月城(ウォルソン)原発の関連資料を削除し、監査院による監査を妨害したとして起訴された産業通商資源部の元公務員に、控訴審で無罪判決が下された。文在寅(ムン・ジェイン)政権による「月城原発1号機早期閉鎖」に対する監査院の監査の適法性に問題を提起する判決が下されたのだ。
大田(テジョン)高裁刑事3部(キム・ビョンシク裁判長)は9日、監査院法違反、公用電子記録等損傷、建造物侵入などの疑いで起訴された産業部の元局長のA氏(56)、課長のB氏(35)、書記官のC氏(48)に無罪を言い渡した。
同高裁は「この事件の資料は担当公務員が個人的に保管していた内容で、公用電子記録損傷罪の対象とはならない」とし、「公共記録物の重要文書は文書管理登録システムに登録されており、かなりの数のファイルが他の公務員のパソコンにも保存されている」として、公用電子記録など損傷罪に対する無罪の理由を明らかにした。
監査院による監査を妨害した疑い(監査院法違反)についても、「監査院法に則った監査活動とは考え難く、デジタルフォレンジックも適法に実施されていなかった」と述べた。監査院が産業部に文書ではなく口頭で資料の提出を要求し、その後、「資料提出要求」ではなく「監査資料に関する協力要請」の公文書を送っておきながら、提出する人と資料の内容を特定していなかったことからも、監査院法に則った監査と考えることはできないと裁判所は判断した。また「監査院は内部資料だとの理由でデジタルフォレンジック関連資料の提出を拒否しており、監査当時に作成された『デジタルフォレンジック要請計画書』の内容を見ても、デジタルフォレンジックも適法に実施されていなかったと考えうる余地が相当ある」と述べた。建造物侵入についてもやはり「事務所の平穏状態を害した行為であるとは考えにくい」との判断を示した。
一審は「被告が資料を提出せず削除までおこなったため、監査院は韓国水力原子力の月城原発早期閉鎖決定に対する産業部の介入疑惑をきちんと把握することが難しく、それによって監査期間が遅れた」として、A氏に懲役1年、執行猶予2年、B氏とC氏に懲役8カ月、執行猶予2年を宣告していた。ただし、C氏の建造物侵入については無罪を宣告している。彼らは一審判決後の昨年6月、産業部から懲戒解雇されている。
監査院は2019年10月、月城原発1号機の早期閉鎖の決定過程に対する監査をおこなったが、監査報告書が監査委員会の審議で承認されなかったため2020年に再監査を実施し、同年10月に「2018年6月の月城原発早期閉鎖の決定過程で経済性が過度に低く評価された」とする監査結果を発表した。監査院のユ・ビョンホ事務総長は2020年、公共機関監査局長として月城原発の監査を指揮した。当時、監査院は7千ページの捜査資料と、産業部の公務員が削除した資料をフォレンジックして復元したものを検察に引き渡している。
その後、2020年12月に検察はA氏とB氏を、監査院の資料提出要求直前の2019年11月ごろに月城原発の関連資料の削除を指示したり、これを黙認・ほう助したりしたとして、C氏は2019年12月1日午後11時ごろに政府世宗(セジョン)庁舎の産業部のオフィスに侵入し、約2時間にわたって月城原発の関連資料530件を削除したとして起訴した。2021年6月にはペク・ウンギュ元産業部長官、チェ・ヒボン元大統領府産業政策秘書官、韓国水力原子力のチョン・ジェフン社長も、月城原発の経済性評価を歪曲した疑い(職権乱用など)で起訴され、現在も裁判中だ。