本文に移動

[記者手帳]「被疑者」前韓国国防相の逃避赴任…「オーストラリア政府があざ笑う」

登録:2024-03-12 01:33 修正:2024-03-12 07:31
信任状授与式もなく密かに出国 
ざわつく外交部…「国の威信が低下」
尹錫悦大統領が昨年9月、仁川港水路および八尾島の近海に浮かぶ上陸艦「露積峯」の艦上で開催された第73周年仁川上陸作戦戦勝記念式で、イ・ジョンソプ国防部長官と話している/聯合ニュース

 海兵隊のC上等兵死亡事件の捜査に圧力を加えた疑惑の最重要被疑者であるイ・ジョンソプ前国防部長官が10日、大統領による信任状授与式も行われずにオーストラリアへ向けて出国した。今月4日のオーストラリア大使への任命から10日夜の「極秘出国」までの1週間、特級作戦でも行うかのようにして大使を送り出した外交部の内部もざわついている。

 記者たちはイ・ジョンソプ大使の出国を確認しようとし続け、外交部当局者たちは「確認はできない」ばかりを繰り返した。

 イ大使の任命から出国まで、外交慣例と常識は何一つきちんと守られていなかった。被疑者を大使に任命することからして、外交の常識を覆したものであることは言うまでもない。

 イ大使が大統領による信任状授与式も行われずに赴任したことについても波紋が広がったことで、外交部の当局者は11日、「新たに任命された公館長が少数の場合は、信任状授与式を行わずに赴任し、信任状はのちに外交用郵便で送り、後日一度に信任状授与式を行う」と釈明した。

 イ大使の信任状の原本はポーチ(外交用郵便)で送るという。だが、ある外交消息筋は「原則的に新たに任命される大使は、大統領から信任状を受け取る授与式をおこなってから赴任する。今回、信任状授与式も行われずに赴任したのは非常に異例で不適切」と述べた。外交部は来月までに開催されるという公館長会議に大使が全員出席するため、イ・ジョンソプ大使とともに任命された駐ナイジェリア大使らの信任状授与式を一度に行うと述べた。取材陣を避けて出国したイ大使がどのような姿で会議に出席するかが注目される。

 オーストラリア大使は、外交部の次官補や局長級が就く地位だ。国防部長官を務めた人物がオーストラリア大使に任命されるのは異例だ。オーストラリアは浮上する防衛産業のパートナー国であり、米国を除けば唯一韓国と外交・国防相会議を行うほど安保上重要な協力国であるため、国防部長官の経験者を任命した、というのが外交部の公式の説明だ。だが、被疑者の身分で逃亡するかのように出国した大使が、そのように重要な外交の適任者なのか。疑問はより一層ふくらむ。

 外交部内もざわついている。公式には発言できないものの、外交官たちもあきれている様子だ。ある元外交官は「オーストラリアは外交が非常にうまい国であり、韓国で起こっていることもよく知っている。オーストラリア政府は公式には立場を表明しないだろうが、内心では当然あざ笑うだろう。国の威信を傷つける大使任命だ」と述べた。

 在豪同胞団体「ろうそく行動シドニー」のメンバーは9日(現地時間)、シドニーの平和の少女像の前でイ前長官の大使任命を糾弾する集会をおこなった。13日には駐オーストラリア韓国大使館前でも集会を開催する予定だ。オーストラリアの政府とメディアも、イ大使に関する出来事を当然注視するだろう。

 10日夜に取材陣を避けて密かに飛行機に搭乗しようとしていたイ前長官は、文化放送(MBC)の記者と出くわし、当惑した様子で「なぜここまでしなければならないのか…」と述べた。国民こそ、イ大使を任命した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とイ前長官に問いたい。なぜここまでしなければならないのかと。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1131767.html韓国語原文入力:2024-03-11 15:29
訳D.K

関連記事