国防部長官時代に海兵隊のC上等兵の殉職事件の捜査に圧力をかけた疑いが持たれているイ・ジョンソプ駐オーストラリア大使が、出国直前の高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の調査で、疑惑が持ち上がった後に新たに開通した携帯電話を提出していたことが分かった。
法務部は「公捜処に自ら出頭して調査を受け、証拠(携帯電話)を任意提出」したことを、イ大使の出国禁止の解除理由の一つとしてあげていた。野党「共に民主党」はイ大使の出国過程全般の疑惑を解明するため、特別検察官法案を党の方針として国会に提出した。
12日のハンギョレの取材の結果、イ大使は7日に公捜処に出頭して調査を受けた際に、疑惑に対する自身の立場を記した陳述書と携帯電話を任意提出した。しかしイ大使が提出した携帯電話は、捜査外圧にかかわる出来事があったと疑われる昨年8月初め以降に使いはじめた新しい携帯電話だった。
公捜処は12日、再度イ大使に出頭を求めて調査を行う考えを重ねて明らかにした。公捜処の関係者は政府果川(クァチョン)庁舎で行われた定例ブリーフィングで、「(7日は)4時間の調査だったので捜査チームが望むだけの調査が十分になされなかった」とし、「さらなる調査が絶対に必要だとの立場であり、『呼出し調査が原則』という捜査チームの立場は確固たるものだ」と語った。さらなる呼出し調査の時期についてはコメントを避けた。
民主党は、イ大使の「逃避的な出国」過程で違法行為があったとの疑惑を捜査するため、特検法案を国会に提出した。民主党の院内首席副代表を務めるパク・チュミン議員は午前、国会議案課に「イ・ジョンソプ前国防部長官の逃避的な出国過程での違法行為の真相究明のための特検法案」を提出後、「イ前長官の逃避的な海外出国に関与したとみられる大統領室、法務部、外交部に対する捜査を主な内容とする」と説明した。ただし与党が反対した場合は、特検法は第21代国会での可決はなされず、廃案となる可能性が高い。パク議員は「特検法の可決が目標。総選挙後も(5月29日まで)国会の稼動期間があるので、それまで最善の努力を尽くす」とし、「大統領が直接の疑惑の対象者であるだけに、特検法拒否行為は自制すべきだ」と述べた。民主党は前日、イ前長官の出国に責任のあるチョ・テヨル(外交部)、パク・ソンジェ(法務部)両長官の弾劾にも取り組むことを表明している。
与党「国民の力」のユン・ジェオク院内代表は、「民主党は特検法を乱発している」と批判した。ユン院内代表は記者団に「C上等兵に関する事件は特検の対象ではないと一貫して主張してきたし、イ大使も捜査が行われればいつでも出頭するとの立場」だと述べた。そして「公捜処がその前にすでに告発を受けて調査をすればよかったのに、調査もせずに出国禁止しておきながら出国禁止を延長し続けてきただけだったことは理解できない措置だと考える」と主張した。大統領室の関係者は「民主党が検察を信じられないから発足させた公捜処を信じられず、特検をやろうという皮肉な状況だ」とし、「望む答えを聞けなければ特検を乱発するというのは消耗であり、浪費だと考える」と述べた。