朝鮮王朝時代の王が通った道にK-POPの王が帰還する場面を、世界中が同時に見守ることになるのだろうか。
ソウルの景福宮(キョンボックン)と光化門(クァンファンムン)広場を結ぶ歴史的な軸上で開催される防弾少年団(BTS)のカムバック公演により、ソウル市内が巨大なステージへと変貌する。
21日午後8時、ソウル市鍾路区(チョンノグ)の光化門広場で開催される「BTS・ザ・カムバック・ライブ:アリラン(THE COMEBACK LIVE :ARIRANG)」は、単なるショーケース以上の意味を持つ。景福宮と光化門、光化門広場を結ぶソウルの象徴的な空間を背景に、K-POPグループが復帰ステージを披露し、その様子がネットフリックスを通じて世界にライブ配信される。韓国の歴史的空間とグローバルな大衆文化が一つの画面の中で交差する珍しい光景が広がる。
今回の公演は、BTSが2022年10月に釜山(プサン)のアジアド主競技場で行った「BTS <Yet To Come> CONCERT in BUSAN」以来、約3年5カ月ぶりに全員揃った舞台。軍服務などで一時活動休止期間を経て、7人のメンバーが再び同じステージに立つ瞬間がソウルの中心部で繰り広げられる。ファンたちにとっては待ちに待ったBTSとの再会を果たせる公演であり、K-POP産業全体からすると、時代を代表してきたグループが再び動き始めるシグナルでもある。
公演の空間構成もまた異例だ。光化門三叉路から市庁駅近くまで続く世宗大路(セジョンデロ)一帯の約1キロメートルの区間が一つの公演場のように使われる。当初は1万5千席で計画されていた観客席は、エリアの拡大に伴い約2万2千席規模に増えた。光化門前から世宗大王像と李舜臣将軍像へと続く光化門広場の中心軸が、そのまま観客たちの動線となる。ソウルの代表的な歴史空間が、長く広がる巨大な公演会場へと再構築されることになる。
空間の象徴性は、パフォーマンスの演出においても重要な要素となる可能性が高い。景福宮の内部から出発し、復元された光化門の月台(ウォルテ)と「王の道」と呼ばれる御道(オド)に沿ってメンバーが登場するシーンが演出されるという予想もある。朝鮮王朝の王が通った道の上で、現代のポップスターが歩み出す瞬間は、それ自体が強烈な象徴性を生み出す。すでに広告には景福宮で事前に撮影された映像が使用されている。当日の本公演前のプロローグ映像が景福宮のどのシーンを映し出すのかも注目を集めている。
演出は世界的な舞台演出家ハミッシュ・ハミルトン氏が総括する。ハミルトン氏はエミー賞受賞歴のある演出家で、米スーパーボウルのハーフタイムショーやグラミーやアカデミー賞の授賞式、2012年ロンドンオリンピックの開会式などを演出し、マドンナやビヨンセ、リアーナなどの世界的ポップスターの大規模なステージを手掛けてきた人物。
今回の公演の中心には新アルバム『ARIRANG』がある。BTSは公演の前日である20日午後1時に、5枚目の正規アルバム『ARIRANG』を発表した。2020年2月の『MAP OF THE SOUL: 7』以来、約6年1カ月ぶりにリリースされる正規アルバムで、タイトル曲「SWIM」をはじめ全14曲が収録されている。
新しいアルバムと公演は、ソウル全域に及ぶプロジェクトともつながっている。所属事務所のBIGHIT MUSICは、20日から4月12日まで「BTS THE CITY ARILANG SEOUL」を開催する。特にアルバム発売日の20日の夜には、崇礼門(スンレムン)と南山(ナムサン)のNソウルタワーでメディアファサード(建物の外壁にLEDなどの光源を敷き詰め、映像や光の演出を行うデジタルサイネージ技術)が展開され、ソウルの夜空を彩った。同じ日、トゥクソム漢江公園では約15分間ドローンによるライトショーが行われ、空に光で描かれる壮観が広がった。また、東大門デザインプラザと盤浦(バンポ)大橋の月光レインボー噴水では、音楽と照明が融合したミュージック・ライトショーが続き、ソウル各地で同時に祝祭ムードを演出する。
ソウル市は都市全体を一つの舞台へと拡張する連携観光プログラムも用意している。20日から21日の夕方には、セビッ島、清渓川(チョンゲチョン)、盤浦大橋の月光レインボー噴水、ソウル植物園などの公共施設8カ所と、南山ソウルタワーやロッテワールドタワーなどの民間施設7カ所、合計15のランドマークでBTSの復帰を歓迎する景観照明が一斉に点灯される。21日から22日にかけて、盤浦大橋の月光レインボー噴水はBTS音楽をテーマにした特別な噴水ショーを披露する。また、4月6日から19日まで清渓川の五間水橋〜ポドゥル橋の500メートル区間は、BTSのシンボルを活用した「アリラン・ライトワーク」散策路として整備される。さらに、漢江水上バスの乗り場のルーフトップ開放や、漢江水上バスの1日無制限乗船券、SEOULDAL(ソウルダル)、南山ソウルタワー、ロッテワールドタワーの展望台の観覧、K-POP聖地の徒歩ツアーまで加え、公演前後のソウル滞在体験を広げる機会を設ける。
ソウルの龍山区(ヨンサング)にあるHYBE本社ビルと中区(チュング)の新世界百貨店本店では「BTSポップアップ:ARIRANG」も開催される。 ポップアップスペースにはアルバム名を形象化した大型オブジェと北斗七星のグラフィックが配置され、コンセプトフォトとCDなどのアルバムの展示が行われる。国立博物館文化財団のブランド「MU:DS」とコラボした商品も展開する。公演や展示、都市イベントが一つの体験としてつながる構造だ。
マルチプレックスシアターのCGVは、シアター型ファンイベント「BTS THE CITY ARIRANG SEOUL EXPERIENCE IN CINEMAS」を、22日にCGV龍山アイパークモールで開催し、新アルバムの全曲とビジュアルアートを組み合わせた「ノレバン(カラオケ)上映会」やフォトゾーン、メッセージウォールなどのファン体験プログラムを実施する。45回にわたり約8千席規模で開催されるイベントで、観客はペンライトを持って歌に合わせて歌う「シング・アロング」上映や伝統遊び体験、メディアアート展示などを通じて、アルバムのコンセプトを劇場で立体的に体感できる。
大衆音楽界では、今回の光化門公演を韓国の大衆音楽が生み出す象徴的なシーンとみている。大衆音楽評論家のイム・ヒユン氏は「BTSの今回の公演は、ジャン=ミシェル・ジャールのパリ・ラ・デファンス・コンサートやヤニーのアテネ・アクロポリス公演、ローリング・ストーンズのハバナ無料コンサートのように、都市のランドマークを背景にしたメガコンサートを思い起こさせる」と評価した。さらに「過去に音楽ファンが映像だけで熱狂していたシーンが、ソウルの真ん中で展開される可能性がある」とし、「光化門という歴史的空間でK-POP公演が行われるという事実自体が、韓国の大衆文化の地位を示すシーンだ」と述べた。
イム氏は今回の公演がグローバルプラットフォームと結びついている点にも意義を見出した。イム氏は「K-POPとK-カルチャーが超高速移動通信とオンラインファンダム文化の中で世界に広がった流れを考えると、ネットフリックスが個別のアーティストのコンサートを世界に生中継する初の事例がBTSであることも象徴的だ」とし、「音楽と都市、プラットフォームが結びついた一つの文化イベントになるだろう」と語った。