ハン・ドクス大統領権限代行首相が1日、6月3日に行われる大統領選挙に出馬するため辞任を表明した。野党「共に民主党」は、最高裁がイ・ジェミョン民主党大統領候補の公職選挙法違反疑惑事件を有罪の趣旨で破棄して差戻し、その1時間後に出た辞任宣言が「保守陣営のハン・ドクス大統領作り工作」だとみなし、再び権限代行となる予定だったチェ・サンモク副首相兼企画財政部長官の弾劾訴追案処理を試みた。ところが、弾劾案上程を控えチェ副首相が辞意を表明。国会本会議の弾劾案表決の途中でハン首相がこれを受理し、「投票不成立」で不発に終わった。「イ・ジェミョン援護」に乗り出す民主党の司法府への圧力も、最高潮に達するものとみられる。
ハン前首相はこの日、政府ソウル庁舎で国民に向けて談話を発表し、「これまで何が私の責任を果たす道なのか悩んできた」、「いま私が担っている重責を果たす道、その重責を下ろしてさらに大きな責任を負う道のうち、私たちが直面している危機を克服するために、職を下りることを最終決定した」と述べた。ハン前首相は2日午前10時に国会で大統領選への出馬を宣言する予定だ。大統領権限代行が大統領選に出馬するために辞任したのは憲政史上初めて。
ハン前首相の辞任は予告されたことだったが、まさに最高裁がイ・ジェミョン候補の選挙法違反疑惑を有罪と判断した1時間後に公式化されたという点に、民主党は激昂した。民主党のパク・チャンデ総括選挙対策委員長は、「(両事件は)八百長のようにみえる」と述べた。イ候補の司法リスクが再浮上した直後にハン前首相が大統領選出馬を意図して辞任したのは、イ候補の大統領選街道を妨げようとする保守陣営のシナリオだ、という疑念を強くにじませる発言だ。
これを受けて民主党は、早期大統領選を控えて逆風を懸念し1カ月ほど保留にしていたチェ・サンモク副首相の弾劾案の処理に急きょ乗り出した。この日の夜民主党は、国会法制司法委員会でチェ副首相の弾劾調査報告書を議決し、本会議での処理を試みた。議事日程を変更してチェ副首相弾劾案を処理しようという民主党の要求をウ・ウォンシク国会議長が受け入れると、与党議員たちは議長席に集まり「辞任しろ!ウ・ウォンシク!」、「犯罪者!イ・ジェミョン!」などのスローガンを叫んで激しく抗議した。このような反発の中でも無記名投票が行われたが、午後10時28分、チェ副首相が辞表を提出。ハン前首相がただちにこれを受理し、投票自体が取り止めとなった。名目のない大統領選出馬のために辞任したハン前首相が、任期終了(2日午前0時)の約1時間前に「最後の権限」を行使したのだ。ウ議長は投票途中の午後10時53分、「政府から企画財政部長官チェ・サンモクの免職が通知された。これにより弾劾訴追対象者がいないため、投票を中止する」とし、「この案件に対する投票の不成立を宣言する」と述べた。
民主党は2日午前に最高裁前で糾弾記者会見を開くなど、最高裁判決が大統領選挙介入であり「司法カルテルがイ・ジェミョンを殺そうとしたもの」(チョン・ヒョンヒ最高委員)という主張を展開し、全面戦を繰り広げるものとみられる。民主党はこの日、内乱事件の捜査を公正に行わなかったなどの理由で、シム・ウジョン検察総長の弾劾にも着手した。
一方、ハン前首相に続きチェ副首相も辞任し、大統領権限代行はイ・ジュホ副首相兼教育部長官が担うことになった。ハン前首相はチェ副首相の辞任案を受理した後、政府ソウル庁舎でイ副首相に会い、「安定した国政運営」を頼んだと首相室は明らかにした。