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仕事のできる李大統領の「乱暴な表現」…盧武鉉元大統領の後悔から学ぶべきこと

登録:2025-12-22 08:43 修正:2025-12-22 09:26
[ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 

「国民に安定感を抱かせる品格ある言葉が必要」 
盧武鉉元大統領の省察と「大統領の資格」
李在明大統領が12月19日、政府ソウル庁舎別館で行われた法務部(最高検察庁)と性平等家族部による業務報告で発言している/聯合ニュース

 大統領への業務報告を生中継すると発表された時、リスクが高いとの理由で李在明(イ・ジェミョン)大統領に反対意見を送った民主党の議員がいました。その議員は何度か生中継を見てから「心配とは異なり、李在明大統領はうまくやっている」と評価しました。しかし「大統領の乱暴な表現とミスが目立ったことで、業務報告があまり注目されていないようだ」と言う議員もいます。

 生中継に対する評価が割れていることは、李在明大統領自身もよく知っています。12月16日の国務会議で「国政の主体である国民に透明に公開されてこそ、国民中心の国政運営というものが言葉にとどまらずきちんと成り立つ。こういうことも練習しているうちに、すべてよくなっていく」と述べています。

 カン・ユジョン報道官は12月18日にユーチューブチャンネル「キム・オジュンの謙遜は難しい ニュース工場」に出演し、「李大統領が城南(ソンナム)市長時代に執務室にCCTV(防犯カメラ)を付けていたことを覚えているか」、「業務報告の生中継は(自ら)監視の対象になろうということ」だと説明しました。

 そうなのでしょう。業務報告の生中継は、李在明大統領自身にかかるリスクの負担が誰よりも大きいものです。にもかかわらず生中継にこだわる理由は簡単です。李在明大統領は人々の具体的な暮らしを変えたくて城南市長となり、京畿道知事となり、大統領となったからです。彼の関心が巨大な言説よりも政策のディテールに向いている理由はそこにあります。「イルチャラー(仕事のできる人)」は彼のアイデンティティーです。大統領になったからといって急に変わることは期待できません。今のあの姿こそまさに「李在明スタイル」なのです。

 12月19日の公正取引委員会による業務報告で李在明大統領は、「韓国で生理用ナプキンが他国より39%も高いのはなぜなのか調べてほしい」と注文しました。本当に「ゴマ粒(のように細かい)リーダーシップ」だと言わざるを得ません。

 李在明大統領のこのようなリーダーシップは、前任者と非常に対照的な特徴です。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領時代、公務員たちは懸案が発生すれば大統領室に報告しましたが、何の回答もありませんでした。しばらくすると、もはや報告そのものをする必要がないため、なすべきことをしない状態に陥っていたといいます。

 ですが、李在明大統領は真逆に公務員たちをけしかけています。最近の公務員たちの雰囲気は、仕事が多いため大変ながらも、たいへん盛り上がっているそうです。仕事が分かっている大統領が動かない公務員たちをたたき起こしたわけです。

 民意も悪くありません。12月19日に発表された韓国ギャラップの世論調査では、大統領の職務を「支持する」は55%、「支持しない」は36%でした(中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイトより)。1~2週間前より少し悪化していますが、支持する方がはるかに高くなっています。支持すると回答した人に理由を尋ねたところ、「コミュニケーション/国務会議・業務報告」が最多でした。

 しかし、何事もよい面だけがあるわけではありません。作用には必ず反作用が伴います。業務報告の生中継も同じです。

 2つの問題があります。1つ目、知識の限界です。業務報告の現場で即座に発言すると、大統領の頭の中があらわになります。12月12日の北東アジア歴史財団の業務報告で飛び出した桓檀古記(ファンダンゴギ)文献発言は、弁解の余地がほぼない誤りです。

 トランプ大統領がリベリアの大統領に「どこでそんなにうまい英語を学んだのか」と聞いたため、リベリアは奴隷から解放されたアフリカ系米国人が建てた国だということを彼が知らないことがあらわになったこともあります。国家首脳の水準はすなわちその国の水準です。だからこそ国家首脳は事前に準備されていない発言をできるだけ控えるべきなのです。

 2つ目、言葉と態度です。こちらの方が重要です。

 李在明大統領は12月17日の産業通商部などの業務報告で、「知らないことは知らないことに対する責任を取るべきだ。権限の大きさの分だけ責任を取るべきだ。権限を行使しておいて責任を果たさないという態度は、天下の泥棒根性だ。いかなる役割も担ってはならない人間だ。金と名誉を得たければ出ていって稼げ」と述べました。

 12月12日の業務報告の際に「私よりも物事を知らない」、「話が実に長い」と仁川(インチョン)空港公社のイ・ハクチェ社長を非難しましたが、翌日にイ・ハクチェ社長に「大統領のせいで外貨搬出の手法が知られてしまった」と反発され、再びイ・ハクチェ社長を強く批判しました。「話が長い」、「泥棒根性」などは品のない発言です。

 李在明大統領は、歴代のどの大統領よりも特異な成長過程と履歴を持つ大統領です。人が中学高校に通っていた時、彼は少年工でした。工場では常に暴力にさらされ、労働災害で障害者となりました。生きるのがつら過ぎて、二度も自殺を試みています。

