ハン・ドクス大統領権限代行首相の首相室の参謀たちが、辞職して大統領選挙陣営の準備をはじめるなど、ハン権限代行の大統領選への出馬が既成事実化しつつある。ハン権限代行は、韓米関税交渉の中心議題の一つである造船協力に関連する外交日程も近いうちにこなすことが伝えられているため、大統領権限代行職を利用して「通商の専門家」イメージを植え付けようとしていると疑われている。自身の評価の上昇を楽しむにとどまらず、事実上の「官権選挙運動」をおこなっていると強く批判されている。
ハン権限代行の側近で、2020年の総選挙で未来統合党(現与党「国民の力」の前身)の候補としてソウル陽川乙(ヤンチョン・ウル:選挙区名)から出馬したソン・ヨンテク首相秘書室長は、28日午前に辞表を提出した。元ジャーナリストのキム・スヘ公報室長と、国民の力の補佐官などを務めたパク・キョンウン政務室長も、ハン権限代行の辞任に合わせて辞職するとみられる。ハン権限代行は辞職する首相室の3人の室長を中心とする小規模な対策本部を設け、候補の一本化などに対応する計画だという。
ハン権限代行はこの日も、権限代行と大統領の役割の境界線上を綱渡りした。ハン代行は、この日の円仏教の行事で文化体育観光部のチャン・ミラン第2次官が代読した祝辞を通じて、「政府はさらに低いところで弱者と共に歩み、国民一人ひとりの声に耳を傾ける」と語った。英誌エコノミストがこの日公開したインタビューでは、相互関税問題について「米国との協力的交渉を通じて、両国がウィンウィン(win-win)になりうる解決法を見出せるだろう」と述べた。30日には、造船協力を協議するために訪韓する米海軍省のジョン・フェラン長官と会談するという。
その一方でハン権限代行は、追加補正予算案を審議した国会予算決算特別委員会には出席しなかった。野党「共に民主党」に所属するパク・チョン予決委員長は「(ハン権限代行は)してはならないことは必ずやるように思えるし、今後も続けるように思う」と批判した。
擁立論の提起から20日あまりの間、国内メディアや政界には何ら答えずに、次々と「出馬準備」を進めてきたハン権限代行は、29日の国務会議で、大統領指名枠の憲法裁判官候補を権限代行が指名できないようにする憲法裁判所法の改正案に再議要求権を行使する方針だ。続いて30日のフェラン長官との会談後、来月1日ごろに首相職を辞し、大統領選への出馬を宣言するとの予想が示されている。
6・3大統領選挙を36日後に控えてハン権限代行が示している態度について、民主党のチョ・スンネ首席報道担当は、「公職選挙法違反の素地がある」と批判しつつ、「(公務員の)政治中立義務違反と官権選挙疑惑に答えよ」と述べた。選挙法9条は「公務員は選挙に不当な影響力の行使や、選挙結果に影響を及ぼす行為をしてはならない」と明示している。