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布告令にない行政安全部長官の「ハンギョレ断電・断水」、尹大統領の事前指示だったか

登録:2025-01-14 06:15 修正:2025-01-14 08:22
12・3当日の日程取り消し、国防部長官と電話連絡
昨年10月21日午前、ソウル西大門区の警察庁で開かれた「79周年警察の日」記念式典で、尹錫悦大統領とチョ・ジホ警察庁長(中央)、イ・サンミン行政安全部長官(左)が国民儀礼を行っている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「沖岩(尹大統領の出身高校)派」のイ・サンミン前行政安全部長官が12・3非常戒厳宣言直後、ハンギョレなどの主要報道機関に対し電気と水の供給を断つようホ・ソッコン消防庁長に指示した事実が明らかになった。違憲・違法な戒厳令にもない報道機関に対する断電・断水措置を先制的に取ったのだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領から戒厳前に直接指示を受けた可能性が高いとみられている。戒厳法によって戒厳宣布を大統領に建議できる国務委員は、キム・ヨンヒョン元国防部長官(拘束起訴)とイ・サンミン前行安部長官の2人だ。

 13日午後、国会行政安全委員会全体会議で、野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員はホ・ソッコン消防庁長に「戒厳宣言直後、イ・サンミン長官からハンギョレや京郷新聞、MBCに対する断電・断水の指示を受けたか」を尋ねた。

 度重なる質問にも「覚えていない」と曖昧な答弁を続けたホ庁長は、「偽証罪と内乱の疑いで捜査を受ける可能性もある」とユン議員が圧迫すると、「イ・サンミン長官から(ハンギョレなど)いくつかの報道機関に対し、警察庁から断電・断水の要請があれば協力せよと電話で言われた」と認めた。

 ホ庁長は、断電・断水は消防業務ではないため、消防庁次長と議論しただけで実行には移さなかったと答えた。しかし、イ・サンミン前長官の違法な指示を1カ月以上隠して国会に報告しなかったことから、実際にはどこまで指示が下されたのか、消防庁や韓国電力、水道事業所などに対するさらなる調査が必要な状況だ。

 イ前長官は先月3日、尹大統領が非常戒厳を宣布する前に緊急招集した国務会議に出席した。戒厳布告令にはハンギョレなどに対する断電・断水措置のような内容はない。イ前長官がホ庁長に断電・断水を指示した時点が戒厳宣布直後だったことから、国務会議以前にこのような事実を尹大統領から伝えられた可能性がある。

 尹大統領は、布告令に盛り込めなかった超法規的な指示は、関連機関長を別途呼んで伝えた。実際、イ前長官の指揮を受ける警察組織は戒厳宣布前に尹大統領から統制すべき報道機関リストを渡された。

 戒厳宣布当日の先月3日午後、チョ・ジホ警察庁長(拘束起訴)とキム・ボンシク・ソウル庁長(拘束起訴)をソウル三清洞(サムチョンドン)の安全家屋に呼び、「統制すべき機関」10カ所余りのリストを渡した。これに先立ち、チョ・ジホ前庁長の弁護人は「(制圧対象の)報道機関はMBC以外にもさらにあった。敏感な内容もあるため、明らかにはできない」と述べた。このリストにハンギョレと「京郷新聞」が含まれていたものとみられる。

 特に、戒厳宣布前後のイ前長官の足取りは内乱に深く介入したのではないかという疑念を抱かせた。

 戒厳宣布当日の先月3日、蔚山(ウルサン)で開かれた中央地方政策協議会に出席したイ前長官は、大統領との面会を理由に予定されていた日程を突然取り消し、午後5時40分頃、ソウル行きKTXに乗った。イ前長官は約20分後、内乱の重要任務従事の疑いが持たれているキム・ヨンヒョン前国防長官と電話で話をした。キム・ヨンヒョン前長官とイ・サンミン前長官の2人は沖岩高校の先輩と後輩の間柄だ。

 イ前長官は以前国会で「(12月3日)昼頃に大統領と日程があるかも知れないという話を聞き、午後9時に予約した飛行機のチケットを取り消し、列車でソウルに移動した」と述べたことがあるが、通話対象がキム前長官だったことについては口をつぐんだ。

 戒厳解除後のイ前長官の足取りも内乱事態介入疑惑を深めるものだ。イ前長官は先月5日、国会に出席し「非常戒厳は高度な統治行為」、「大統領は憲法に規定された自身の権限を行使した」「国会をまともに封鎖していたら、(解除議決が)可能だっただろうか」、「国会の権限を抑えるつもりだったら、十分できた」とし、尹大統領の違憲・違法な戒厳宣布を積極的に擁護した。その一方で、主要報道機関の断電・断水措置のような自身が下した違法な指示についても何も言及しなかった。

 また、12・3非常戒厳解除当日の先月4日夜には、三清洞の大統領の安全家屋でパク・ソンジェ法務部長官、キム・ジュヒョン大統領室民政首席、イ・ワンギュ法制処長と別途会合している。安全家屋会合の目的については、内乱事態に広がった戒厳宣言に対する法的対応について話し合ったのではないか、という疑惑が持ち上がった。

 イ前長官は、国会に弾劾訴追案が報告された翌日の先月8日に辞意を表明し、尹大統領は直ちに免職を裁可した。イ前長官は先月16日、警察特別捜査団に容疑者として出頭し、取り調べを受けた。現在、イ前長官の捜査は高位公職者犯罪捜査処が受け持っている。先月18日、検察は尹大統領とイ前長官の捜査を公捜処に移管した。

キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1177673.html韓国語原文入力: 2025-01-13 22:09
訳H.J

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