北朝鮮は、これまで最大の祝日として重視してきた故金日成(キム・イルソン)主席の誕生日「太陽節」の名称の廃棄を外部にも通知したという。中国の北京に本社を置き、英国人が運営する北朝鮮観光専門旅行会社「高麗ツアー」は25日、「北朝鮮のパートナーから『太陽節』の名称が段階的に廃棄されるという通知を受けた」とし、「北朝鮮では『太陽節』がもう使われない」というお知らせを自社のウェブサイトに載せた。
高麗ツアーは「これは北朝鮮の国営メディアでは発表されていないが、このような段階的な削除は通常発表されない」と説明した。また、「北朝鮮のパートナーにこの名称がもう使われないことを何度も確認した」としたうえで、「この変更事項を我々のウェブサイトに反映する」と説明した。
北朝鮮は1997年、金日成主席の誕生日(4月15日)を太陽節に制定し、記念日前後に太陽節関連の各種文化行事を開くなどで重視してきた。「金日成同志が主体の太陽として高くそびえた1912年を元年とし、主体の年号を使う。金日成同志が誕生した民族最大の祝日である4月15日を太陽節に制定する」(1997年7月8日、北朝鮮党中央委員会、党中央軍事委員会、国防委員会、中央人民委員会、政務院が共同発表した「金日成同志の革命生涯と不滅の業績を末永く輝かせることについて」決定書)
しかし、今年は2月17日を最後に、2カ月間北朝鮮の官営メディアでは「太陽節」という言葉が使われておらず、太陽節当日の15日に記事1件が登場しただけで、北朝鮮が意図的に太陽節の名称を変更するか、削除しようとしているという分析が出た。
韓国の統一部当局者も16日、「今年、金日成主席の誕生日を迎えて行われたさまざまな状況から、名称が変わったと暫定的に判断している」とし、北朝鮮が太陽節の代わりに「4・15」と表現していることについて、「異例のことだ」と述べた。統一部は「ただ、このような動向が続くかどうかは来年の光明星節(2月16日・金正日総書記の誕生日)まで見守る必要がある」とし、慎重な姿勢を見せた。
北朝鮮で太陽節の名称が変更された意味については、まず、金日成主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記に対する「先代の偶像化」から脱し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の「独り立ち」を試みているという分析が出た。
また一角では、2019年2月にハノイ朝米首脳会談が失敗した衝撃の中で、新しい活路を模索してきた金正恩委員長が、従来の非現実的で神秘的な首領の偶像化から一部脱する統治を試みているシグナルという分析も示された。キム・チャンス前コリア研究院長は「時事IN」(4月30日付)への寄稿で「金正恩委員長はハノイ朝米首脳会談の失敗から抜け出し、新しい活路を模索してきた」とし、「正攻法として軍事力を強化し、人民大衆第一主義を掲げ、住民に親しみやすい指導者像作りに取り組んできた」と分析した。住民に親しみやすい指導者像作りの一環として、北朝鮮が過度な偶像化の象徴である太陽節という名称の使用を減らし、変更を進めているという分析だ。
ただし、キム・チャンス前院長はこれが「金日成主席と金正日委員長を否定する『金正恩の独り立ち』とみることはできない」と強調する。金委員長が首領制社会主義という北朝鮮統治のプラットフォームを離れ独り立ちするのは不可能であり、「ハノイ・ノーディール」以降に変わった情勢の中で、必要に応じて従来の首領神秘化から一部抜け出した「新たなアプリケーションを作って北朝鮮の首領制社会主義を作動」させようとしているということだ。