 入学資格検定で大学に進学し、司法試験に合格して弁護士になりましたが、市民運動をして既得権勢力と激しく闘いました。これまでの人生をこうして生きてきた人に、上品な言葉や態度を期待するのは難しいことです。

 しかし、大統領には品位がなければなりません。それが国民の要求です。6月の大統領選挙で李在明候補の総括常任選対委員長を務めたユン・ヨジュン元環境部長官は、大統領のリーダーシップの専門家です。2011年に『大統領の資格ーステイトクラフト』という本を書いていますが、2025年にその増補版を出しています。サブタイトルは「問題は当選後の統治力だ」です。

『大統領の資格 ステイトクラフト 問題は当選後の統治力だ』ユン・ヨジュン著//ハンギョレ新聞社

 「国家の興亡盛衰には様々な要因が作用するだろうが、究極的には諸般の要因を管理し統制しつつ重要な決定を下し、ひいては決定過程そのものを管理する政治指導者、特に韓国の場合、最高政治指導者である大統領のステイトクラフト、すなわち国家を運営する資質と能力がカギだということだ」

 ユン・ヨジュン元長官は、大統領の資質の中でも言葉の重要性を強調しています。

 「ハイデッガーは『言葉は存在の家』だと言っているが、言葉は単なる手段ではなく、まさに人間そのものなのだ。ましてや国家指導者、特に大統領の場合、国家の最高行為者らしい言葉を駆使しなければならないというのは、言うまでもない」

 「言葉または意思疎通は民主政治の要だ。自らの考えが合理的で妥当だということをはっきりさせ、相手を説き伏せる行為だ。言葉は論理的でなければならないが、さらに重要なのは、人の心を動かしうる高い品格と説得力を持っていることだ」

 ユン・ヨジュン元長官は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の言葉と態度を批判しています。

 「故盧武鉉大統領のように、憲法の守護者であり国家の行為者である大統領が反対者を露骨な言葉で非難したかと思えば、果ては国家の最高制度である憲法に対してまで卑俗語を使い、また国家運営を『賭け』のような言葉で表現していては、結局は何も成し遂げられないということを、はっきりと悟るべきだ」

 当事者たる盧武鉉大統領は、自らの言葉や態度をどう考えていたのでしょうか。盧武鉉大統領の死後、自叙伝に詳しい説明が記されます。

 「私は、言葉を威厳をもって用いたり、行動を気品をもって取ったりしなければならない環境を経験したことが、ほぼなかった」

 「準備なしに大統領になったと批判する人も多かったが、他のことはともかく、言葉と態度に関する限り、私は確かに準備ができていない大統領だった」

 「何より言葉が問題だった。私は口語体の現場の言葉を駆使し、反語法や冷笑的な表現を好んで使った。元々はそうではなかったが、人権弁護士として民主化運動をしている時に、そのような言語習慣がついた。その時は聴衆に強い印象を与える表現が必要な時代だった」

 「権威主義的な大統領文化は克服すべき問題だったが、国民に信頼と安定感を抱かせる品格ある言葉を使いながらその仕事をすべきだった」

 「退任後、バラク・オバマ大統領の演説と討論を見た。彼は社会的少数派に属する市民運動家出身の政治家だったが、非常に品格ある言葉を駆使していた。私もそうしていたら、よりましだったはずだ」

 盧武鉉大統領の本音と悔恨が感じられませんか。まるで今の李在明大統領へのアドバイスのようです。

盧武鉉元大統領の自叙伝『運命だ』盧武鉉財団編//ハンギョレ新聞社

 李在明大統領は、盧武鉉大統領にとてもよく似た政治家です。李在明大統領は2017年、共に民主党の大統領候補を選ぶ予備選挙に挑戦した際、『李在明はやります』という自叙伝を出しています。盧武鉉大統領との出会いを次のように記しています。

 「そのころ、司法研修院に『労働法学会』、『基本権学会』などのいくつかの組織が作られた。私は労働法学会に入って関連する本を読みあさり、組織活動にも忠実に臨んだ。そんなある日、かなり有名な弁護士の一人が特別講師として招かれ、熱い講演を繰り広げた。彼は釜山(プサン)で人権弁護士として活動していた時代の生々しい体験談を若い後輩たちに聞かせてくれた。情熱と本気のこもった熱い講演だった。私を含む先輩後輩研修生たちは、講演の間中、胸が熱くなるのを感じていた。その講師の名は盧武鉉だった。講演が終わった後も、しばらく席を立つことができなかった。胸の中でもう一つの決心が固まりつつあった。『私もあの人のように人権弁護士になるぞ!』」

 李在明大統領は、盧武鉉の道をたどって人権弁護士となりました。そして、盧武鉉の道をたどって大韓民国の大統領となりました。盧武鉉大統領は歴代の大統領の中でも、国民に最も肯定的に評価されている大統領です。李在明大統領も退任後、盧武鉉大統領のように国民からたっぷりと愛される大統領になってほしいものです。

 まとめます。李在明大統領の性格からして、業務報告の生中継は今後も続けるでしょう。2つのことに注意すべきです。1つ目、現場での即席発言をできる限り減らすべきです。大統領室には有能な参謀が多くいます。大統領の言いたいことは必ず事前に点検しておくとよいと思います。2つ目、卑俗語や相手を蔑視するような発言は慎むべきです。このことは、李在明大統領の省察が必要だと思います。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1235690.html韓国語原文入力:2025-12-21 09:04
訳D.K

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