オーナーがいないと企業経営は危うくなり、株価は下落するのだろうか。
26日、検察捜査審議委員会(捜査審議委)がサムスン電子のイ・ジェヨン副会長の事件について、捜査中止と不起訴を勧告したことには、サムスンと財界が主に喧伝してきた経済危機の中の「イ・ジェヨン役割論」も作用したという。しかし、このような判断を裏付ける証拠や実際の例はほぼないと専門家らは口をそろえる。
まず、イ・ジェヨン副会長が「国政壟断」事件で2017年2月から翌年2月までの1年間の収監生活を送っている間、サムスン電子の経営に異常は生じなかった。営業実績はむしろ大幅に改善した。同社の2017年の営業利益は53兆6459億ウォン(約4兆7900億円)で、前年に比べ83%も増加した。もちろん、短期業績は全般的な業況などの変数が大きく作用するため、オーナー不在の影響を完全に反映することはできないが、少なくともオーナー不在が直ちには経営悪化につながらないという事実を示している。同様の脈絡から、イ副会長が違法合併の疑いなどで起訴されたら直ちに今年下半期のサムスン電子の経営実績が急減すると予想する金融市場の専門家は少ない。
これまでの様々な研究も、オーナーの司法処理と企業経営の間に有意の関連性を見出すことは難しいと結論づけたものがほとんどだ。今年1月に経済改革研究所が出した報告書もその一つだ。同研究所は2000年から2018年にかけ、財閥のオーナー11人が有罪判決を受けた後の、そのオーナーが支配する企業集団(大企業グループ)の株価の変化を調べた。その結果、オーナーが実刑を受けた場合は株価に有意の変化が見られなかったが、執行猶予などの寛大な判決が下された場合は株価が下落していたことが分かった。こうした実証分析の結果は、財界の主張とは異なり、オーナーに対する「大目に見る判決」がかえって企業価値には否定的な影響を及ぼすことを示唆する。
国外の実証研究でも同様の結果が見られる。漢陽大学のイ・チャンミン教授(経営学)は、「最高経営責任者(CEO)が背任や詐欺で処罰を受けた場合、その後、企業が支配構造の改善に取り組むことで企業価値が上昇するという結果を示した研究が少なくない。これが、米国など先進資本主義国家で会計粉飾などについて厳しい処罰を行う理由でもある」と指摘した。会計処理のような企業経営の基本規則に背いた行為に対する厳正な処罰が、市場全体の発展と好循環をもたらすというのだ。
こうした研究事例とは異なり、「世論市場」では依然としてオーナー不在が企業経営に打撃を与えるという主張が出続けている。ソウル大学のイ・ギョンムク教授(経営学)は、「イ副会長は、石油化学の売却やハーマン買収など、この間ポートフォリオの調整をうまく行なったと思う。(起訴されれば)イ副会長の次元で意思決定すべき重要な問題に関心を傾けるのは難しくなるだろう」と懸念を示した。
大規模投資や買収・合併(M&A)などの主要意思決定が必要な時、「オーナーの空白」が意思決定の遅れにつながり、企業価値に影響を与えかねないという話だが、この十数年間、オーナー不在時にこうした懸念が現実化した事例の報告はない。イ・チャンミン教授は「社長団協議体を通じてグループ全体の戦略的方向を決めても問題はない」と述べた。