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韓国の「胎児性別告知禁止」条項、37年を経て違憲判決…「男児選好思想が衰退」

登録:2024-02-29 06:28 修正:2024-02-29 07:54
妊娠32週前に性別告知を禁止した医療法 
憲法裁判所、6対3で違憲決定 
「出産順位別の男女比、いずれも正常範囲」
ゲッティイメージバンクより//ハンギョレ新聞社

 韓国で37年間維持されてきた医療法の「胎児性別告知禁止条項」が憲法裁判所で違憲と判断された。男児選好思想が事実上消え、胎児の性別を理由にした妊娠中絶が問題になる状況ではなく、現実では性別告知が行われており、この条項が死文化したという点が考慮された。

 憲法裁は28日、医療関係者が妊娠32週以前に胎児の性別を妊婦などに教えることを禁止した医療法第20条2項に対する違憲確認事件で、裁判官6対3の意見で違憲決定を下した。1980年代に入って医療技術が発達し、胎児の性別の鑑別が可能になってから、性別選択による妊娠中絶が盛んになったことを受け、1987年に胎児性別告知禁止条項が初めて導入された。導入当時は胎児性別告知を医療法で「全面禁止」していたが、2008年の全面禁止は過剰禁止原則に反するという憲法裁判所の決定に基づき、「妊娠32週前の告知禁止」に改正された。

 憲法裁の法廷意見(6人)は「もう胎児の性別と中絶の間に有意な関連性がみられない」として、違憲判断を下した。憲法裁は「現在、韓国は女性の社会経済的地位向上とともに、男女平等意識がかなり定着しており、男児選好思想が明確に衰退している。統計庁の発表によると、出産順位別の出生児の男女比はいずれも自然性比の正常範囲内にある」とし、「性別を理由にした中絶があり得るという非常に例外的な事情だけで、すべての親に妊娠32週以前に胎児の性別情報を確認できないようにするのは、必要最小限度を越えて親の基本権を制限するもの」だと明らかにした。

 条項が初めて導入された約30年前までは、韓国は男児選好思想により、数多くの女児が「娘であるという理由だけで」中絶の対象になることが横行した。自然性比は女児100人当たり男児104~106人程度だが、性比バランスが最悪に崩れた1990年には女児100人に対し男児は116.5人だった。当時、第一子の性比は(女児100人に男児)108.5人だが、第2子は117.1人、第3子以上は193.7人で、不自然なバランスを示した。最近では、第3子の性比も正常範囲に達し、男児を好む思想が歴史の中に消えたとみられている。

 憲法裁判所は、医療現場で妊娠32週前に性別告知がよく行われているという現実的な理由も取り上げた。憲法裁判所は「現実では医療関係者から胎児の性別情報を得る場合が多いが、この条項の違反で告発・送致・起訴された件数は10年間1件もない」とし、「この条項が行為規制規範として機能を失い、死文化したことを示している」と指摘した。

 この日、イ・ジョンソク裁判官とイ・ウネ裁判官、キム・ヒョンドゥ裁判官は胎児の性別告知を制限する時期を繰り上げた方が良いとし、憲法不合致の意見を出した。彼らは「男児選好思想が完全に消えたとは言えず、堕胎罪条項の効力が失われた状況で、もし胎児の性別告知制限が消えれば、性別選好にともなう家族計画が人工妊娠中絶の理由になる可能性がある」とし、「堕胎罪に関する憲法裁決定で言及した決定可能期間などを考慮し、胎児の性別告知を制限する時期を繰り上げるように改正し、その侵害を最小化しすべきだ」という意見を示した。

イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1130255.html韓国語原文入力:2024-02-28 18:40
訳H.J

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