「死んだ子の首に手の跡がついていました。なぜ首を絞めたのでしょうか。殺そうとして絞めたんじゃないですか。(……)それなのに、加害者に傷害致死が適用され、加害者がいつ出所するか分からず、(報復の恐れに)引っ越す準備をしています」
慶尚南道巨済市(コジェシ)のデートDVによる死亡事件の被害者、イ・ヒョジョンさんの母親は7日午後、「女性の党」が主催した記者懇談会に出席し、このように語った。昨年、交際していた被害者を監禁し強姦・暴行したいわゆる「バリカン暴行男」事件、裁判所の接近禁止命令を破って昔の恋人を殺害した「仁川(インチョン)ストーカー」事件などデートDV犯罪の被害者家族は、この日女性の党と共に被害者保護と加害者処罰を強化する法導入と制度改善を求めた。
彼らはまず、デートDVによる殺人・死亡事件の場合、加害者が暴力を繰り返す傾向が明確で、その罪質が重いにもかかわらず、殺人罪に比べて軽微に扱われていると指摘した。女性の党は、デートDV犯罪の履歴がある加害者が被害者を殺害した場合や死亡または重い疾患に至らせた場合、加重処罰条項などを盛り込んだデートDV処罰法が必要だと主張した。
デートDVによって被害者が死亡した巨済事件の加害者は傷害致死罪(3年以上の懲役)などで裁判に付されたが、殺人罪(死刑・無期懲役または5年以上懲役)よりも法定刑が軽い。韓国女性弁護士会のイ・ギョンハ人権理事は「2013年の『漆谷(チルゴク)児童虐待死亡事件』の加害者は児童を継続的に暴行して死に至らせたにもかかわらず、『殺人の故意』がないとして傷害致死罪で懲役15年を宣告され、国民の怒りを買った」とし、「翌年、殺人罪と類似した法定刑を規定した児童虐待致死罪が新設された」と説明した。
それと共に、デートDVによる殺人に突き進む前に、犯罪に対する処罰を強化する必要性も提起された。英国の場合、単純暴行罪は6カ月以下の懲役刑に処するが、交際相手や配偶者など親密な関係の加害者が暴力を行使するという恐怖心を与え、日常生活に支障を生じさせる事件は、最大懲役5年まで処罰できるようにしている。
親密な関係で発生した暴力事件を捜査する過程で、被害の危険度を測定する指標が実際の危険を反映するのには不十分という指摘も出た。例えば、家庭内暴力の通報を受けて出動した警察が活用する緊急臨時措置の判断調査表には、被害者に明確な外傷があるか、現場に破片や什器類の破損などがあるかなどを調べるようになっている。しかし、重い犯罪の兆候として知られている首を絞められた被害の経験などの項目は抜けている。女性の党政策委員会のイ・イェウン議長は「首絞めは外傷がない場合が多いが、殺人につながることもある行為」だとし、「『首を絞められた』経験に関する質問項目を(被害者保護の可否を判断する指標に)追加する必要がある」と述べた。実際、巨済のデートDVやバリカン暴行男事件の被害者たちは、首を絞められたことがあった。
デートDVの多数に適用される刑法上の暴行罪は、被害者が処罰を望まなければ起訴できない反意思不罰罪だが、被害者が報復の恐れなどで処罰の意思を明らかにしにくいという盲点がある。被害者が処罰を望まないという理由でデートDVの加害者を釈放する慣行も改善が必要な理由だ。
米国は女性暴力防止法(家庭内暴力およびデートDV犯罪に適用)を通じて、警察が被害者に加害者処罰を望むかを最初から聞かず、被害者の意思にかかわらず逮捕・起訴が行われる。また、デートDV事件で誰がより大きな加害をしたのかを区分せず、相互暴行の疑いで捜査する慣行を正すために、国際警察長協会(IACP)が提示した「主な加害者の識別チェックリスト」の導入も求めた。巨済デートDV死亡事件の被害者イ・ヒョジョンさんの父親は「被害者保護のために最も必要なのは警察の積極的な介入と関心」だと語った。
現在、巨済デートDV死亡事件とバリカン暴行男事件、仁川ストーカー殺害事件の加害者は全員裁判にかけられている状態だ。だが、被害者家族は裁判の過程が被害回復とは程遠いと訴えた。バリカン事件の被害者の父親は「娘は23錠の薬を飲まなければ箸も使えないほどぶるぶる震えている。それでも加害者側の要求で裁判に出席し、(犯行原因を被害者のせいにするなどの)2次加害性のある質問を受けて気絶したこともある。裁判所がこのような質問を事前に防ぐべきではないか」と語った。昨年7月、被害者は5日間監禁され、強姦、暴行を受け、バリカンで髪の毛を刈り上げられる苛酷行為に遭った。
仁川ストーカー殺人事件の遺族も「被害者はただ別れようと言っただけだ。しかし捜査と裁判の全般的な過程で、被害者から犯罪の原因を探しだして責任を問おうとしている」と指摘した。