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ミドルベリー国際問題研究所のロバート・カーリン研究員は、1971年に米中央情報局(CIA)に入り、1989年まで分析官として働いた。カーリン氏は1974年から北朝鮮の業務を担当し、約50年間北朝鮮を見守ってきた。1989年には米国務省に移り、2002年まで国務省情報調査局(INR)北東アジア責任者を務め、北朝鮮担当特別大使の首席顧問を務めた。2006年まで、北朝鮮の新浦(シンポ)に軽水炉を建設する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の首席政策諮問官として働いた。1996年2月以降、北朝鮮を30回訪問し、2000年10月のマデレーン・オルブライト国務長官(当時)の平壌(ピョンヤン)訪問の際も随行した。
カーリン氏は1990年代以降、ほぼすべての朝米対話と交渉に関わってきた。チョ・テヨン国家情報院長は外交部第1次官時代、「(カーリン氏は)米国で最も多く北朝鮮の労働新聞を読んだ人」だと評した。
ジークフリード・ヘッカー博士は、プルトニウム科学、核兵器政策、核安全保障分野で世界的に認められている核物理学者だ。ヘッカー氏は米国ロスアラモス国立研究所で働き、研究所長を務めた。1943年に設立された同研究所は、米エネルギー省所属の国立研究機関だ。1943年の設立当時、ロバート・オッペンハイマーが研究所の責任者として赴任し、オーゲ・ニールス・ボーアやエンリコ・フェルミ、リチャード・ファインマンなど世界的な科学者が集結し、人類初の原子爆弾を作るマンハッタンプロジェクトを進めた。
北朝鮮が2004年から2010年まで計7回にわたってヘッカー氏を招待し、北朝鮮寧辺(ヨンビョン)の核施設内にあるウラン濃縮設備を公開したのは、ヘッカー氏の経歴に注目したためだ。
昨年末から南北の険悪な言葉の応酬と軍事的な過剰対応も、朝鮮半島の戦争危機を増幅させている構造的背景だ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は先月末、労働党中央委員会第8期第9回全体会議で、南北関係を「もはや同族関係ではなく、敵対的な二国間関係」だとし、「統一はもう不可能だ」と宣言した。さらに「有事の際、南朝鮮領土を平定するための大事変の準備」も強調した。年末から続く北朝鮮の好戦的な言動は、朝鮮半島戦争危機説を燃え上がらせる焚き物の役割を果たした。
新年早々南北間の緊張が高まっていること受け、米国のホワイトハウスと国務省は北朝鮮に対する圧迫を続けながらも、北朝鮮に「外交への復帰」を呼びかけている。一方、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と統一部、国防部は、「目には目を、歯には歯を」流の対応と断固たる対処を強調するだけで、対話については全く触れていない。
尹錫悦政権は、北朝鮮の好戦的な言動が4月の韓国総選挙を控えて韓国内部の対立を誘発しようとする心理戦とみて、国民と政府が一丸となって北朝鮮政権の欺瞞戦術と宣伝、扇動をはねのけるべきだと主張する。
カーリン氏とヘッカー氏の寄稿文は、韓国と米国が抑止力の神話に陥っている点も強調した。寄稿文は「韓米は鉄のような抑止力を強調するなど、金正恩委員長が現状を破壊できないようにしながら、北朝鮮政権の完全な破壊を公言しているが、そのような考えは致命的な影響を及ぼしかねない」とし、戦争が勃発すれば「韓米が勝利しても結果は無意味なものであろう」とし、「荒廃した焼け野原が見渡す限り広がるだろう」と主張した。戦争は、勝つよりも避けるのが得策だ。