に広がった」として「中国の一部地域は使用率の低い橋梁や空港を抱え込み、数百万戸のアパートが売れ残っている。投資収益率は激減している」と指摘した。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1105386.html韓国語原文入力:2023-08-23 16:58
訳J.S

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