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臨津閣で抱き合った拉致被害者家族代表と坡州市長…昨年までは対北朝鮮ビラでもみ合い

登録:2025-07-09 08:49 修正:2025-07-09 09:16
拉北者被害家族連合会のチェ・ソンリョン代表(中央)、キム・ギョンイル坡州市長(左)、共に民主党のユン・フドク議員が8日、京畿道坡州市の臨津閣で記者会見を行い、北朝鮮に対するビラ散布の中止を宣言し、抱き合っている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 「昨年10月に坡州(パジュ)市長に言われた言葉で始めます。『代表、拉致された家族の情報を風船で(北朝鮮に)送ったりしないで、私と一緒に坡州市民や記者に配りましょう』。その言葉を聞いて私は泣きました。初めてです。公務員でそんな風に考えてくれた方は。ありがとうございます」

 北朝鮮拉致被害者の家族の団体である「拉北者被害家族連合会」のチェ・ソンリョン代表は8日、マイクを握り、京畿道坡州市の臨津閣(イムジンガク)で涙を浮かべながら語った。彼の帽子には「拉致被害者送還」という文言が赤い糸で刺繍(ししゅう)されていた。この日、キム・ギョンイル坡州市長、共に民主党のユン・フドク議員らと共に記者会見をおこなったチェ代表は、「私は今日付で、拉致された家族の情報を送るのを全面中止する」と宣言した。キム市長とユン議員はチェ代表に、繰り返し「感謝する」と述べた。3人は記者会見の終了後、手をぎゅっと握り合って明るく笑った。

 昨年までは想像しがたかった場面だ。昨年10月31日、臨津閣は戦場を彷彿(ほうふつ)とさせた。拉北者被害家族連合会は「いかなる方法を用いてでも(ビラを)平壌(ピョンヤン)に落とす」と述べてビラの公開散布を試みた。京畿道および坡州市と警察は、公務員と警察バスを動員してこれを阻止した。民間人出入統制区域(民統線)の50人あまりの住民も20台の農業用トラクターで臨津閣への進入路を遮断した。キム・ギョンイル坡州市長とチェ・ソンリョン代表は大声で罵り合った。公開散布は失敗に終わったが、拉北者被害家族連合会は今年4月27日に坡州の臨津閣、5月8日に江原道鉄原郡(チョルウォングン)、6月2日に坡州某所から非公開でビラを散布した。

昨年10月31日、拉北者被害家族連合会のチェ・ソンリョン代表(右)が京畿道坡州市の臨津閣で、北朝鮮に対するビラ散布を阻むキム・ギョンイル坡州市長と言い争っている/聯合ニュース

 両者の対立を解消したのは対話だった。チェ代表は先月24日にチョン・ドンヨン統一部長官候補から慰労の電話がかかってきたことを明かしつつ、「北朝鮮に対するビラ散布の中止を検討する」と述べた。「政府の問題解決の意志を信じてみる」ということだ。この日の記者会見でもチェ代表は、李在明(イ・ジェミョン)政権での南北対話の実現に対する期待を表明した。チェ代表はまた、「坡州市や坡州警察署などが問題解決のために努力する姿を見て、私たち拉致被害者家族が南北対話を引き寄せる役割を果たさなければと思った」と語った。

 手を取り合ったチェ代表とキム市長は、他団体にもビラ散布の中止を求めた。チェ代表は「他団体も李大統領が首脳会談や南北対話を早期に実現できるよう、ビラ散布の中止に同調してほしい」と述べた。キム・ギョンイル市長は「久しぶりに作り出された軍事境界線地域の平和と安定が恒久的に維持されるよう、北朝鮮に対するビラ散布を中止するようお願いする」と語った。

 拉致被害者の家族がビラ散布を中止したにもかかわらず、北韓同胞直接支援運動などの団体はビラ散布を続けるとの立場を表明している。ユン・フドク議員は「実際のところ(尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権時代の)統一部にはこれらの団体と対話しようという意志がなかった」とし、「いまは朝鮮半島の平和のために努力する政権になったので、彼らとコミュニケーションを取ったり訴えたりする役割は政府が担うだろう」と述べた。

イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/1206878.html韓国語原文入力:2025-07-08 15:16
訳D.K

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