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「アジア版NATO」は答えにならない【寄稿】

登録:2026-01-03 06:57 修正:2026-01-03 10:18
ムン・ジョンイン|延世大学名誉教授
ドナルド・トランプ米大統領が2025年12月4日(現地時間)、ワシントンの米国平和研究所で、ルワンダのポール・カガメ大統領およびコンゴ民主共和国(DRC)のフェリックス・チセケディ大統領との和平協定調印式に出席している=ワシントン/AFP・聯合ニュース

  昨年12月5日、ホワイトハウスは第2次ドナルド・トランプ政権の外交、経済、軍事分野を包括する最上位の総合戦略指針書である国家安保戦略(NSS)報告書を発表した。今回の報告書には、過去とは異なる非常に型破りな内容が含まれている。

 米国が伝統的に志向してきた普遍的価値の実現という理想主義的な虚飾と偽善を排撃し、極めて現実主義的な発想を貫いている。米国が世界秩序を支えた時代は終わり、「アメリカファースト」の旗印のもと、国益の追求を最優先目標にするという意味だ。国益の核心は富国強兵にある。経済力の復元を通じて米国の真の力を構築し、このような力を通じて平和を築き上げるという構想だ。ハミルトンの重商主義とレーガンの「力による平和」が重なって見える。

 国力の限界を認め、国際政治の新たな構図を提示することも、同報告書の興味深い内容だ。2017年の第1次トランプ政権のNSS報告書は、中国、ロシアを修正主義勢力と規定し、これらの国々との新冷戦を宣言した。これは米国中心の一極体制を前提にするものだった。ところが、今回は米国、中国、ロシアという三つの勢力圏を認め、これらの勢力均衡と戦略的安定に焦点を合わせている。これは戦略的思考の大きな変化を意味する。

 外交安保の優先順位も大きく変わりつつある。不法移民と麻薬カルテルの遮断、「MAGA」価値の保護、首脳外交を通じた平和の追求、経済的利益の最大化に力点を置いている。地域別の優先順位においても変化が大きい。米本土の安全保障とモンロー主義の復元を通じた南北米大陸に対する地域覇権の構築が優先的な関心事であり、中国けん制を目標とするインド太平洋地域が2番目の比重を占めている。伝統的に米国が最も重要視していた欧州は3番目に押し出され、中東とアフリカは軽視されている。これと共に、トランプ大統領の取引主義を反映するかのように、米国の能力には限界があるため国際安保にかかるコストを同盟やパートナーと共有、あるいは転嫁することを目指している。

 驚くべきことに、今回の報告書では朝鮮半島問題がほとんど取り上げられていない。対中国けん制のために韓国などの同盟およびパートナー国家との協力と負担の分担が言及されているだけだ。また、2017年のNSS報告書では17回も言及された北朝鮮の核問題が、今回の報告書では全く登場しない。これは韓国にとっていくつかの重要な含意がある。

 第一に、第2次トランプ政権において韓米同盟の比重がそれだけ低くなったことを示唆する。これは韓米同盟を過信するなというシグナルでもある。そのうえ、同報告書が強調する軍事的不介入の原則を考えると、朝鮮半島有事の際、米国の軍事的自動介入も既成事実とは言えない。このような状況であるほど、通常戦力の不備を早急に補完し、自主国防の基盤を拡充しなければならない。そして、戦時作戦統制権の早期転換を通じた戦略的自律性の確保も急がれる。結局、韓国自ら戦える軍隊を作らなければならない。

 第二に、通常戦力だけで北朝鮮の核に対応するのは難しい。米国の拡大抑止力が欠かせない。したがって、米国がワシントン宣言の履行を通じて韓国に対する拡大抑止力を保証するよう外交的努力を強化しなければならない。その保証がなければ、韓国独自の核武装論議を静めることは難しく、北東アジアの核ドミノ現象は避けられないだろう。

 第三に、新冷戦のような新たな陣営構図の出現を事前に防ぎ、私たちが望まない地域紛争に巻き込まれないための外交的努力が切に求められる。「中国の冒険主義と米国の孤立主義」に対応するために「アジア版NATO」を主張する人たちもいるが、これは極めて望ましくない。陣営論理による恒久的な安保ジレンマから抜け出せないからだ。むしろ「アジア版欧州安全保障協力機構(OSCE)」の方がより望ましいかもしれない。第一列島線を含む海路安全問題も多国間安保協力の構図でアプローチするのがより常識的だ。「朝中ロ対韓米日」という理念的陣営対決構図を望まない第2次トランプ政権の政策路線からして、このような域内の多国間安保協力構図は実現可能だとみる。

 最後に、北朝鮮の核問題が取り上げられなかったと落胆する必要はない。同報告書はトランプ大統領の外交裁量権を大きく残している。官僚的な制約なしに、トランプ大統領の「ディール・メイキング」方式を通じて北朝鮮とこれまでにない解決策を作り出すことができるという意味だ。さらに、北朝鮮の核問題と朝鮮半島の平和問題は、トランプ大統領にとってまだ未解決のまま残っている。トランプ大統領のリーダーシップに期待をかける価値はある。そのような点で、今回の米国のNSS報告書が必ずしも悲観的なものとは思えない。

//ハンギョレ新聞社
ムン・ジョンイン|延世大学名誉教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1236871.html韓国語原文入力:2025-12-28 18:47
訳H.J

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