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突き進む朝鮮半島の核の脅威、「崖っぷち」の1994・2017年と異なる点は

登録:2023-07-24 01:31 修正:2023-07-26 05:46
[ハンギョレS] ニュース分析 
危機を緩和する安全弁がない
19日、釜山南区の海軍作戦司令部の釜山作戦基地に米国のオハイオ級戦略原子力潜水艦(SSBN)「ケンタッキー」が入港している=大統領室通信写真記者団//ハンギョレ新聞社

 韓米と北朝鮮が互いに向かって吐き出す「核の脅威」のレベルが、朝鮮半島が戦争の「崖っぷち」まで突き進んだ1994年と2017年の水準を越えて上昇している。一方が他方の核をけん制しようと核の「筋肉」を自慢すると、他方も核の脅威の更なる強化で対抗する「核脅威のジレンマ」に朝鮮半島全体が包囲された様相だ。

 北朝鮮は最近、韓国に対する米国による拡大抑止のコミットメントを強化するために作られた韓米核協議グループ(NCG)の初会議(18日)の前に核の脅威のレベルを引き上げた。13日には固体燃料を使った大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18型」を発射、14日と17日にはキム・ヨジョン労働党中央委員会副部長が相次いで談話を発表し、朝鮮半島における米国の戦略資産の展開を強くけん制した。実際、米オハイオ級の戦略原子力潜水艦(SSBN)が18日に釜山(プサン)に寄港すると、北朝鮮はその翌日、東海(トンヘ)に短距離弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮がミサイルを発射した平壌順安(ピョンヤン・スナン)から釜山までの距離は、ミサイルの飛行距離と同じ550キロメートル。核で米国の戦略資産に反撃するという露骨な威嚇だった。

 北朝鮮の対応はこれにとどまらなかった。20日にはカン・スンナム国防相が談話を発表し、「米国が40年ぶりに朝鮮半島に戦略核兵器を展開するという最も露骨で直接的な核の脅威を敢行した」とし、これは「我々の核武力政策法令で明示した核兵器の使用条件に当たりうる」と警告した。これまで北朝鮮は韓米に対し「ソウルを火の海にする」や「老いた狂人を火で戒める」(金正恩国務委員長、2017年9月)などの挑発的な発言を繰り返してきたが、自分たちの「核ドクトリン」に直接触れて核の脅威を加えたのは事実上初めてだ。

 現在、朝鮮半島は1993年に北朝鮮の核危機が始まって以来、「核脅威」に最も脆弱にさらされている状態だといえる。停戦後、朝鮮半島が戦争に最も近づいた1994年夏は、北朝鮮が核兵器を本格的に保有する前であり、無謀な衝突を防ごうとする理性が働いていた。ジミー・カーター元米大統領が同年6月16日に北朝鮮を訪問し、金日成(キム・イルソン)主席(1912~1994)に面会したことで、朝鮮半島は戦争の危機をかろうじて免れた。

 2度目の危機は朝米が互いに自分の机の上にある「核ボタン」に言及し、強く衝突した2017年だった。ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は、朝鮮半島で核戦争が起きないようにしてほしいとワシントン大聖堂で一人祈ったという。日本の自衛隊も朝鮮半島で有事(戦争)が発生した場合に備えた対応策に腐心した。このような状況で一筋の光となったのは「絶対に戦争があってはならない」という韓国政府の一貫した姿勢だった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は同年の光復節記念演説で、「韓国政府はすべてをかけて戦争を防ぐ」と述べた。金正恩(キム・ジョンウン)委員長がこれに反応し、翌年の2018年1月から「朝鮮半島平和プロセス」が始まった。

 当時の危機と今の最も大きな違いは、核危機が「制度化」したという点だ。北朝鮮は昨年9月に制定した法律「朝鮮民主主義人民共和国の核武力政策について」で、核兵器またはその他の大量殺戮兵器による攻撃▽国家指導部などに対する敵対勢力の核および非核攻撃▽国家の重要戦略的対象に対する致命的・軍事的攻撃などが「敢行」された時だけでなく、「差し迫ったと判断される場合」にも核を使用できると明示している。カン・スンナム国防相は米国の「戦略資産があまりにも危険な水域に入ってきたことを認識すべきだ」とし、同法に基づき核で「予防攻撃」に乗り出すこともできると威嚇した。

 韓米は北朝鮮の核の脅威を一蹴したが、危機を緩和する解決策は示さなかった。韓国国防部は21日、米戦略原子力潜水艦の釜山寄港は「韓米同盟の正当な防衛的対応措置」という立場を示した。米国防総省のサブリナ・シン副報道官も20日の定例会見で、「(北朝鮮の)レトリックはプラスにならず、極めて危険なもの」だとし、今回の寄港は「この地域に対する米国の徹底した関与を示すもの」だと述べた。

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1101253.html韓国語原文入力:2023-07-22 14:48
訳H.J

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