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警察に果敢な銃器使用を推奨する韓国…免責範囲、すでに最大値

登録:2023-08-08 06:14 修正:2023-08-08 08:13
中学生、誤った通報により逮捕される過程で負傷 
適法な指針を超えた過剰対応を誘発する可能性も
刺傷事件と殺人を予告するオンライン掲示物で国民の不安感が高まっている中、6日午後、ソウル江南駅付近で警察特攻隊員がパトロールしている/聯合ニュース

 韓国で刺傷事件が相次ぎ、市民たちのショックが収まらない中、法務部長官と警察庁長官が「積極的に免責する」として警察官の果敢な銃器使用を後押しした。

 このような主張は「(銃器使用に)免責が認められないため、警察官が銃器など有形力の行使がまともにできない」という誤った観念に基づいている。すでに現行法は警察官の正当な公務執行中の場合は(銃器使用を)積極的に免責している。むしろ現場の警察官に「有形力の行使に関する最小限のガイドラインを越えても良い」という誤ったシグナルを与えかねないという懸念の声もあがっている。

 ハン・ドンフン法務部長官は7日「国民の生命と身体に危害が及ぶことが懸念される状況で、警察の有形力の行使に正当行為と正当防衛を積極的に検討し適用せよ」と、検察に指示した。ユン・ヒグン警察庁長官も4日に発表した国民向けの談話で、「凶器関連犯罪に対しては銃器やテーザー銃など正当な警察の有形力の行使も厭わない」と述べた。「警察の有形力の行使に障害物があるが、これを解決する」という趣旨だ。

 しかし、すでに現行法は警察官に現行法体系が許容する最大値の免責範囲を認めている。昨年2月に新設された警察官職務執行法は「犯人の検挙過程で他人に被害が発生した場合、警察官に故意または重大な過失がなければ、刑を減軽あるいは免除できる」と定めている。警察官に「故意と重過失」がある場合のみ刑事責任を問えるという意味だ。

 ハン長官のいう「正当行為に該当する有形力の行使」は同条項により免責の対象になる。たとえ民事責任が認められるとしても、2018年6月に警察法律保険、2020年1月に公務員責任保険制度などが導入されてからは、警察官個人が負うべき負担もかなり軽減された。

 このような状況で、法務部長官や警察庁長官のメッセージは「正当な公務執行でなくても免責する」、「重過失が認められても免責する」などと誤って受け止められる恐れがある。現場の警察官の「一線を越える」過剰対応を誘発する可能性もある。

 強硬対応を強調するムードの中で、中学生が5日、刺傷事件の容疑者として誤解されて逮捕される過程で、深刻な傷を負う事故が発生した。この生徒はイヤホンをつけてジョギング中だった。上層部で強硬対応が強調されれば、現場でどのような副作用が生まれるのかを象徴的に示すものといえる。

 警察によって全身を負傷したという生徒の父親は「今のようなムードなら、誤った通報により容赦なく強圧的な検挙が行われ、その過程で未成年者までもが被害者になりうると思うと恐ろしい」として無念を訴えた。

 元警察改革委員会委員のヤン・ホンソク弁護士はハンギョレとの電話インタビューで、「現場の警察官が積極的に警察力を行使したからといって刑事処罰を受けるケースはほとんどない。『免責を認める』というのは何の効果もない」とし、「むしろ適法な公務執行関連のガイドラインが崩れ、無視される可能性がある。この過程で人権が侵害される可能性もかなり高い」と批判した。

キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1103356.html韓国語原文入力:2023-08-08 02:47
訳H.J

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