野党「共に民主党」は、イ・ジェミョン代表を捜査している水原(スウォン)地検のイ・ジョンソプ第2次長検事の弾劾訴追案を9日に発議したのに続き、10日には同検事を高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に告発した。しかし、党内外からは「防弾(自分の身を守るための)、報復性の弾劾・告発」だとする批判を自ら招いていると指摘されている。
パク・ソンジュン報道担当は10日の最高委員会議後、記者団に対し、「(民主党は先月18日に)最高検察庁にイ次長検事を告発したが、何の措置もなかった」とし、「不正・犯罪検事を容認してはならないと考え、公捜処にイ検事を告発することにした」と述べた。
民主党は前日の国会本会議で、イ次長検事の弾劾訴追案を、イ・ドングァン放送通信委員会委員長と大邱(テグ)高等検察庁のソン・ジュンソン次長検事の弾劾訴追案とともに報告したが、国民の力が予告していたフィリバスター(議事進行を妨害するための合法的な無制限討論)を撤回したため、表決は行われなかった。民主党は30日の本会議で、イ検事らの弾劾訴追案を改めて推進する方針だ。
しかしイ次長検事はイ・ジェミョン代表の捜査を総括していることから、批判が起きている。「防弾、報復弾劾・告発」だという批判に口実を与えたということだ。弾劾訴追案が可決されれば、当事者は憲法裁判所によって審判がなされるまで職務が停止される。イ次長検事は「サンバンウル対北朝鮮送金代納」疑惑や「京畿道庁法人カード私的流用黙認」疑惑などのイ・ジェミョン代表に関する捜査を担当している。
168議席の巨大野党が弾劾を推進すべきであるほど重大な問題なのかとの指摘もある。民主党が弾劾訴追案で指摘したイ次長検事の不正・犯罪疑惑は、妻の実家の雇用人による犯罪記録照会▽スキー場リゾート利用請託▽妻の実家が経営するゴルフ場の不正ブッキング▽偽装転入などだ。これは今年9月に民主党が弾劾訴追した水原地検安養(アニャン)支庁のアン・ドンワン次長検事の「ソウル市公務員スパイでっち上げ事件被害者に対する報復起訴疑惑」や、今回イ次長検事と共に弾劾対象となった大邱高等検察庁のソン・ジュンソン次長検事の「告発教唆疑惑」に比べ、重大さは低い。
高麗大学法学専門大学院のチャン・ヨンス教授は「提起された疑惑が憲法裁判所の一貫した判例に符合するのか疑問であるし、似たような過ちを犯した人々が数多くいる中で、なぜあえてこの人なのかが説得できずにいる」とし、「弾劾訴追案が発議されれば公職遂行が停止されるという点で、捜査妨害の疑いが生じざるを得ない」と述べた。
民主党内部からも反省の声があがっている。ある再選議員は「国会の弾劾というのは重みがある。問題があるからといってすべては弾劾できない」とし「余計な誤解も与えかねない。望ましいもののようにはみえない」と述べた。ある重鎮議員は「個人的報復と映りうる弾劾で、民主党は(与党などに)批判の口実を与えた。再議論が必要だ」と述べた。9月のイ・ジェミョン代表の拘束令状棄却でようやく司法リスクの泥沼から抜け出したのに、今回の件で再び批判を自ら招いたという視線もある。
国民の力は強く批判した。
ユン・ジェオク院内代表は国会院内対策会議で、「政争に目がくらんだ民主党は、弾劾訴追権を悪用して政局の混乱を招いている」とし、「(イ・ジョンソプ次長検事に対する)報復、圧力であり、露骨な司法妨害行為だ。(民主党に)一抹の良心があるのなら、到底あり得ないこと」だと強く批判した。