「第1四半期の57兆2000億ウォン(約6兆1000億円)の営業利益は私も驚いた数字でしたが、どのように受け止めておられるのか気になります。私たちが心に刻んでおくべき苦言はありますか」
サムスン電子が第1四半期の暫定実績を公開した後、4月8日にある役員が送ってきたショートメッセージだ。予想値としてしか存在していなかった天文学的な営業利益が目の前の成績表に表れたことで、予想される摩擦を前に、各界の意見を取りまとめようとする意図が読み取れた。ひどく貧しい家庭ではさまざまな争いは日常茶飯事かもしれないが、突然宝くじに当選した家も平穏を保つことは容易ではないものだ。
予想通り、それから1カ月あまり、サムスン電子の利益分配についての論争が激しい。韓国社会がこれまで経験したことのない利益規模のおかげで、社員1人あたり少なくとも数億ウォン台の成果給の支給が予想され、サムスン電子労使だけでなく、韓国国民全体の関心事になっている。摩擦が深まるにつれ、会社の枠を超え、政界や学界、市民社会などの声も少しずつ大きくなっている。
さまざまな議論に対して、「利己心の表れ」「便乗」といったレッテルを張るのはやめよう。それぞれの主張には一面の真実が隠されており、それぞれの見方や立場に基づく要求を最大限調整し、最大公約数を見いだすことが現時点での課題であるからだ。
まず、営業利益の15%を成果給の財源に回そうという労働組合の主張はある意味妥当だ。サムスン電子が半導体産業で世界最高水準の競争力を維持できるようにした最大の功労者は、誰が何と言っても労働者だ。微細プロセスを細かく調整して歩留まりを引き上げ、後れを取っていた高帯域幅メモリ(HBM)の技術に素早く追いついたのは、サムスン電子の労働者の努力抜きでは説明しがたい。半導体人材の流出を防ぐために妥当な成果報償システムを備えるべきだとする労組側の主張も、常識にかなっている。
ただし、労組が見落としている点もいくつかある。何より、協力会社や下請け業者の労働者との共生案に言及さえしていない点は納得しがたい。半導体生産は多段階で構成される前工程・後工程を担う協力会社との連携が不可欠だ。また、膨大な設備や素材・部品が動員される装置産業であるため、施設の維持・保守と危険物管理には、多くの下請け業者が関わっている。実際、昨年サムスン電子の事業場で一緒に働いた「所属外労働者」だけで3万5000人に達すると推定される。半導体業界に突然もたらされた超過利益が、人工知能(AI)への投資ブームによる外部要因という点は別にしても、少なくともこうした下請けや協力会社の労働者を除外した成果分配要求は行き過ぎだ。
共生基金の設立や利益共有制度などを通じて、超過利益の一部を社会に還元すべきだとする主張は、主に学界や政界を中心に出ている。彼らの主張は、半導体産業の成長過程において、政策的支援が大きな役割を果たした点に注目している。実際に半導体産業は「国家代表産業」とみなされ、税制、金融、エネルギー、用地、規制など政府が提供できるすべての恩恵を最大限に享受してきた。端的に言えば、現在の半導体企業の研究開発(R&D)には、最大で40%の法人税の税額控除率が適用されるが、これは一般企業の研究開発に適用される税額控除率(2%)の20倍に達する。共同体全体が負担したコストを無視し、サムスン電子の労使が身内争いばかりを繰り広げることになるのであれば、国民の立場としては眉をひそめざるを得ない。
労組の要求に困惑するサムスン電子の経営陣の立場についても、納得できる点はある。まず、半導体産業特有の業況サイクルと、設備投資や研究開発にかかる巨額の財源を考慮せざるを得ないという説明にはうなずける。しかも、サムスン電子内には半導体部門だけでなく、スマートフォン・家電・ディスプレイなど多くの部門が存在する。第1四半期の57兆2000億ウォンの営業利益のうち53兆7000億ウォンを稼いだ半導体部門だけ成果給の祝宴を開くわけにはいかないという説明を無視することはできない。
ただし、AIによる超過利益は昨年下半期から予想されていたという点で、体系的な成果分配案を事前に考慮していなかった点は、サムスン電子の経営陣の最大のミスだ。設備投資や研究開発費、株主還元、労働者の取り分の利益配分の割合を、取締役会などで事前に議論しておき、株主総会で公開していれば、現在の混乱は防げただろう。いま経営陣がすべきことは、労働組合を指弾することではなく、根拠に基づく黄金比ともいえる配分割合を考え、社内外の説得に乗り出すことだ。労働組合が予告したストライキ実施日(21日)まで半月しか残されていない。時間は多くない。
ノ・ヒョヌン|経済産業部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )