本文に移動

「賛成一色」の汚染水討論会に野党批判まで…世論戦に総力挙げる韓国政府

登録:2023-06-27 06:40 修正:2023-07-18 11:44
ハン・ドクス首相が23日午後にソウル銅雀区の鷺梁津水産市場を訪ねた写真を、25日に本人のフェイスブックのアカウントに載せた/聯合ニュース

 福島原発汚染水の海洋放出が差し迫っている中、韓国政府がこれを批判したり不安を示す世論を静めようと必死になっている。この過程で外交部が異例にも野党を批判する意見を表明するなど、行き過ぎた姿を見せたことに対し、野党は「政治的意図を持った行為」だとして強く反発した。

 政府は原発汚染水の安全性を強調することに全力を傾けている。国立外交院は26日午前、ソウル瑞草区(ソチョグ)の庁舎で、討論会「福島原発汚染水の海洋放出をどうみるか」を開いた。開会の辞でパク・チョルヒ院長は「科学を無視して国民の不和を煽る感性的論理、政治的レトリックを前面に押し出す論争が韓国社会を分裂させている」とし、海洋放出に反対する立場を批判した。同日の討論会で発表を行った韓国原子力学会のペク・ウォンピル会長や、ソウル大学原子核工学科のキム・ギヒョン教授、パネルを務めた大邱カトリック大学放射線学科のキム・ヨンミン教授らは、いずれも汚染水の海洋放出に肯定的な意見を示した。

 国務調整室は15日から休日を除き、毎日汚染水関連会見を行い、不安を抱いている世論をなだめることに力を入れている。パク・グヨン国務調整室国務1次長は、この日の会見では「現在の海洋放出方式が科学的先例や安全性などを総合的に考慮したうえで、最も現実的な代案」だと強調した。これに先立ち、ハン・ドクス首相も23日、与党「国民の力」の「我が海を守る検証タスクフォース(TF)」所属議員らとソウル銅雀区(トンジャック)の鷺梁津水産市場を訪ね、水産物を自ら食べてみせた。

 国民の不安を鎮めることは必要だが、批判世論を「政府への攻撃」だと決めつけ、安全性だけを強調するのは不適切だという声もあがっている。野党「共に民主党」が太平洋島しょ国に汚染水の海洋放出に関する国際連帯を求める書簡を送ったことについて、外交部が民主党を批判したのが代表的な事例だ。外交部は25日、同書簡が「対外的なレベルで憲法上の行政府の持つ固有の権限を尊重しないものであり、国家の外交行為の単一性という側面でそぐわないもので、遺憾だ」と述べた。

 しかし、このような主張は憲法を無理に解釈したものだという指摘もある。西江大学法科大学院のイム・ジボン教授はハンギョレとの電話インタビューで、「福島原発汚染水の海洋放出に関して、政府が確定的な立場を発表した段階でもなく、公論化の過程で国民の代表機関である国会が外国との連帯を模索するのは憲法に反するとは言えない」と語った。汚染水の海洋放出に問題がないという世論戦を攻撃的に繰り広げる過程で、外交部が「一線を越えた」という指摘だ。

 共に民主党のパク・グァンオン院内代表は26日、党最高委員会議で「(国会と政党は)政府をただ支持し称賛すべきということなのか」と外交部を強く批判した。また「政府与党がすべきことは、国民の生命と健康を守るための民主党の努力をけなすことではなく、国民が与えた権限と責任を政府がちゃんと履行しているかどうかを自ら振り返ること」だと述べた。同党のイ・ソヨン院内報道担当は「外交部が政治的中立を守らず、政治的意図を持った行為とみなされかねない立場を示したことは不適切なもので、遺憾の意を伝えたい」と述べた。

シン・ヒョンチョル、チャン・イェジ、カン・ジェグ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1097598.html韓国語原文入力:2023-06-27002:45
訳H.J

関連記事