サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の逮捕令状が裁判所で却下された。検察がサムスンの違法な経営権継承の「最終受恵者」であり「最終指示者」として名指ししてきたイ副会長の令状が棄却され、1年7カ月間続いた捜査は重要な分岐点を迎えた。
ソウル中央地裁のウォン・ジョンスク令状専担部長判事は9日午前2時、イ副会長の逮捕令状を棄却した。ウォン部長判事は「基本的な事実関係は疎明され、検察はこれまでの捜査を通じてすでに相当の証拠を確保した。だが、不拘束状態で裁判を行う原則に反して被疑者を拘束する必要性及び相当性に関しては疎明が足りない」と棄却事由を明らかにした。ウォン部長判事は「この事件の重要性に照らし、被疑者の責任の有無及びその程度は裁判過程で十分な攻防と審理を経て決定するのが妥当だと判断される」と付け加えた。ウォン部長判事は、チェ・ジソン旧サムスン未来戦略室室長(副会長)とキム・ジョンジュン旧未来戦略室戦略チーム長(社長)の逮捕令状に対しても同様の理由で棄却した。
イ副会長とチェ元室長、キム元戦略チーム長らは、資本市場と金融投資業に関する法律の不正取引及び相場操作行為、株式会社などの外部監査に関する法律違反の疑いなどを持たれている。検察はサムスンがイ副会長に有利になるようサムスン物産と第一毛織の合併を決議し、これを成功させるために相場操作を行い、合併後にはこれを正当化するために4兆5000億ウォン(約4100億円)台のサムスンバイオ会計詐欺を行ったとみている。
前日の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)で、両者は熾烈な攻防を交わした。イ副会長側の弁護団は「継承作業」が「朴槿恵(パク・クネ)政府の経済民主化に関連する立法に対応するために事業構造を再編する過程で生まれた付随的効果」だと主張した。株価操作疑惑については「どの会社も上場や株式買収請求権で株価管理を行う」という論理を展開した。
一方、検察は150ページ分の令状請求書と20万ページ分の捜査記録をもとに「イ副会長は、経営権継承作業で数兆ウォン台の支配権利益を得るために市場に虚偽情報を提供し、株主と投資家の意思決定を歪曲した」と強調した。特に検察は、サムスンが2012年から数年間経営権継承作業を進めながら作成した「プロジェクトG」文書や「イ・ジェヨン副会長への報告必」文書などを重要物証として提示した。
しかし、裁判所がイ副会長の逮捕令状を棄却したことで、検察の捜査は支障が避けられない見通しだ。検察は令状が棄却された後、「裁判所の決定を残念に思う。令状裁判の結果と関係なく、法と原則に則って捜査に万全を期す」という立場を明らかにした。