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居直りの尹大統領…「弾劾民意」に火をつける

登録:2024-07-08 02:06 修正:2024-07-08 11:47
[ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 
 
「朴槿恵弾劾」は国民的熱望で 
国会議決後、憲法裁で罷免決定 
殉職海兵隊員特検法に居直りの態度 
尹大統領に対する怒り、さらに高まる
尹錫悦大統領が7月4日、仁川の南洞体育館で開催された韓国自由総連盟創立70周年記念式に、与党「国民の力」代表候補のハン・ドンフン氏、ウォン・ヒリョン氏、ナ・ギョンウォン氏と共に出席している/聯合ニュース

 国会「国民同意請願」で同意者を募っている「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案の即刻発議要請に関する請願」の同意者が、3日に100万人を超えました。請願に同意するには忍耐が必要です。サーバーの容量が不足しているため、かなり待たなければなりません。国会議長がサーバー増設を指示しましたが、少し時間がかかりそうです。

 今回の請願のおかげで、国会の国民同意請願制度があることを初めて知った人もかなり多いそうです。請願は6月20日にはじまり、7月20日に終わります。最終的に何人が同意するのかが気になります。7月20日が過ぎれば国会法制司法委員会が、請願小委員会での審議などの手続きを経てから、本会議へ付すかどうかを決めるでしょう。

■「職務上の違憲、違法」が基本要件

 しかし、大統領の弾劾訴追は請願だけでできるものではありません。弾劾訴追は国民の代表で構成される国会の固有の権限です。大統領の弾劾訴追案の発議には国会在籍議員の過半数が必要です。大統領弾劾訴追案の議決では、在籍議員の3分の2以上が賛成しなければなりません。大統領以外の弾劾訴追は、在籍議員の3分の1以上の発議と在籍議員の過半数の賛成で可決されます。現在の各党の議席数は共に民主党170、国民の力108、祖国革新党12、改革新党3、進歩党3、基本所得党1、社会民主党1、新しい未来1、無所属1(国会議長)です。与党「国民の力」が一丸となって反対すれば、尹錫悦大統領の弾劾訴追は不可能です。

 私たちには大統領弾劾はかなりなじみ深いものです。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の弾劾、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾を経験してきたからです。しかし弾劾は本来、非常に複雑で難しい制度です。弾劾は、一般的な司法手続きや懲戒手続きによって訴追または懲戒することが難しい行政府の高位の公務員や裁判官などのような身分の保障されている公務員を、議会が訴追して罷免する手続きです。弾劾の理由は「職務執行において憲法や法律に違反した時」(憲法第65条第1項)に限られます。弾劾の対象となる公職者は憲法で定められています。「大統領、首相、国務委員、各省の長、憲法裁判所の裁判官、裁判官、中央選挙管理委員会の委員、監査院長、監査委員、その他、法律の定める公務員」です。「その他、法律の定める公務員」は、例えば検事(検察庁法)、警察庁長(警察法)、放送通信委員長(放送通信委員会法)、公捜処の処長・次長・検事(公捜処法)などです。弾劾訴追は国会の権限ですが、弾劾審判の最終権限は憲法裁判所にあります。過去の憲法では、弾劾裁判所(1948年)、弾劾審判委員会(1963年)、憲法委員会(1972年)などが権限を持っていました。

 弾劾は政府樹立以来、長きにわたって有名無実の制度でした。大統領が国会を実質的に支配していた独裁時代には、国会が弾劾訴追を案件とすることができなかったからです。国会に弾劾訴追が案件として上程され、審議されるようになったのは、1985年の第12代総選挙以降です。新韓民主党に追い風が吹き、国会で全276議席中128議席(46%)を野党が確保しました。1985年9月、最高裁のユ・テフン長官が時局事犯に無罪を宣告した判事を左遷するなどの「裁判所人事問題」が起こりました。大韓弁護士協会は最高裁長官の辞任を求める声明を発表しました。10月18日、102人の新韓民主党の議員がユ・テフン長官の弾劾訴追案を発議しました。10月21日の国会本会議で無記名投票が行われました。総投票数247、可95、不146、棄権5、無効1で否決されました。

■可決に必要な票数を34票上回った朴槿恵弾劾案

 その後、いくつかの弾劾訴追案が発議されましたが、あれやこれやの理由で廃棄されました。可決であれ否決であれ、国会本会議で議決にまで至ったケースは多くはありませんでした。金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の1994年12月には、キム・ドオン検察総長の弾劾訴追案が国会本会議で否決されています。金大中(キム・デジュン)政権時代の1999年4月には、キム・テジョン検察総長の弾劾訴追案が否決されています。

 そしてついに2004年3月12日、盧武鉉大統領の弾劾訴追案が国会本会議で可決されました。韓国の国会で史上初めて可決された弾劾訴追案の対象が現職大統領だったというのは、実に驚くべきことです。総投票数195、可193、否2でした。投票時の在籍議員は271人でした。可決に必要な数は181票でした。2016年12月9日には朴槿恵大統領の弾劾訴追案が国会で可決されました。総投票数299、可234、否56、棄権2、無効7でした。在籍議員数は300人で、可決に必要な数は200票でした。

