朝鮮半島非核化交渉が事実上「回生不可能」な状態に陥り、米中対立とウクライナ戦争の余波で国際社会の陣営化が深まるなか、東海(トンヘ)は各国の力と力がぶつかり合う「憎悪の海」になりつつある。北朝鮮の核のけん制のために米国の弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)が42年ぶりに釜山(プサン)に入港すると、北朝鮮はこれをけん制しようと東海に短距離弾道ミサイル2発を発射した。中国とロシアも待っていたかのように合同演習に乗り出し、両国の戦略的連帯を誇示した。
19日付のロシアの「タス通信」によると、ロシア国防省は前日、声明で「太平洋艦隊所属の艦艇が東海でロシア・中国海軍の合同演習である『北部・連合2023』に参加するためにウラジオストク基地を出発した」と明らかにした。この演習にロシア軍は6800トン級対潜駆逐艦「アドミラル・トリブツ」と「アドミラル・パンテレーエフ」2隻と哨戒艦などを派遣した。
中国国防部も16日、人民解放軍の北部戦区の艦隊がロシアとの合同演習のために青島海軍基地を15日に出発したと明らかにした。中国の艦隊は誘導ミサイル駆逐艦「チチハル」「貴陽」、誘導ミサイル小型駆逐艦「棗荘」「日照」、4機のヘリを搭載した総合補給艦「太湖」の5隻の船舶で構成されている。韓国に対する米国の拡大抑止公約を強化するために作られた核協議グループ(NCG)の初会議(18日)を韓米が予告し、これに対して北朝鮮が神経質な反応を示している敏感な時期に、中ロ両国が自国の軍事的存在感を誇示したのだ。中国国防部は今回の演習の目的を「戦略的海上通路の安全を保障」し「中国軍とロシア軍の間の戦略的調整水準を高めること」だと明らかにした。両国は正確な演習日は明らかにしていない。
中国の軍事的動きに神経を尖らせている日本は機敏に動いた。統合幕僚監部は18日、繰り返し資料を発表し、中国の艦船が対馬海峡(大韓海峡)を通過して日本海(東海)に進入したと明らかにした。浜田靖一防衛相は同日の記者会見で「(中ロの軍事演習について)引き続き重大な関心を持って、警戒監視に万全を期していきたい」と述べた。読売新聞は19日付の報道で「(中ロ)両国には日本や朝鮮半島の近海で演習を行うことで、安全保障面で連携を強化する日米韓をけん制する狙いがある」と指摘した。
北朝鮮は2019年2月末の「ハノイ・ノーディール」以後、2021年1月の第8回党大会で5大戦略兵器確保方針を明らかにし、昨年9月の最高人民会議で法令として「朝鮮民主主義人民共和国の核武力政策について」を採択した。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は「核保有国としてわが国の地位が不可逆的なものになった」と宣言し、昨年1年間だけで多様な射程距離のミサイルを59発も発射した。
北朝鮮は19日未明、弾道ミサイル2発を発射し、米国のSSBNをけん制するという意図を明確にした。このミサイルの飛行距離は、発射地点の平壌順安から釜山までの距離と正確に一致する550キロだった。北朝鮮はこれまで米国の空母戦団が東海に進入したときは、偶発的な衝突を避けるため軍事的な動きを自制してきたが、昨年秋以降は一歩も引かない「強対強」対応を続けている。昨年9月末に米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」が釜山に入港した時から、11月5日の韓米合同空中演習「ビジレントストーム」の終了までの43日間、韓米と北朝鮮は一歩も引かない武力示威を行った。退かない北朝鮮に対し、米空母は10月5日、急きょ東海に再進入する異例の動きを見せた。11月初めには、北朝鮮が東海の北方限界線(NLL)南側に短距離ミサイルを発射し、韓国もF15とF16を飛ばして対応射撃を行った。南北が相手側のNLLでミサイルを発射したのはこの時が初めて。南北間の通信線はすべて断絶した状況であり、一方の些細な誤判一つが民族の運命を崖っぷちに追い込む本格的な武力衝突につながりかねない。
東海で北朝鮮だけでなく中ロの軍事的な動きが本格化したのは、米中対立が表面化した2019年夏からだ。日本防衛省は「防衛白書」(2022年版)で、「2019年以降、中ロ両国は日本海、東シナ海、太平洋上空で爆撃機を動員した共同飛行(2019年以降6回)を行っている」と記している。2019年7月23日、戦略爆撃機を用いた初の合同演習では、ロシアの早期警報機が独島上空を侵犯し、韓国空軍が戦闘機19機を急きょ飛ばして実弾で威嚇射撃を行うなど、きわどい状況が演出されたこともある。ロシアは、尹錫悦大統領が今年4月のロイター通信とのインタビューでウクライナに対する軍事支援の可能性をほのめかした直後、核兵器を搭載できる超音速戦略爆撃機「ツポレフ(Tu)22M3」8機をオホーツク海と東海北部に飛ばした。今回の演習にも対潜駆逐艦を投入し、米国のSSBNの動きをけん制する意図を示した。いつの間にか東海は韓米日と中朝ロが激しく対立する世界で最も危険な海となってしまった。