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韓国政府が北朝鮮の応答がなくても「漂流漁船」の北朝鮮住民6人を送還するわけは

登録:2025-07-09 07:03 修正:2025-07-09 08:17
2019年6月15日、江原道三陟港で発見された北朝鮮の木船/聯合ニュース

 韓国政府が今年3月と5月、東海(トンヘ)・西海(ソヘ)の北方限界線(NLL)を越えて漂流してきた北朝鮮住民6人を北朝鮮に送還することにした。北朝鮮向け拡声器放送の中止に続き、北朝鮮住民の送還で断絶した南北関係の扉を開くための措置だ。ただし、2023年末から南北対話を遮断した北朝鮮は、韓国政府の北朝鮮住民送還方針にもかかわらず、反応を示していない。

 統一部は7日、「東海・西海の海上で救助された北朝鮮住民6人が全員北朝鮮への帰還を積極的に希望しているため、人道主義の見地から迅速かつ安全に彼らを送還するというのが韓国政府の立場」だと述べた。これに先立ち、3月7日に北朝鮮住民2人が西海上で漂流していたところ韓国軍によって救助されており、4人は5月27日に東海上で漂流していたところ救助された。彼らは政府合同調査で北朝鮮への帰還を望むと表明したが、北朝鮮がこれに応答せず、送還が実現しなかった。国連軍司令部は事件後、北朝鮮軍と連結された直通通信「ピンクフォン」を通じて韓国政府側の意思を伝えたが、北朝鮮は応答しなかった。

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が先月、国務会議で彼らの送還を指示したことで、急速に送還が現実味を帯びてきた。カン・ユジョン大統領室報道官はこの日、「北朝鮮住民が家族と生業のある故郷に帰ることを望むなら、人道主義に基づき、本人の意思に従うのが良いのではないか」という李大統領の発言を伝えた。通常、北朝鮮住民の送還は板門店(パンムンジョム)を通じて行われるが、国連軍司令部は北朝鮮と調整が行われていない情況で陸路を利用した送還には否定的な立場を示したという。これを受け、政府は早ければ今週、東海で住民たちが乗ってきた木船を修理し、6人全員を乗せて海上に送還することを決めたという。

 政府は、北朝鮮住民をあまり長く引き止めると、南北関係に不必要な誤解が生じかねないという点を懸念したものとみられる。李在明政権は先月11日、北朝鮮向け拡声器放送を中止し、北朝鮮にビラを送る団体に散布中止を求めるなど、南北関係の改善に力を入れている。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授はこの日、ハンギョレに「李在明政権は北朝鮮住民の送還に関してさまざまな意見を聴取したと聞いている」とし、「北朝鮮住民の送還を通じて北朝鮮の対南認識を確認し、肯定的な応答があれば、これをもとに通信チャンネルの復旧などに向け動き出すだろう」と語った。

 北朝鮮が直ちに積極的に呼応する可能性は低い。北朝鮮は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権時代の2023年12月、南北を「敵対的な二つの国」とし、韓国との対話を徹底的に遮断している。東国大学北韓学科のキム・ヨンヒョン教授は、「北朝鮮は李在明政権がどのように動くのか、しばらく静観すると思われる。我々は(肯定的なシグナルを)積み重ねていく必要がある」と述べた。

 北朝鮮住民たちはNLL付近から自力で航海し、北朝鮮に帰ることになるとみられる。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2017年5月、NLL線付近で発見された北朝鮮住民を海上で送還したが、当時も北朝鮮の応答がない中で住民たちが北朝鮮に帰った。

ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1206761.html韓国語原文入力: 2025-07-07 20:58
訳H.J

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