 2020年代に入り、国会で弾劾訴追が相次ぎました。2020年7月にはチュ・ミエ法務部長官の弾劾訴追案が本会議で否決されました。2021年2月のイム・ソングン判事の弾劾訴追案は可決されました。憲法裁判所は却下しました。2023年2月にはイ・サンミン行政安全部長官の弾劾訴追案が可決されました。憲法裁判所は棄却しました。2023年9月にはアン・ドンワン検事の弾劾訴追案が可決されました。憲法裁判所は棄却しました。2023年11月にはソン・ジュンソン、イ・ジョンソプ両検事の弾劾訴追案が可決されました。憲法裁判所の審判手続きが進められています。そして民主党の議員が発議したカン・ベクシン、キム・ヨンチョル、パク・サンヨン、オム・ヒジュンの各検事の弾劾訴追案が今月2日に法司委に付されました。法司委の調査を経てから本会議で議決がなされるでしょう。

 結局、これまでの国会での弾劾訴追と憲法裁判所での弾劾審判で実際に公職から追われたのは、朴槿恵大統領が唯一です。

■川怒れば船覆す

 尹大統領の弾劾はどうなるでしょうか。先ほど述べましたが、大統領の弾劾訴追案は必要な議員の数が足りないため、国会での可決は非常に難しいとみられます。野党も慎重な態度を続けています。尹大統領としては幸いなことです。

 祖国革新党のチョ・グク前代表は2日の平和放送ラジオの「キム・ジュニルのニュース共感」で、「弾劾へと向かう列車を始動させるための燃料がまだ少し足りない。大統領夫妻の違法行為を立証する具体的な根拠がもう少し出てこなければならない」と述べました。

 民主党のパク・チャンデ代表職務代行兼院内代表は4日の政策調整会議で、「野火のように広がる怒りの民意を重く受け止よ」としつつ、「今回の海兵隊員特検法を受け入れるかどうかが、尹錫悦政権の国政基調の変化を計る基準となるだろう」と述べました。警告のレベルにとどまっているのです。

 みなさんは、尹大統領の弾劾は果たして可能だと思いますか。いや、質問を変えましょう。みなさんは、憲法裁判所が盧武鉉大統領の弾劾は棄却し、朴槿恵大統領の弾劾は認めたのは、なぜだと思いますか。法律家たちは、二人の「憲法違反や法律違反」の程度の差がその理由だと説明するでしょう。

 私はそうは思いません。最高位職の政治家であり選出職の公職者である大統領の弾劾は、違憲や違法の程度よりも、民意のゆくえに左右されると私は思います。2004年3月の盧武鉉大統領の弾劾は、野党だったハンナラ党と新千年民主党が多くの国民の反対を押し切って推し進めました。ハンナラ党と新千年民主党は弾劾の逆風で2004年の第17代総選挙で惨敗しました。憲法裁判所は5月14日、棄却決定を下しました。

2017年3月10日午前、ソウル鍾路区斎洞の憲法裁判所の大審判廷で、憲法裁判所のイ・ジョンミ所長権限代行が朴槿恵大統領弾劾審判についての決定を読み上げている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 一方、2016~2017年の朴槿恵大統領の弾劾は、国政壟断事態に怒った多くの国民が賛成しました。12月9日の国会弾劾訴追の賛成票234は、在籍議員300人の78%でした。当時の世論調査の弾劾賛成とほぼ同じ割合でした。憲法裁判所は2017年3月10日、8人の裁判官の全員一致で朴槿恵大統領を罷免しました。

 大統領の弾劾も、結局は民意にかかっているのです。尹大統領はこうした歴史から教訓を得るべきでしょう。にもかかわらず、近ごろの尹大統領と大統領室の人々の発言と態度を見ると、そのつもりは全くないようです。チョン・ジンソク秘書室長は今月1日の国会運営委員会で、「(海兵隊C上等兵殉職事件の捜査外圧疑惑は)国防部長官の正当な移牒保留の指示命令にパク・チョンフン捜査団長が逆らった抗命事件がその実体であり本質」だと述べました。国民の常識とかけ離れた認識です。尹大統領は2日の国務会議で、「対立と対決の政治が繰り返されれば、我々の前にある挑戦を克服することはできない。未来に向かって進むこともできない」と述べています。政局の混乱に自分は何の責任もないという論理です。4日にC上等兵特検法が国会本会議を通過した直後、大統領室の高位関係者は、「違憲に違憲を重ねた反憲法的特検法へと逆戻りした。憲政史に恥ずべき憲法蹂躙(じゅうりん)を嘆く」と述べました。まさに居直りの態度です。尹大統領と大統領室の参謀たちは、国民の怒りにガソリンを撒いているのです。大変なことです。

 不吉な流れを察知したいわゆる保守論客たちが発言を開始しています。朝鮮日報のヤン・サンフン主筆は今月4日付の同紙に、「『2016弾劾』時に似た気になる政治風景」と題するコラムを書いています。総選挙の敗北による少数与党国会、大統領の支持率の低さ、国政の陰の実力者の波紋、与党の分裂の兆しなどが2016年と似ているというのです。そうでしょうか。

7月4日付の朝鮮日報に掲載されたヤン・サンフン主筆のコラム//ハンギョレ新聞社

 まとめます。朴槿恵大統領の弾劾訴追直後の2016年末、教授新聞はその年の四字熟語として「君舟民水」を選定しました。「民は水、王は船。水の力は船を浮かばせるが、川の水が怒れば船をひっくり返すこともできる」という意味です。尹大統領が今まさに深く肝に銘じるべき言葉だと思います。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1147990.html韓国語原文入力:2024-07-07 07:30
訳D.K

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