イ・ファヨン元京畿道平和副知事が暴露した検察によるいわゆる「酒席懐柔」問題が波紋を広げている。問題の核心は、検察が野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表をサンバンウルによる違法な北朝鮮送金事件に結び付けるために、検察庁舎内でサンバンウルのキム・ソンテ元会長らが共にする酒席まで準備して偽りの供述をするようイ元副知事を懐柔したかどうかだ。
イ・ファヨン「検察庁で酒を飲んだ」
今月4日、裁判に出廷したイ元副知事は、弁護人による尋問の過程で「(水原地検の)1313号検事室前の『倉庫』と書かれている部屋にキム・ソンテ、パン・ヨンチョル(元サンバンウル副会長)らと集まってセミナーをやった。サンバンウルの社員が外部から食べ物も持ってきてくれて、酒も一度飲んだ記憶がある」と陳述した。
これは、自身とイ・ジェミョン代表ともにサンバンウルの対北朝鮮送金とは関係がないと述べていたイ元副知事が、昨年6月の検察による取り調べで「イ・ジェミョン代表に(サンバンウルの対北朝鮮送金を)報告したと思う」という趣旨の発言を行うという、突然の供述変更の背景を説明する際に飛び出した話だ。イ元副知事はイ代表とキム元会長をつなぐ唯一の人物だった。イ元副知事側の主張は、検察が「サンバンウル対北朝鮮送金」事件にイ代表が関与したという証拠を見つけられなかったため、イ元副知事を懐柔して供述をでっち上げようとしたというもの。
このような内容は、イ元副知事の「獄中ノート」にも一部が記されている。昨年12月20日に公開された日記形式のノートには、「私がP検事に取り調べを受ける時はキム・ソンテ、パン・ヨンチョル、サンバンウルの2~3人の社員が検事室前の『倉庫』と書かれた空間に集まっていた。日曜日など食事を配達してもらって食べなければならない時は、サンバンウルの社員が外部から買って来ているようだった。ユッケビビンパ、サーモン料理などを食べた」と記されている。ただし、このノートには「酒を飲んだ」との内容はない。
■反論、再反論、再再反論
水原地検は5日に続き17日にもA4用紙3枚分の声明を発表し、明白な虚偽だと反論した。検察は「イ・ファヨン被告の検察による取り調べに立ち会った弁護士、38人の警護刑務官の全員、対面調査を受けたキム・ソンテ、パン・ヨンチョルらサンバンウル関係者、食事の注文や出廷の記録などを確認した結果、検察庁舎に酒は持ち込まれてはおらず、飲酒は物理的に不可能だ」と一蹴した。
しかしイ元副知事側のキム・グァンミン弁護士は18日、検察の反論にA4用紙10枚で再反論した。「酒席懐柔」の時期を昨年7月3日と暫定的に特定したうえで、イ元副知事が集まりの場所だとして描いたという1313号室の見取り図を公開した。キム弁護士は、「(当局が)在所者の出廷記録、水原地検の出入り記録、刑務官の出廷日誌さえ公開すれば真実が明らかになる事案」だとし、強い自信を示した。
検察も黙っていなかった。この日午後、イ元副知事の昨年6月末~7月初めの護送計画書と出廷日誌のコピーの一部を公開して反撃したのだ。検察は「(酒席のあった日として)有力だという7月3日には、(イ元副知事は)午後5時5分に取り調べを終えて検事室を出て、午後5時15分に水原拘置所に向けて出発している」とし、「虚偽の主張を続ければ、強い法的措置を取る」と重ねて述べた。
■捜査検事の「在所者への便宜提供」前歴が俎上に
事件の捜査を指揮した検事の前歴も俎上(そじょう)に載せられている。イ元副知事が「酒宴懐柔」が起きたと主張する時期に水原地検第2次長検事として捜査を指揮していたキム・ヨンイル大邱(テグ)地検西部支庁長が、過去に受刑者を検事室に呼んで便宜を提供し、懲戒処分を受けていたことが確認されたのだ。キム支庁長は2018年に、「第2のチョ・ヒパル」と呼ばれたマルチ商法詐欺犯キム・ソンフン元IDSホールディングス代表を検事室に呼び、外部と電話させるなどの便宜を提供した、との理由で懲戒処分を受けている。
民主党の検察独裁政治弾圧対策委員会はこの日、水原地検前で記者会見を行い、「(イ元副知事の主張が)事実なら捜査壟断であり、重大犯罪」だとし、「検察に自ら真実を明らかにしようとする意志すら見えなければ国政調査、特検まで推進し、必ず真実を明らかにする」と述べた。