北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長兼朝鮮労働党総書記が労働党第9回大会で明らかにした対南・対米・核戦略の中核となる内容は、北朝鮮体制を守るためには「核武装」とともに南北間に「壁」を築かなければならず、「発展」を図るためには世界最強の国である米国との関係を最終的には改善すべきというものだ。金総書記のこのような認識自体は新しいものではないが、5年後の労働党第10回大会まで維持する「戦略基調」としてこれを再び強調したことが問題だ。金総書記が態度を変えない限り、李在明(イ・ジェミョン)政権の任期中に南北交流協力や当局間の対話再開を期待するのは難しいからだ。
金総書記の党大会演説で注目すべきなのは、2023年12月の労働党第第8期第9回全員会議で自らが初めて明らかにした「反統一的敵対的二国関係」の宣言が、「一時的な戦術的措置ではなく、歴史的な選択」であり、「結論的」であると強調したことだ。韓国を「徹底的な敵対国、永遠の敵」と見なし、「同族という枠から永遠に排除する」と宣言したのだ。
金総書記は、南北関係に「断絶の壁」を築こうとしているのは「韓国が(北朝鮮の)体制を脅かしていること」が原因であることを強調し、「朝鮮半島を『自由民主主義』の資本主義反動体制に変身させようとする野望」や「『朝鮮半島非核化』の旗印のもと、武装解除を画策している」ことなどを問題視した。そして「韓国の歴代政権は陰険にも和解と協力の機会を通じて我々の内部に彼らの文化を広め、我々の体制の崩壊を企ててきた」と主張した。吸収統一と体制崩壊を防ぎ、北朝鮮の若者層の間で流行している韓国ドラマと映画、歌の拡散が引き起こす「思想汚染」を避けるためには、「遮断壁」を築くしかないという意味だ。
李在明政権の北朝鮮政策を「粗末な欺瞞劇」と貶めたのも同じ文脈といえる。長くは脱冷戦の30年あまり、短くても2000年の初の南北首脳会談以降、南北交流協力は、期待とは違って北朝鮮の経済発展には大きな助けにならず、むしろ「体制を脅かす要因」として働いたという認識を示したのだ。金総書記は今回言及しなかったが、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の支援を受けて推進した2018~2019年の南北米首脳外交が結局失敗に終わり、「韓国の役割に対する懐疑」を抱いたことも影響したものとみられる。
ただし、金総書記の韓国政策は完全に好戦的なだけではない。この点は「韓国が安全に生きていける唯一の道は、我々とのすべてを断念し、我々とかかわらないことだ」と強調した点からも明らかだ。互いに対話も、争いもしない「冷たい平和」が金総書記の望む南北関係の未来像だという意味だ。
一方、米国については「主権国家に対して侵略と武力行使を繰り返す極めつけのならず者」としつつも、「米国と良好な関係を築けない理由はない」と述べた。事実上の「対話シグナル」の発信といえる。もちろん、ここには前提がある。「憲法に明記された我が国の現状」、すなわち憲法第58条の「責任ある核保有国、核武力発展の高度化」を認めるとともに、「朝鮮に対する敵視政策の撤回」、言い換えれば韓米軍事演習と朝鮮半島における米戦略兵器の配備の中止が先行されることを条件に掲げている。体制の発展を図るためには、覇権国の米国との関係改善が避けられないことを認めつつも、核は放棄しない姿勢を示した。
金総書記のこのようなメッセージは、ドナルド・トランプ米大統領の3月末の中国訪問を機に対話をしたいが、「平和共存と永遠の対決」のどちらの道を行くかは米国次第だとして「ボールを渡す」ようなものだ。これに関して金総書記は「対外活動を主導的・戦略的」に展開するとし、まずは軍事的な対立よりも「外交」に力を入れる方針を示した。トランプ大統領が昨年、慶州(キョンジュ)APEC会議に出席した前後に金総書記に何度も会談を積極的に提案したにもかかわらず応じなかったように、今回も緊張緩和に向けた米国の軍事的先制措置がない限り、会う意思がないことを再度強調した形だ。